バスで寝過ごしたら遊園地に着いた。 作:癒トリ素引き侍
さて、そんなこんなでやってきました夜の遊園地ワンダヒル。
今日も今日とて真夜中だと言うのに中々の集まりの良さである。……1回しか来たことないからこれが多いかどうかはわかんないけど。
で、そんな場所に2回目のご来店をしたわたくしなのですが。
「……し、死ぬかとっ、思っ……た……」
改めてメリーゴーランドに着いた瞬間、四方八方を囲まれもみくちゃにされてボロ雑巾みたいになりました。
「あらあら、中々手酷くやられたわね」
「それだけ心配されてたって事でしょ」
「見てないで助けてくれてもよかっただろ……ッイテテ……」
「歓迎の証だと捉えて甘んじて受けるといい。少なくとも、俺たちはそう思っている」
土埃を払いながら、なんとか立ち上がってその様子を眺めていたメグミ達に文句を言っておく。
手厚い歓迎ってそう言う意味の言葉じゃねぇぞ。
「ようやく来たな、不良少年」
「ッヤマザキ……おう。約束通りちゃんと来たぞ、自分でな」
「当然、男と男の約束だからな。破ったら俺達全員で押しかけてやる所だったからな」
「はっはっはっ、冗談でも勘弁してほし」
『マジよ(だぞ)』
「…………」
……うっす、すんません心配かけて。
「あの」
「ん?」
と、まぁ。そんな話し合いをしていたら、横から可愛らしい声が聞こえてくる。呼びかけられた声に反応して振り向いてみると、どこかの学生服を着た可愛らしい桃色ヘヤーの女の子が。
こんな顔がいい子の知り合いなんていないが、どうした事やら。……っていうか本当にこの世界顔が輝いてる人しか居ないな、顔面偏差値どうなってんだ。
「ナギトさん、ですよね? 今日ブラックアウトに新しい人が来るって聞いて、私楽しみにしてたんです!」
「そっか、じゃあはじめましてかな。改めて、見月凪斗です。名前は好きな様に呼んでくれていいから」
「っそうでした、自己紹介! 私、羽根山ウララって言います! その、なんていうか……私以外の新しい人って初めてで新鮮な気持ちというか……」
「あぁごめん、俺ブラックアウトに入る予定とかはないんだ」
「っなんですとぉー!?」
コロコロ表情変わっておもろいなこの子。さてはチームブラックアウトのマスコット枠と見た。リアクションが一々大きくて見てて飽きんぞ。
「なんか、期待させてごめんな?」
「うぅ、大丈夫です。こちらこそ変な期待を……」
「それこそ大丈夫だから、気にしないで。ウララちゃんは……中学生?」
「はい、中学2年です!」
中2と言うことは、14歳ぐらいか。
……いいのか? こんな真夜中にそんな歳の子がここに居ても。御両親から許可は頂いてるんだろうか、お兄さん気になります。
「ウララちゃんってば凄いのよ。まだ小さいけど、その年でヴァンガードのプロファイターの卵でもあるんだから」
「っマジか、そりゃ確かに凄い」
「えへへ、はい! ブラックアウトだけじゃなく、ティルナノーグユースっていうプロチームの奨励会にも所属させてもらっています。……と言っても、まだまだ全然ですけどね」
なんと。こんな可愛らしい女の子がカードゲームのプロを目指してるとは驚きだ。もっとも、動画サイトだけじゃなくテレビでもヴァンガードの大会が放送されてたり、カードゲームのプレイヤーが各地でチームを結成していたりもするこの世界ならではの特色、と言う物なのかもしれん。
世界に特色ってなんだよとは言いたくなる気持ちもあるがそれはそれである。
「となると、チームとプロで二足の草鞋っていう事か。なんていうか、大変じゃない?」
「二足の草鞋っていうか……最近は学校の吹奏楽部にも所属しているので、三足の草鞋と言いますか、三冠目指して邁進中というか……」
「マジか」
どこから出るんだその行動力とバイタリティは。モチベーションどうなってんだこの中学生。
「確かに大変で、色々やる事もあるかもですけど……どれも私にとっては大切で。っ私、欲張りなので!」
「……そっか」
ふむ、なんというか。この一生懸命さと溢れ出るマスコットパワーは。
ウララちゃんからは目を離して、近くで腕を組みながら後方彼氏面してるチームリーダーに向かって一言。
「この子かわいいな」
「ひゃわぁっ!?」
「ふふん、でしょ?」
あ、めっちゃドヤ顔してる。なんならみんなドヤってる。なんだこいつら可愛げがねぇ、ウララちゃんを見習え。
「やぁやぁ、実に盛り上がっているねぇ!」
と、なんとも和やかな雰囲気に包まれているこの夜の遊園地に。
まるでそのムードを引き裂く様に、声を張り上げながらもゆっくりと照らされるライトの下に入ってくる男が、1人。
「……俺も、混ぜてくれないかな?」
メリーゴーランドの光を受け止めて、男は穏やかな笑みを浮かべながら、この夜の闇に紛れ込んで来た。
「(……なんだこのみるからに黒幕っぽいイケメンは)」
っていうかまたイケメンか、イケメンしか居ないのかこの世界は。そろそろ寂しくて泣くぞ俺。
Divinez一期よりは少し前、ってどこやねんと思ったそこの貴方。
つまり、この時期です。
……さて、読み返す様に漫画買いますか。