路地裏事件(仮称)があってから、よく汐見とはばったり会った。
ある時は学校の帰り道、ある時はスーパー、はたまたある時は夜の散歩。
そんなだからお互いに、「よく会いますね」と苦笑したほどだ。
今日もまた、近所のコンビニで会った。
せっかくだからと、その近くにある公園で駄弁ろうなんて、そう思った。
汐見は意外にもその提案に乗ってくれた。
これなら、話してもいいのかもしれない。
『汐見さん、少しいいですか?』
『はい、なんでしょう?』
交換した連絡先でメッセージを送る。
『少し、気持ち悪いことを言うかもしれませんが』
『大丈夫です。雪代さんの話ですから』
『ありがとうございます』
大丈夫。ただ、聞こえるってだけだから。
そうやって、言うだけ。
『あなたの声だけ、ずっと聞こえてました。汐見さん』
そう送ると、既読だけがついた。
スマホから目線を外すと、唖然とした顔の汐見がこちらを見ていた。
そして、ゆっくり口が開く。
「...全部、聞こえていたんですか?」
『すみません、ちゃんと喋れる自信がないので。そうです』
「そう、ですか。じゃあ、私の歌は、届いてたんですね」
『はい。素敵な歌声でした』
そう言うと、汐見は泣き出した。
こうなるとスマホの画面は見れないだろう、そう思って、軽く抱き寄せた。
「え、あの、雪代さん...?」
ヤンキーには言えた、きっと言える。
「...すてきな、うた、ですよ」
「...あ、りがとう、ございます...」
汐見の背中をさすりながら、きっとうまく言えただろうと感じる。
しばらくして、汐見が落ち着きましたとゆっくり離れる。
「すみません、慰めてもらってしまって」
『いいえ、私が泣かせてしまったようなものですから』
「そんなことないです。伝わったと聞いて、うれしかったので」
そう言って、ふわっと笑う汐見の顔を見て、既視感を覚える。
路地裏のとき?ライブのとき?いや、それ以前...?
「...零、さん?」
「どう、しまし、た?」
「...私たち、前にも会ってますか?」
「...え?」
今、考えていたことと全く同じことを声に出され、困惑した。
俺だけならまだわかる。気のせいだろうと。
しかし、今目の前の彼女も全く同じことを思った?
『どうして、そう思ったんですか?』
『その、抱きしめられたときの温かさが、誰かに似ていて...』
『...では、本当にどこかで会っているのかもしれませんね』
『そういうの、運命って言うんでしょうか』
そうかもしれないですね、そう打とうとして。
突然、ひどい頭痛に襲われた。
「っ...」
「雪代さん!?大丈夫ですか!?」
まずい、意識が...。
目が覚めた。
知らない天井...ではない。そもそも、天井がない。
室内でないことはまず驚くべきだろう。
汐見が外へほっぽりだすタイプだとは思わないし、そもそも放置されてたなら場所は変わっているはずがない。
「ここ、どこ?」
millsageストーリーティザー出たので
段々ストーリー路線にしていこうかな