大地よ、輝く夜に黎明を齎せ   作:M4kura

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大地よ、輝く夜を見守らん

とりあえず彩葉の部屋にお邪魔させてもらった。

話を聞いたところ、アパートの近くの電柱が七色のゲーミング電柱と化していて、それに近づいたところ扉が出現、勝手に開いてこの赤ちゃんがいたようだ。

警察には通報したが、イタズラ電話と思われたそうだ。

 

「………」

 

「なに?そんな考え込んで…」

 

普通の人間には意味不明の出来事だが、俺には心当たりがある、あってしまう。

 

「…俺の生まれの話だ。」

 

「俺には両親と血の繋がりがない」

 

「えっ…」

 

「両親が若い頃登山を趣味にしていて、不幸にも遭難した時にこの子と似たような状況で拾ったらしい。俺の場合は樹が虹色に光っていたらしいが」

 

「ええ…同郷ってコト…?」

 

「そうかもしれないな、…どっちにしろ俺もお前もこの子を見捨てることはできないだろう」

 

「…まあそうだけど…」

 

俺は彩葉が拾ってきた子がとても気になっている。自身の出生に関わりがあるかもしれない。ならば俺がやるべきことはひとつ。

 

「俺がこの子の世話をしよう。お金もかかるだろうからな」

「いやいやいや!拾ったの私だしその責任ぐらいは取らないと!それにこの子女の子だし!」

 

「…じゃあ費用の折半ぐらいはさせてくれ」

 

「いや「頼む」…」

 

「…費用は折半ね」

 

彩葉は人に頼ることに忌避感があるが、押しには弱い。こうやって俺は彩葉に世話を焼いてきたのだ。

 

こうして俺達の三連休は始まった。

 

翌日。

「昨日よりも大きくなってるな…」

 

「なんで…?」

 

感じる生命力も大きくなっている。通常ではあり得ない成長をしていることは間違いない。

 

ベビー用品を買いに西竹屋に行ったが、かなりの出費に彩葉が白目を剥いていた。わざわざ高い物を選ぶあたり、彼女の人の好さが垣間見える。

買い出しの後、俺と彩葉の交代制で赤ちゃんのお世話をするようにしていた。

 

「寝かしつけうま…」

「歳の離れた妹がいたからな、多少の心得はある」

 

「俺が見ておくから彩葉は勉強に集中するといい」

「あ、ありがとう」

 

瞬くに三連休は過ぎていった。

 

連休最終日の深夜。彩葉に突然呼び出されお邪魔してみると、そこには彩葉と10歳ほどの少女がいた。

 

「あ、楓!」

 

「…もしかしなくてもあの子か?」

 

「そう、あの赤ちゃん」

 

「とてつもないスピードで育ったな…」

 

俺の場合は普通に育ったはずだが…どういった理屈なんだろうか。

 

「んー、まあ、今時は何もかもスピードが早いんですわ」

 

何かインタビューみたいなコメントをしている。

 

「得体の知れないものは、お断り!」

「やだー!」

 

そうこうしてる内に彩葉が少女を追い出そうと力ずくに出たようだ。俺は聞きたいことがあるのだが…。あ、彩葉が手を離して少女がアルミサッシに激突してしまった。

 

「大丈夫!?」

「大丈夫か?」

「頭痛い〜〜!手も痛い〜〜!誰か助けて〜〜!」

 

助けて。そう少女が口にした瞬間、彩葉はどこか遠くを見るような目をした。母親のことを思い出していたのだろう。だがすぐに我に帰り、少女の大騒ぎを嗜めていた。

 

「ちょっと、やめて。夜中に大声出さないで」

 

彩葉が少女を嗜めていると、少女から大きな腹の音が聞こえてきた。そのすぐ後、彩葉のお腹からも同じ音が鳴った。

 

「たすけて〜〜〜?」

 

「…夜食を用意してこよう」

 

俺は自室の冷蔵庫へ急いで向かった。

 

───────────

 

今日作ったカレーの残りを二杯作ってきた。少女の口に合うといいが。

 

「いただきます」

「…?」

 

彩葉は食べ始めたが、少女は彩葉をひたすらにじっと見つめていた。ああ、食器の使い方を知らないのか。

 

「スプーンでこう掬って食べるんだ」

「…こう?」

「そうだ」

 

おぼつかない手つきでカレーを掬い取り口に運ぶと、

 

「──っ!」

大きな瞳に星が走った。

「すごい!何これ?」

 

そこからすごい勢いでかき込んでいく。まるで初めて食事をしたかのように。

 

「カレーライスだ」

「カレーライス!大好き!」

 

…そうやって喜んでくれると作った甲斐があるな。

 

「この茶色いのは?白いのは?上に乗ってる赤いのは?」

 

少女の質問に応えていると、彩葉はタブレットを起動した。ちょうど今月見ヤチヨのライブ配信をしているようだ。

 

少女からの質問が尽きたのでこちらからも質問することにした。

 

「お前はどこから来たんだ?」

 

そう問われた少女は食べる手を止め、

「んっ」

と窓に映る月を指差した。

 

目的について聞いてみると

曰く、毎日超つまんなくて楽しいところに逃げたいと思ったとのこと。

 

「俺もそんなことを考えて地球に来たのか…?」

「…どゆこと?」

 

俺は少女に自身の生まれについて教えた。すると彼女は

 

「うーん、知らない!」

 

と答えた。月にいた頃の記憶はあまりないらしい。

 

月、虹に光る物体、赤子。御伽噺の中で似たような話がある。彩葉もそれに思い当たったようでヤチヨの動画を打ち切って、タブレットに『竹取物語』の絵本を示してみせた。

 

「これに心当たりある?」

 

『竹取物語』。月から来た姫が竹の中から出てきて、翁が拾い育て、求婚され、最終的には地球の事を忘れ、月へと帰る話だ。

 

それを聞いた少女に思い当たりはなかったようだが、結末に文句を言っていた。

彩葉はその様子に付き合いきれないのか、

 

「これは、そういう話なの」

 

と打ち切って、空になった皿を流しに運んでいた。

 

だが少女は

 

「バッドエンド、や〜だ〜!」

 

「ハッピーなのが、い〜い〜!」

 

と、歌いながら駄々をこねていた。

 

その様子に彩葉は冷たく返す。

 

「どうしようもないじゃん。暴れたって、歌ったって、決まってることが変わるわけじゃないし」

 

「受け入れて覚悟するしか、ない」

 

定まった運命を受け入れるように彩葉は言った。

 

 

 

だが、俺の考えは違う。

 

「彩葉」

 

「…なに?」

 

「確かに運命に抵抗しても何も変えられないかもしれない」

 

「だが俺たちにはその運命に自分なりの注釈を加えることができる」

 

「たとえ不幸な結末(バッドエンド)に終わるとしても、その後は誰にも分からない」

 

「だから俺は、運命に抗うことが無駄だとは思わない」

 

「…そう。そうだったね、楓は」

 

俺の言葉を聞いた彩葉は黙り込んでしまった。そうして沈黙が部屋を占めたとき、少女の声が沈黙を切り裂いた。

 

「よし、決めた!」

 

少女は言い放った。

 

「自分でハッピーエンドにする!」

 

ポーズを決める。

 

「そんでハッピーエンドまでいろはとかえでも連れてく、一緒に!」

 

どうやら俺も巻き込まれたらしい。

 

「ハッピーエンドいらない、フツーのエンドで結構です」

 

「うそうそうそ!なわけないでしょ?かえでだってハッピーエンドがいいでしょ?」

 

「…まあな」

 

「ほらかえでだってそう言ってるじゃん!」

 

「楓を巻き込まない!」

 

「いいでしょ、ねぇ〜」

 

と少女が彩葉に迫っていると、

 

「てか寝かしてー!」

 

と、彩葉が弱々しく叫んだ。




楓…歳の離れた妹がいる。白露に似てる。

彩葉…勉強時間と睡眠時間を確保できた。



奇跡的にやる気が出て書けました。次も出来次第騰荒します。
高評価等いただけるとモチベーションが上がります。
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