バスで寝過ごしたら遊園地に着いた。 作:癒トリ素引き侍
「やめとくわ」
予測していたもんなので、あらかじめ用意してた返事を先に返しておく。誘っていただけたのはありがたいが、こっちにその気は最初からない。変に引き伸ばすとそれはそれで失礼な気もするし。
「せっかくまた誘ってもらったってのに、悪いな」
「ううん、大丈夫。多分そうだろうなって思ってたから」
「一応断る理由とかって言っといた方がいい?」
「無理には聞かないよ」
「さいですか」
何から何まで気遣い山盛り、本当に頭が上がらない。
誘ってくれたのは口に出していた通り本当に嬉しい。見ず知らずどころか正体不明の怪しい人間はいどうぞって引き入れようとするの、一歩間違えばサークルクラッシュどころの騒ぎじゃないだろうに。
「まぁ、今はともかくそれどころじゃないって事で勘弁してくれ」
「うん。わかってる」
「あざーっす」
「ははっ、軽いなー」
口に出したこれも、本当の事。
本当にもうそれどころじゃない、生活の基盤……詰まるところ一先ずの住む場所からはじまり収入源の確保、あとは生きていくために使いそうな免許やら資格やらのために必要な戸籍だの個人情報の証明に必要な為の色々だの、やる事が山積み過ぎていまから頭が痛い。
その状況でまずやるのがカードゲームなのかってのも、正直順序がおかしいと言わざるを得ない。悪いけど、まずは他にやる事がほかにあるだろうって話だ。
「っていうか、マジでどうしようこれからぁ……!」
「アンタ、笑ったり落ち込んだり泣きそうになったり忙しいわね」
「ぁー……正直断った挙句にこんな事相談するのもアレだけどさ、実はかくかくしかじがで」
「いや、それ結局理由も言っちゃってるじゃん……」
あらやだ、迂闊♡……すまん、自分でやってて普通に気持ち悪いわこれ。でもこの際洗いざらいぶちまけちまおう。
ちょっとだけ、すこしだけ楽させてくれ。
「なんていうか……ほんとに無い無い尽くしなんだ」
「目下の悩みが『どうやって生きていこう』ってレベルだからなぁ。流石に現在の所持金数千円じゃ、これからの事を考えると何ともならん」
「仕事……仕事かぁ……」
「それもそうだけど、住む場所も早く探さなきゃなぁ」
「……住み込み、とか?」
「住所不定のよくわからないやつを住み込みで働かせるなんてリスク高い事、まともな仕事じゃほとんどないだろ……」
「だよね」
生きていくにはお金が必要だが、お金を得るためは働かなきゃだめ、でも仕事は身元不明の人間にはそう簡単に任せられない。しかし身元不明の人間に貸せる賃貸が存在しないのは確か。住む場所がないと生きて行く事はできない、そして当然、生きて行くにお金が……
……やっぱこれ、積んでない?
「うーん……住む場所と、仕事……」
「堂々巡りっていうのかねぇ、これ」
「うーん……」
頭を捻って考えても、いい案なんて出て来ない。メグミも何か考え込んでくれてるらしいのか、顎に手を当てて俯いている。
やっぱり少しの間は警察で明導さんやトマリ達が言ってたように法の元でなんとかしてもらったほうが……
「あっ!!」
そして突然。何かを思い出したかのように、大きな声と共に勢いよく顔を上げるメグミさん。急に隣で大きな声出すのやめて、びっくりするから。
「住む場所と仕事、なんとかなるかも!」
「……マジで?」
そして、こちらを振り返りながら言われた一言が信じられずに半信半疑で聞き返す。この状況で打開策立てれるってマジ?
あと、今気づいたけど近い、顔が近い。やめて眩しい目が潰れちゃう。
凪斗くんの所持金。
現金4158円+これからは二度と使えないポイントカード3枚+もう今は意味のないレシート3枚