快楽主義者、現代ダンジョンをダイスロールで無双する   作:華厳秋@英国紳士

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Episode 6 一期一会《エンカウンター》

 相も変わらず、B級ホラー映画のワンシーンにでも使えそうな白骨死体の山の前。

 ダイスロールでいきなり上昇した身体能力に感覚を馴らすため、適当にその場で素振りをしていること数十分。

 

 薄まってきた血と土の匂いに混じって、僅かな煙の匂いがした。それと、人の気配も感じる。

 

「……あ?」

 

 思わず剣を下げる。特に理由はなかった。

 こんな地獄に居る人間が気になったのかもしれないし、煙の匂いが気になったのかもしれない。

 

 ただ、その存在に興味が湧いたことだけは確かだった。

 

「……こりゃ、ヤニか?」

 

 いつもよりも()()()()がしたせいで気が付くのが遅れたが、この匂いはタバコの匂いで間違いない。

 

「てか、ダンジョンでタバコ吸うとか頭イカれてんだろ……」

 

 思わず呟く。

 その間にも気配は少しずつ近づいてきており、気づけばもう目の前にソイツは居た。

 

――コツ。

 

 森の中でありながら、やけに乾いた足音が一つ。

 視線を向けると、先の木々の隙間から女が現れた。

 

 アッシュグレーの髪を揺らし、その内側からダークブルーのインナーカラーが覗いている。

 

 そいつの目は気だるげに半分ほど閉じていて、口元にはやはり煙草が一本。

 

「……はぁァ。マジで居るの?」

 

 目が合うなりため息なとはこれ如何に。なんか悪いことした、俺?

 ちょっと気持ち悪い化け物を三十体ぐらい殺しただけですけど。

 

「それで、救援要請送ったのはアンタ?」

 

 はて、救援要請とな?

 ……あ、あれか。

 

「俺以外に、地獄へ迷い込んだ馬鹿が居なければ、俺だな」

「そ、ならアンタね。攻略者免許(ライセンス)出しなさい。確認するから」

 

 面倒くさそうに言って、もう一度煙を吐く女。

 

 攻略者免許とは、これまた俺の知らないワードが飛び出てきたな。

 とりあえず、俺の今の所持品で唯一その言葉に該当しそうだった仮免許を渡す。

 

「……はァ?」

 

 失礼なことに、女は大きなため息と同時に紫煙を俺の顔へと吹きかけてきた。

 

「おい、ふざけんな」

「……あんたこそ、ふざけないでよ。ただでさえ事故って疲れてるのに、よりにもよってここまでの馬鹿に出会うなんて……」 

 

 なんか、口悪くない?

 流石に俺が親しみやすいグッドボーイだからって、フルスロットルすぎやしませんかね? 別に良いけどさ。

 

「でも、あんたはラッキーよね。なんせ、救援でこの私を引いたんだから」

「はぁ? 今日の俺を超える不運な奴がいるかよ。俺のお気にのヤニをひと箱、賭けてもいい」

 

 腰のポーチから、ライフルをこめかみに突きつけた男の絵が描かれたタバコの箱を取り出して、女の目の前で振って見せる。

 これをくれたダチが言うには、中々に貴重な高級品らしい。実際のところはどうか知らんが。

 

 女は、眼前でゆらゆらと揺れるタバコの箱を一瞥すると、ほんの僅かに眉を動かした。

 

「……それ、どこで手に入れたのよ」

「え? 知らん。外人のダチがくれただけだし。てかなんだ、これ知ってんのか?」

「知ってるも何も、それ国内には流通してないヤツだし。……はァ、余計ムカつく」

 

 そう言いながらも、女の視線は明らかに箱に釘付けだった。

 

 箱を右動かすと、視線だけが右による。

 左に動かせば、視線が左に向く。

 

 何コイツ。面白れぇ女。

 

「ほしいならやるぞ、ほら」

「……は?」

 

 軽く放り投げると、女は呆けた顔を晒しながら反射的に片手でキャッチした。

 手の中に納まった箱を見つめたまま、固まる女に続けて言葉を投げる。

 

「助けてくれんだろ? その報酬だ。前金とでも思っておいてくれ」

「……さっきからアンタ随分と余裕じゃない。ここがどこだか、理解して言ってる?」

 

 さっきから俺に振り回されているのがご不満なのか、少しいい加減に問いかけてくる女。

 

 

「東京都渋谷区 代々木地獄町 77丁目、だろ?」

「惜しいわね。7丁目の7番地よ」

「そりゃ残念。それとどうやら、新しいお隣さんがご挨拶に来てくださったようだ」

 

 俺の言葉と同時に、地面が、葉が、揺れる。

 そして、再びあの咆哮。

 

 空気が、揺れる。

 

「あらホントだ。何か、手土産はあるのかしら? 出来ればライターなんかあると嬉しいんだけど」

 

 あらあら奥さん。喫煙者にライターは必須ですよ?

 

 仕方がない。

 今回はこの一期一会(エンカウンター)を記念して、俺のライターを贈呈して差し上げよう。

 

「そういや、名前を聞いてなかったな」

「……因幡(いなば)(しず)、準B級。この報酬に見合うだけの働きはするわ。だから、せいぜい足は引っ張らないように努力しなさい。渡島賽人」

 

 ヘイヘイ、善処しまーす。

 

 

 




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趣味でもモチベってやっぱ重要なので……。
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