バスで寝過ごしたら遊園地に着いた。   作:癒トリ素引き侍

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「おおぉ……こりゃあ、すげぇな。なんていうか……秘密基地、みたいな?」

 

「それならどっちかっていうとワンダヒルのほうがそれっぽいかな。トマリはここ見た時に『男の城』だー、なんて言ってたっけ」

 

 

なんやかんやとメグミに連れてこられたのは、中々に年代物な一軒家。コンクリートと少しの草木で覆われた無骨な、しかし昔ながらの風流を感じれるノスタルジー的な一室。中にある家具も一昔前の物が多かったりするが、どれもまだ現役らしい。

 

 

「急にごめん、ヤマザキ。いきなり呼びつけて」

 

「新リーダーたっての招集だからな。話を聞いた時は少し驚いたけど」

 

「……ありがとね」

 

「おう、これぐらいならお安いご用だ」

 

 

そして呼びつけられたのは俺だけじゃなく、チームブラックアウトのメンバーであるヤマザキもここに来ていた。ついでにこの人あの時の現場に居た人なわけで、俺の事情をある程度は知ってる内の一人だったりする。やん、恥ずかしい。

 

 

「聞いたよ、すごい事になってるんだって?」

 

「……正直、信じてくれるかどうかは微妙だけど、自分でもすごい事態に陥ってるっていうか……」

 

「信じる、信じないは置いといてさ。困ってるって事には変わりねぇだろ? 俺らでできる事なら手伝うぜ」

 

「……さんきゅ」

 

 

やばい、本当に。

こうまで言われると、その善意に泣きそうになる。やめて最近涙脆いのよ俺。

 

 

「っでも、ここって本当に使っていいのか? その……兄貴の家なんだろ? 俺なんかが使って……」

 

「うん、さっき隣で電話してたの聞いてたでしょ? 兄貴もそういう事ならって。あぁ、事情とかは話してないから安心して」

 

「あの電話ってそういう……」

 

 

 

『《うおぉー! 裸一貫、たった一人で見知らぬ土地で生きていこうたぁ漢じゃねぇかっ!》』

 

『「(声でけぇな……)」』

 

 

 

そういえばあの後すぐどこかにメグミが電話していたが、あの相手が兄だったのか。なんと言うか、パワフルなのは遺伝という説もあるな。

 

 

「だから、気にせず使って。私と兄貴のお墨付きっ。しかも来月分までの料金に関しては兄貴が払ってくれるみたい。なんか、餞別だーって」

 

「……ほんと、何から何まで。もし会う事があったら礼も言わないとな」

 

 

イケメンか? 顔は見た事ないけど多分イケメンだ。いや、メグミの兄貴ならそりゃ美形だろうけども。

 

 

「そういうわけで鍵はお前に預ける。ほら、受け取れ」

 

「まじでなんか、悪いな」

 

「気にすんなって。でも、これまでは俺が管理してたから掃除とかなんとかは俺がやってたけど、今日からはお前に交代だからな、サボんなよ?」

 

「おう、それぐらいなら任せろ」

 

「へへっ、言ったな? やらなきゃならない事はその机の上に書いて置いとくから、後で見てくれ」

 

 

 

そう言って、ヤマザキの手から俺の手へこの部屋に入った時に使われた鍵が渡る。

なんと言うか、片手で収まる筈の小さな鍵が今はなんだか重く感じるのは気のせいなのかなんなのか。

 

 

「……あぁ、そうだ。後もう一つ、やらなきゃ行けない事があるな」

 

「っおし、ドンと来い!」

 

 

ヤマザキが思い出したかの様に俺を見る。ここまでくればある程度の事はやり遂げる覚悟はあるし、雑用でも使いっ走りでもなんでもやってやるぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたら、さ。また来いよ、ワンダヒルに」

 

「……ぇ?」

 

 

言葉が、でなかった。本当に、掠れた声が喉に引っ掛かって。言われた事があまりに予想外すぎて自分でもちゃんと返事を返せたのかもわからない。

 

 

「あ、それわたしも賛成」

 

「ブラックアウトに入るとか入らないとか、ヴァンガードをする、しないとか。そんな事はいいんだ。……顔、出しに来いよ。いつでもいいから」

 

「ーーーーっ」

 

「ブラックアウトは来るもの拒まず。お前がどこの誰だって、俺たちみんな構やしないって」

 

 

だから、やめてくれって言ってるだろ。

 

涙脆くて、顔見れなくなるから。

 

 

「っあぁ、あぁ……! 約束っ、する……絶対、絶対行くよ。また、ブラックアウトのみんなに、会いに、行く……っ」

 

「おう、男と男の約束だ。……って、ダンジさんならそういうか?」

 

「ちょっと、私も居るんだけどなぁ」

 

「っおう……メグミとも、するよ、約束っ。また、絶対会いに行く。今度は、自分の意思でワンダヒルに……!」

 

「……うん、約束」

 

 

受け取ったものが重すぎて、どこから返していけばいいかわからない。

 

貰ったものが多すぎて、何をしていけばいいか思いつかない。

 

それでも、この約束だけは裏切れない。

二人と……ブラックアウトのみんなとのこの約束だけは、必ず守らなければならないのだと。

 

たった一人になった俺を、一人にしない為にしてくれたこの約束だけは。




凪斗くん、その兄貴お兄ちゃんとちゃうで。なんならそれぞれ別に妹と兄貴おるで。

というわけで、多分皆様予想ついてたでしょう、ダンジくんの男の城が凪斗くんの拠点となります。となれば、仕事というと……?

ところであの、ヒロイン候補のうちの一人がバリバリラスボスになった話します? あぁ、しません? そうですか。
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