楓はオンパロスで灯された開拓の火を受け継ぎ(背負い)、「大地」から「火負い」となった。ファイノンと同じ字だが意味が全く異なる。
運命を分つ月人とのKASSENの火蓋が今切られた。
今回のKASSENのルール名はゲームタイトルと同じくKASSEN。勝利条件はただ一つ、大将を落とした陣営の勝利。
そして大将以外のプレイヤーは三つの残機を持ち、残機を全て使い切れば復活出来なくなる。
月人側のプレイヤーは七福神を意識しており、天女型二体、金剛型二体、布袋型一体、瑞獣型一体、そして大将の菩薩型で構成されている。
そして地球側の大将は────
「天地を支える!」
───
強化されたスキルで
セプターと一つになった俺はこういったことも出来るようになった。
大地を掴み、力の限り引っ張る。
「ふっ!」
大地は巨大な波となり、無数の敵を呑み込む。
この攻撃で敵の総数の約一割を撃破、必殺ゲージも満タン。すかさず
数多の龍霊を召喚、そして───
「不朽不滅を以て、八荒を翔ける!」
──敵全体へ広がるように突撃。この攻撃で月人側の総数の約二割を撃破した。
以前説明したように、
「「「ウオオォオオォォォ────────!」」」
七体の龍霊が龍鳴を轟かせ敵陣へ向かって突撃する。龍霊の攻撃で総数の二割が消滅。ここまでが三十秒足らずの出来事だ。
月人側の戦力の約半数を撃破し、大将である菩薩型の方へ向かおうとするが…
「…ッ!」
言葉にし難い圧を感じ、上方へ跳ぶ。瞬間、シンバルの音が鳴り響いた。そして飛んだ先、上方から錫杖らしき物が振り下ろされる。撃雲で受けるが、凄まじい膂力に受けた身が軋み、地面へ吹き飛ばされた。
なんとか受け身を取り、周囲を見る。
「…金剛が二、瑞獣が一…」
俺の妨害で倒された月人側のミニオンを再召喚できない事が流石にバレたか…。大将に最優先目標として設定され、近接の強い金剛型を二体、そして瑞獣型もこちらに寄越してきた。
ミニオンをけしかけてこないのは俺が必殺技を撃つのを警戒してのことか。他のプレイヤーを先に倒し、俺を数の有利ですり潰すと言った所だろう。
だが逆に──
「──好都合だ」
大地を割る勢いで跳び、シンバル持ちの金剛型の首を飛ばす。俺を無視して他のプレイヤーを倒されるのはまずいが、三体も寄越してくれるのなら最高の状況だ。なぜなら────
「──オラァ!」
瑞獣型がポリゴン塊へと成り下がる。俺に追いついた帝が一撃で撃破。すぐさま残った錫杖持ちの金剛型へ二人同時に迫り、帝が胴を抉り取る。
「俺様を置いて人気者だな、丹恒?」
「ありがとう、助かった」
「フッ、これくらいなんて事ねーよ」
あちら側が俺に集中してくれれば彩葉達が数的有利を取りやすくなる。さらに全員が「同袍」だ。ステータス強化と龍霊で勝率が大幅に上がる。このまま月人勢力を全員削り切る。
「あと一つ言っておくことがある…」
「今の俺は楓だ」
セプターと一つになり、名前を変えられるようになった。彼の名を借りたままなのも忍びないため、
「この調子で行くぞ、帝」
「フッ、任せな!このまま俺たちが押し勝つ!」
このまま押し切って、
─────────────────
一曲目がもうすぐ終わるという頃、こちらも消耗していきながら月人側の戦力を削っていった。
こちらは芦花と真実が脱落したが奮戦。布袋型と相打ちになった。
ブラックオニキスは帝がまだ一度も落ちておらず、雷、乃依が二機残っている。
そして俺は勿論落ちておらず、さらに彩葉もまだ落ちていない。
月人側は先程言った
…この状況ならいけるか。
龍霊に乗り、ミニオンを蹴散らしながら彩葉の元へ急行する。
「彩葉!」
「楓!何かあった?」
「今すぐかぐやの元へ行ってほしい」
「え…でも今は…」
「大丈夫だ、絶対に勝つ。お前の兄のチームと俺が居るからな」
「だから、かぐやの元へ行ってくれ。かぐやのライブステージには隣にお前が居ないとな」
そう言って彩葉へ笑いかける。
「…わかった。…楓、絶対勝って!ハッピーエンド、一緒に行くんでしょ」
「…ああ、あとは任せてくれ」
そう返すと彩葉はかぐやの待つライブステージへ向かって行った。
月人達がいる方へ向き直る。一曲目が終わると同時に月人達に変化が起きた。
大将の菩薩型は空を埋めつくす程の光弾を一斉に撃ち出し、その光弾を乃依がバリアで少し耐えたが、頭を撃ち抜かれた。
瑞獣型の口から複腕の人型が飛び出してきた。腕に持った武器を振るい、戦っていた雷を叩き潰した。二人はもう一度落ちたら脱落となってしまう。
月人側の変化を察知し、こちらに向かってきた帝が俺に問う。
「…使うか?」
「駄目だ」
俺は即答する。
帝が以前言っていた準備、というのはいわゆるチートモードという物だった。
プロチームであるブラックオニキスが使えば今までの信用を失うことは必定。そして後にも後ろ指を指されることになるだろう。
そんな物を使ってでも、という朝日の彩葉への愛が伺える。
だが、俺はチートモードの使用を別の理由で禁じていた。正規のプログラムでないため、使えば不具合が発生してそこから月人にアクセスされる可能性がある。そのため、チートを使わずに勝つ必要がある。
「雷と乃依は錫杖持ちを落としてくれ。俺と帝であの瑞獣を落とす」
「了解」
「帝ちゃん大丈夫〜?リーダー取られちゃうんじゃない?」
「これに関しては楓と同意見だな。だがリーダーの座は俺のもんだ」
「そんなもの、元から求めていない。行くぞ!」
二曲目、「Reply」の始まりと共に俺たちはそれぞれの敵へと駆け出した。敵へ向かう途中、ライブステージを見てみるとかぐやの所へ彩葉が合流しており、向日葵のような笑顔をして全力で踊っていた。
菩薩型の光弾の嵐の中、一直線で瑞獣型へ突撃する。帝と同時に攻撃するが複腕に防がれ、力づくで吹き飛ばされる。
帝と共に撹乱しながら攻撃を入れるが硬すぎる。パラメータを最上限まで弄っているようで全くダメージが入らない。
何度か攻防を繰り返し、こちらが徐々に不利になっていく。遂に帝が初めて落ちてしまう。俺一人で瑞獣型と戦うが防戦一方だ。
振り下ろされる武器を撃雲で受け止める。膂力はさっきの錫杖持ち以上。正直言って限界に近い。長時間の戦闘で疲労し、軋む身体が悲鳴を上げる。
だが、まだまだ戦える。何故か?それは───
かぐやと彩葉、二人の歌声が聴こえる。どうやら彩葉も歌っているようだ。
かぐやは彩葉への想いを、彩葉はかぐやへの想いを歌で伝える。そして二人はさらに通じ合っていく。
二人の間にある想いが観客に伝播し、静かながら人々を温める熱が広がっていく。
このライブステージは美しい「記憶」となり、彩葉とかぐや、そして俺を含むここにいる皆の道を支えていくことになるだろう。
───二人の歌を、
瑞獣型の武器を全力で弾き、奴より高くとぶ。
撃雲に黄金の火を宿し、全力で振りかぶる。
この火は、運命を打ち破るための─────
「──開拓だ!」
瞬間、俺の視界は星海の蒼と輝く星々の白に染まった。
楓…セプターと一つになったことで大幅に強化。味方全員を「同袍」にしたり、他の半神の真似事が出来たりする。最後に強力な意志を見せたことで、「認識」された。
彩葉…ツクヨミの通常衣装でかぐやのライブに参戦。かぐやと「Reply」をデュエットし、想いを共有していく。
かぐや…「Reply」への準備に入る時、押し勝っていく楓達の姿を見て不敵な笑顔を浮かべていた。彩葉が乱入し、満面の笑みで歌い、踊り、想いを伝える。
帝…せっかく準備したチートを禁じられてしまった。彼等にもこれからの人生があるので使わないに越した事はない。