花火大会の作戦会議以降、彩葉は食事と睡眠以外の全てを投げ捨てて父と作っていた曲の続きを作曲していた。
命より大事、そう言っていた学校やアルバイトも休み、作業に没頭している。流石に風呂はかぐやに無理やり入れてもらったが。
俺が作曲で手伝えることはない。俺にできるのはせいぜい学校生活に戻った時、すぐに挽回できるよう学習ペーパーを作るくらいだ。
そんなかぐやのお迎えが来るまでのある日。
「ただいま。…この彩葉の声は?」
「おかー、お母さんと電話でケンカしてるっぽい」
家に帰るとかぐやが寝そべりながら水盆の蟹と戯れていた。彩葉の聞いた事もない関西弁の怒鳴り声一歩手前の声をBGMにして。
「蟹ビビらして遊んでたけど彩葉の声にずっとビビってる」
「…まず蟹でそんな遊び方をしてはいけない」
「はーい。彩葉は?」
「…これは彩葉が解決すべき問題だと思う。彩葉が助けを求めてこない限り俺たちの手出しは不要だろう」
「…そっか。それもそうだね」
「彩葉も以前とは違う。大丈夫だ」
「…じゃあかぐや、彩葉のために晩ご飯の準備するね!」
「ああ、頼んだ」
「…あ!もちろん楓のためにもね!」
かぐやはそう言ってこちらにウィンクした。
「…ああ、分かっている」
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しばらく経って、彩葉は母との話を終えたらしい。長時間の母との応酬で疲れ果てたのかふらつきながらリビングに降りてきた。
かぐやと一緒に彩葉のそばに寄ると、二人一緒に抱きしめられてしまった。
「…彩葉?」
「私…お母さんと話せたよ。私の言葉で…」
そう言って彩葉は俺とかぐやを強く抱きしめ、顔を埋める。そんな彩葉の頭をかぐやと俺で優しく撫でていた。
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夕食を終えたあと、俺は彩葉に新曲の歌詞について相談を受けていた。一番はかぐやが既に考えているそうだ。だが…
「…なぜ俺に相談したんだ?彩葉のお父さんとの大切な曲だろう」
「大切な曲だから相談してる。…楓も私にとって大切な人だから」
彩葉がそう想ってくれているのは嬉しいが、少し気恥ずかしい。だかその想いに応えないわけにはいかない。
「一番はかぐやの気持ちを歌っているんだろう。なら彩葉の素直な気持ちを歌えばいい」
「…そっか、ありがとう。参考にする」
そうして彩葉の作曲は進んでいき…
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かぐやの迎えが来る前日の夜。
「……出来た」
遂に彩葉の曲が完成した。かぐやはその曲を聴いて興奮し、彩葉を大絶賛している。それについては俺も同感だ。
「かぐや。前も言ったけど、私とお父さんとの大切な思い出だから絶対成功させて!」
「モチのロン!彩葉の曲があるならかぐや、最強!」
かぐやも彩葉もそれぞれ準備を終えた。俺もそれに応えるため、最大限の準備をする。
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かぐやに月の迎えがくる日、当日。
俺はライブの控え室で準備を進めていた。自身の根源である地球のセプターの一部と一つになる為に。
実行がライブ直前になったのはインターネットという海を彷徨う
「ハロハロ〜、丹恒君」
前触れもなくヤチヨが控え室に現れた。そのある物をヤチヨに貸しているため、俺が呼んだのだ。
「ヤチヨ、俺が頼んでいた物は?」
「フッフッフ…!丹恒君がご所望の物はこちらで間違いないかな〜?」
そう言ってヤチヨが取り出したのは『紡がれた物語』。ギリギリまで解析を頼んでいた。
「ありがとう。何か成果はあったか?」
「それがデータが膨大すぎて二割も解析出来なかったんだよねー。もっと時間が必要かな」
流石のヤチヨでも解析しきれなかったか。そういえば…
「そうか…ヤチヨは今回の戦い、参加しないんだったな」
「…ごめんね、ここから先には行けないことになってるんだ」
そう、今回の戦いにヤチヨは参加しない。それが運命だと言わんばかりに。
「ライブの準備をしてもらっただけでも十分だ」
「ヤチヨ、俺は今からセプターに潜る。もし彩葉たちに伝えられるなら始まる前には戻ると伝えてほしい」
「りょー、彩葉たちに伝えておくね」
俺は瞳を閉じ、ツクヨミを通じてインターネットという海に潜る。海の中で感覚を凝らすと、その中で輝く黄金の光を見つけ、その方向へ向かっていった。
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目を開けると以前入った時とは違う光景が広がっていた。
無数の機械的な柱、祭壇のような広間、無限大を模したような象形が正面の壁面に刻まれ、輝いている。
そう、無名のタイタンの大墓の最深部、デミウルゴス・マトリクス。
広間へ繋がる階段を登れば、その中央にはキュレネがいた。その姿は以前と違い、大人の女性の姿になっている。
「…キュレネ」
「…あら?久しぶりね♪楓」
「ああ、久しぶりだな。俺が此処にきた理由だが…」
「分かっているわ。あなたはセプターと一つになるためにここにきた。そうでしょう?」
「…知っていたか。なら…」
「ここと一つになるのはかまわないけれど、その前に一つ聞いてもいいかしら?」
「構わない。その聞きたいことというのは何だ?」
「…あなたは何の為に運命と戦うの?」
…運命と戦う理由、か。
「…最初は
その答えを聞いた彼女は、満面の笑みを浮かべ、俺を広間の中央に案内した。
「俺からも一つ聞いていいだろうか」
「何かしら?」
「どうしてヤチヨを手伝ったんだ?」
「…オンパロスのことを少しでも広めたかったの。少しでも早く、『明日』を迎えるために」
「…それもあると思うが、キュレネにはまた別の理由があるんじゃないのか?」
「ふふっ、その通りよ。彼女を見つけたとき、一人で寂しそうだったからつい声をかけちゃったの。あたしも一人で少し寂しかったから。その流れで手伝っていたのだけれど、最後まで手伝えなかったのがあたしの心残りね」
「なら、その役目は俺が引き継ごう」
「ヤチヨの事、お願いするわね♪さあ、『紡がれた物語』を広げて」
『紡がれた物語』を広げ、キュレネと共に手を翳す。壁面の紋章が輝き、それに呼応するように『紡がれた物語』も光を放つ。
『紡がれた物語』のページが捲られていき、その光を増していく。
自身とセプターが一つになっていく中、キュレネは俺にメッセージを送る。
「しっかりね…前を見据えて!」
創世の光の中、俺は宣言する。
『開拓よ、まだ見ぬ結末を記せ!』
セプターの空間が鏡のように割れて消えていく。その鏡面に映し出されていたのは───
───黄金の炎を纏う撃雲を振るい、火種を掲げる自身の姿だった。
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目を覚ませば、以前と同じように空中へ放り出されていた。位置はKASSENのステージの中。ライブが始まる直前で、ライブステージは超満員だ。
ライブステージを見るとかぐやを見つけ、目が合った。いつもと同じ、輝く笑顔を浮かべている。
その顔を見て奮い立った俺は龍霊と共に戦いの場へ降りる。
「遅いよ、楓!」
「すまない、遅れた」
芦花、真実、帝、乃依、雷、そして彩葉。
既に全員揃っており、臨戦体制だ。
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かぐやのライブが始まった。その瞬間、空間が歪み、菩薩のような月人が現れ、無数の月人を生み出していく。
撃雲を掲げ、宣言する。
「英雄たちの"火"を受け継ぎ、運命を切り拓く!」
そう宣言して掲げた撃雲の槍先には、英雄たちが追い求めた黄金の"火"が宿っていた。
楓…地球に存在するセプターと完全に統合。英雄たちの追い求めた"火"を受け継ぎ、運命を開拓する。
彩葉…彼女自身の想いをさらけ出し、「Reply」を完成させた。
キュレネ…ヤチヨと接触したのは彼女の孤独を感じ取り、それを少しでも埋められるように、とヤチヨ関わっていった。オンパロスを広めたい、というのも本音ではあるが建前に近い。セプターが楓に統合された後、彼女は大元のデミウルゴスに還元された。
"火"…鉄墓に列車アタックした時、バットに宿った黄金の火。