バスで寝過ごしたら遊園地に着いた。   作:癒トリ素引き侍

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夜を眺めて

「……それにしても、ヴァンガードなんて久しぶりに見たな」

 

「ナギト、ファイトした事あるの?」

 

「だいぶ昔に。ほんとに小さい頃にちょっとだけ」

 

 

リーダー・メグミの紹介の元、現在ではこの場にいるメンバー達との自己紹介を終えて今はトマリとザクサ(呼び捨て、しかも敬語もいらないと言われてしまった)一緒にあちこちでやってるフリー対戦を眺めている。メグミは次々くる対戦希望者をばったばったと薙ぎ倒している。パワフルぅ。

 

 

「俺がやってた頃とはずいぶん変わってるし」

 

「カードやデッキも日々変わっていくものよ。勿論、それはヴァンガードだけじゃないけど」

 

「過ぎていく時間の中でその移ろいに身を委ね、時に逆らいながら変わっていく色を見る。懐かしむのも、驚くのもその楽しみの一つだ」

 

「風流ねぇ、ザクサ画伯」

 

「(やっぱりわからん)」

 

 

相変わらず、ザクサの言っている事の全部は理解しきれないが、確かに久しぶりに見ると結構面白い。基本ルールは俺がやっていた頃とは同じに見えるが、変わっている所も随所に見られる。

 

 

「どう? ナギトも見てたらファイトしたくなった?」

 

「まぁ見てると楽しいけど、実際プレイするとなるとまだそこまで、かな」

 

「あら、残念」

 

「ごめん、せっかく誘ってもらったのに」

 

「何事も人それぞれのペースがある、気にしなくていいさ」

 

 

が、実際に遊んでみたいかと言うとまだわからない。そもそも今のルールのカード持ってないからやりたいなんて言っても今すぐにはどうにもならないし。

 

 

「それにまずはどうやってここから家に帰るかだしなぁ……」

 

「バスもそのうちここに辿り着く。他に家に帰る人もいるだろうから、その時一緒に行けば迷うこともない。まぁ、気長に待つといい」

 

「まぁ確かに、もうどれだけ遅くなってもここまでくれば関係なさそうだし、そうするかな」

 

「そういえばナギトの着てる制服、ここら辺じゃ見ないわね。どこの学校?」

 

 

もう時間も真夜中に入りつつあるけれど、1人じゃ勿論帰れないし、ここまでくるともはや日を跨いだって仕方ない。そもそも連絡もまだ全然つかないし、なんならあっちからも特に連絡らしい連絡は送られてきていない。放任主義にも程がある。ちょっと泣きそう

 

 

「えーっと、◯◯高校。まぁそこまで有名な学校じゃないから言われてもわかんないかも」

 

「……◯◯、高校?」

 

「そうそう、◯◯高校。はいこれ学生証」

 

 

疑問符が浮かんでる顔のトマリに、制服の胸ポケットに入れていた学生証を開いて手渡す。別に名門校というわけではないし、すぐに出てこなくても当然だろう。それに、もしかするとバスは俺の事をとんでもない遠い所にまで運んできた可能性もあるので、尚更聞き馴染みのないのかも。

 

 

「……これ、どう言う事?」

 

「???」

 

 

しかし、手渡した学生証を見つめるトマリの表情はどこかおかしい。思った反応とは少し違っていて、見てるこちらも変な感じがする。

 

 

「いや、でもそんな……」

 

「どうしたの、トマリ」

 

「ザクサ、これ……」

 

 

トマリの様子に違和感を覚えたのは俺だけじゃないのか、ザクサもトマリに向かって声をかけるが。そして、トマリに誘われるように学生証を見たザクサは、それまでの飄々とした雰囲気と変わり、どこか険しい表情を浮かべる。

 

 

「……あの、えーっと?」

 

「ナギト、これは本当に君が通う学校の物で間違い無いんだね?」

 

「あ、あぁ、間違いないと思うけど」

 

「ナギト、自分が住んでる住所、私達に今伝えられる?」

 

「ぇ……◯◯県の◯◯市……」

 

 

さっきまでの2人とはどこか違う空気感にたじろきながらもゆっくり答える。自分でも心の中で確かめながら、ゆっくりと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな地名は聞いたことがない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………は?」

 

 

 

ザクサから告げられた言葉の意味がわからなかった。

 

冗談みたいな話を、それはもう真剣に。

 

 

まるで、こちら側とあちら側を明確に別つように、はっきりと。

 

 

 

「ここは加賀国金澤市……あなたは逆に、この加賀国の名前を聞いた事はある?」

 

「…………な、ぃ」

 

 

 

「っナギト、落ち着いてもう一度聞かせて。ゆっくりでいいの」

 

 

 

まるで夢物語でも見るように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あなたは一体どこから来たの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そこからの事は、よく覚えていない。

 

気づいた時に自分が見たものは、同乗してこちらに呼びかけるトマリとザクサに支えられながらサイレンのついたパトカーに乗せられていたミラー越しの自分の姿だった。




こ れ が や り た か っ た 。


急展開だなと思った人がいると思うので、ひとまず解説を。解説をしても急展開に変わりはありませんが。あと読み飛ばしてくれて特に問題ありません。

まずは主人公、見月 凪人くんのことです。
お話の流れを見て取れるように、彼はOverdressシリーズに出てくる世界とは別の世界の異世界転移者です。転移元の世界はごく普通の世界であり、ヴァンガードのカードもアニメもあれば、他のカードゲームもある、我々とほぼ変わらない世界です。理由付けも一応ありますので機会がある時に。

一応伏線としては
・自販機で買った飲み物のメーカーを見た事も聞いた事もない。
・アニメの世界では逆に珍しい黒目黒髪である。
・ヴァンガードのアニメではシンさん以外に見ない苗字、名前ともに漢字表記。自身で名乗る時は漢字なのに対し、メグミ達の呼び方はカタカタで表記。
・この世界ではテレビ放送されるほどヴァンガードの大会が賑わっているのに、久しぶりに見たと発言。
などです。

また、「自分がやっている時とは随分変わった」という発言ですが、彼がやっていたのはスタンダードルールでのヴァンガードであり、当然ライド事故を予防するライドデッキや、トリガーの+数値が10000がある現在のルールとは違うものです。

スオウやナオの昔のファイトっぽいものを見る限り、基本的にOver dressの世界線ではVシリーズのポスターとかはあっても出てるカードはDシリーズのものしかなさそうだったので、それ以前のシリーズのカードは無かった扱いにしています。これがタグにある『オリジナル設定』の部分ですね。ディアデイズ2とは違うカードの歴史になっていますが、そこはご愛嬌という事で。矛盾があったらごめんなさい。

見返すと、トマリ達と彼の会話は

「俺がやってた頃とは随分変わった(ルールが)」

「カードもデッキも変わるもの(新規カードの追加)」

という少しズレた会話になっています。こう見るとほぼコントですね。
ヒロインは一応決めてはいますが、その通りにいくかどうかはまだ決めていない状況です。確定したとして、ずっと恋愛展開ばっかりするわけでもないのですが。

さて、と言うわけでいつのまにか全く見知らぬ土地に放り込まれた凪斗くんの明日はどうなる、と言ったところで今回は終わりです。お疲れ様でした。
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