「うおおおおお、すごいすごいすごい!」
新居に着くなり、かぐやはリビングを走り回り、バルコニーへ突進していった。
「ちょっと、落ちないでよね!」
かぐやの長い金の髪がビルの風で靡いている。
「興奮するのは分かるがあまり乗り出さない方がいい。落下したら大変だ」
「わかってるー!眺めヤバッ!すっげー」
かぐやはしばらくバルコニーからの景色を見ていたが、満足したのか、ソファに座って
「最強になった気分……」
と呟いていた。
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彩葉は新居が落ち着かないのか買い物へ出かけた。俺とかぐやは二人で荷解きをしている。
「かぐや」
「なに?かえで」
「彩葉のところへ行ってくるといい」
「!いいの?」
「ああ、ある程度片付いたからな。あとは俺一人でもなんとかなるだろう」
こう言えばすぐに行くかと思ったが、かぐやは少し悩んでから
「…ありがとう!かえで、好き!」
「そういうのは彩葉に言ってやるといい」
そう言ってかぐやは彩葉のいるであろうスーパーへ向かって行った。
引越しして初めての昼食はかぐやの希望でパスタを作ることになった。麺から作っているようで、キッチンを見てみると彩葉とかぐやの二人で仲良く作っている。
二人が仲良くしているのを微笑ましく見ていると、いつのまにかパスタが出来上がっていた。かぐやがチーズおろし機でパスタにチーズを散らしている。
「「「いただきます(っ)」」」
各々パスタを口に運ぶ。かぐやが作るだけあって、絶品だ。
美味しすぎてかぐやが立ち上がり、ダンスを踊っていた。
「一番、かぐや!ここ十年でさいこー!」
「あんた生まれて一ヶ月でしょ!」
と言って二人は爆笑していた。
それを見ていた俺も笑顔だったらしい。
「あー!かえでが笑ってる!いっつも仏頂面してるのに!」
「ほんとだ、珍しい…!」
と言われた。
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コラボライブまでのある日、俺はツクヨミにいた。ヤチヨと打ち合わせするためだ。かぐやか彩葉が行けばいいと思ったかもしれないが、二人は今ライブの練習と勉強で手一杯だ。なので手が空いてる俺が代わりに来た。
指定の場所に来てみると、そこにはヤチヨの相棒であるFUSHIが一匹でいた。俺を見つけるなり
「よお!よく来たな腰巾着」
と言われた。
「こらっ!そんなこと言って!」
と、突然ヤチヨが現れた。
「ごめんねー、待たせちゃって。それじゃあ行こっか☆」
ヤチヨはそう言って自身と俺を移動させたようだ。いつの間にか屋内にいる。
「ここなら誰も気にせずお話できるね」
コラボライブだからなるべく秘密にしておきたいのだろう。それに加えてヤチヨは人目を集める。なので人のいないところで話す必要がある。
「ああ、まずこちらの状況だが…」
こうして二人の打ち合わせは始まった。
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「うん、これでいいんじゃないかな」
「そうか、じゃあこの案で決定だな」
ライブについての会議は全て終了した。もうライブについて話すことはないが…
「丹恒くんは本当にライブ出なくていいのかい?結構ファンからも出てほしいってコメント来てるよ」
とヤチヨから聞かれた。
「ああ、俺はあくまでかぐやのサポーターだ。歌が上手い訳でも作曲が出来る訳でもない。それに女子だけの中に割り込むのも忍びないからな」
「そっか、じゃあヤッチョから無理は言えないなー」
ヤチヨからの質問が終わった。それなら…
「俺も質問があるんだが、聞いても大丈夫だろうか」
「なんだいなんだい?ヤッチョがなんでも答えてしんぜよう!」
「いろPのことをいつも彩葉と呼ぶのは何故だ?」
「!?」
すごい顔が引きつっている。まずい質問だっただろうか。
「そそ、そ、それはね、かぐやがいつも彩葉って呼んでるから…」
「だとしても運営側がそう呼ぶのは大丈夫なのか?個人情報の秘匿という観点からも…」
そう言うとまた固まってしまった。普段の彼女はもっと飄々としているのだが…
話を変えた方がいいか。
「…理由についてはそれで納得しておく、まだ質問があるんだが…」
「だ、だいじょーぶ、ヤッチョが可能なら答えてしんぜよう…」
さっきよりグレードダウンしているな…
「ミニライブで会った時、俺がログアウトした時に驚いていたが、何かあったのか?」
そう俺が言うと、ヤチヨは少し悩んでから決心したように頷き、答えてくれた。
「…ツクヨミを作る時に協力してくれた子と同じエフェクトで少し驚いちゃっただけだから、あまり気にしないで」
…金の粒子となって消えるのは黄金の血が流れる者…つまりセプターから作られた者だけだ。俺の思い当たる中で当てはまるのは…
「…キュレネという人物を知っているか?ピンク髪の…」
「ッ!キュレネのこと知ってるの!?」
キュレネの名を出すと、急に肩を掴まれてしまった。
「どこにいるか知らない!?」
「お、落ち着いてくれ」
「あ…ごめんね、急に…」
「…構わない。キュレネとはどういう関係なんだ?」
「ツクヨミを作る時に手伝ってくれたんだけど、急にいなくなっちゃって…何か知らないかな?」
「俺がキュレネについて知っている事は…初めてツクヨミに入った時、不具合か分からないが動けずにいた俺をツクヨミへ導いてくれた事、そしてこれくらい、だな」
俺はアイテムボックスから『紡がれた物語』を取り出した。
「彼女が渡してくれた本だ」
「キュレネが…丹恒くん、この本、借りても大丈夫?」
「ああ、返してくれるのなら構わない」
そう言ってヤチヨに『紡がれた物語』を渡した。
ヤチヨは
「この本と一緒に丹恒くんが言ってた不具合についても調べておくね」
そうして、打ち合わせはお開きとなった。
かぐやと彩葉に打ち合わせの内容を伝え、自身の寝床へ入る。
布団の中で俺は思考していた。セプター、黄金の血、月、大地。
真実はすぐそこに迫っている、そんな気がして空に浮かぶ月を見つめた。
楓…自身の真実に近づいていく。それが楓にとって幸か不幸か、今は分からない。
ヤチヨ…キュレネにツクヨミを作る時手伝ってもらっていたが、突然消えてしまった。自身より明らかに上の技術を持っているため、手掛かりを探していた。ツクヨミの、そして自身の発展のために。