TS魔法少女だけど転生先が鬱エンドだらけなエロゲ世界で安心できない   作:ラーメンの渦巻

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第2話

 この世界の治安はどうしてこう終わり散らかしているのか。

 いや、実際のところを言うとエロゲ世界なのにエロゲらしい出来事は今のところ起きてはいないかったりする。

 むしろそういう目に合うのは主人公たる【フェアリー・ルリリ】だけに集中しているから、それを自分がことごとく潰しているので結果的に何も起きていないという事なのかもしれない。

 よくよく考えてみても原作でも彼女のスチルしかなかったはずですしね、例外は闇堕ちした後に彼女自身が他の魔法少女とちょめちょめするシーン()。

 なのでぱっと見、表面的にはこの世界の治安は割と保たれているようなのだが、実際はいつ爆発するかも分からない火薬庫状態である。

 具体的に言うと、何かの拍子で魔物にやられてイベント発生したり住人が脅されたという理由で魔法少女を毒牙に掛ける、とか。

 そもそもどうして【フェアリー・ルリリ】だけが集中攻撃されているのかって事なのだが、それに関しては割と浅い理由がある事が原作で語られていた。

 それは単に彼女が強い魔法少女だからだ。

 強い魔法少女だから真っ先に倒されるべきだし、闇堕ちすればなおのこと良い。

 そんな理由で彼女は狙われているのだ。

 理屈としてはかなり分かるが、そのまんまな理由だなーと思いました。

 

『で? 君から見て【フェアリー・ルリリ】はどうなんだい?』

 

 そんな風に曖昧な問いをしてくるのは私の契約妖精の――瑠璃のところに飛んできたあの紫色の生物と同類だ――ドリースペアがそう尋ねてくる。

 家に帰ってきた私は食べかけのハンバーガーを咀嚼しながら適当に答える。

 

「どうって言われても。まあ素直に凄いと思うよ?」

『曖昧だね』

「そもそも質問自体が曖昧だったからね」

『じゃあ質問を変えよう。君の眼鏡にかなう存在かな?』

「それもまた曖昧な質問だ。まあ、好きか嫌いかで言ったら好きだよ、彼女の事は」

『ふぅむ。てっきり君の事だから彼女の歪んだ表情を見るのが楽しみとか言うのかと思っていたが』

「歪んだ性癖過ぎるでしょ」

『だが、君の人格は歪んでいる』

「酷い言いぐさだなぁ、まあ否定はしないけどさー」

 

 はあ、とため息を吐く。

 それから目のまえの空飛ぶ生物を無視してワイヤレスイヤホンを装着、ベッドに横になってASMRタイムにしゃれこもうと思ったが。

 

『君の性癖は歪んでいると思っていたが』

「イヤホンを貫通してくるなよー。いやまあ私の性癖が歪んでいるのは事実だけどさ」

『『女の影がちらつく貴方の事が大大大好きな幼馴染とヤンデレちゅっちゅする音声』』を週三回は聞いているのは流石にヤバいと思う』

「読み上げんなし」

『だが実際、君は少女の表情が歪むのを心の底から望んでいる』

「それは私の事を勘違いしてるよ。私は女の子のハッピーエンドが好きなんだ」

『そうなのか?』

「その過程でいくつもの困難に立ち向かう事になって欲しいとは思うけど」

『なるほど』

「それで表情を歪ませて曇らせるのが一番好き。それでもちゃんと幸せになってくれたら絶頂ものだ」

 

 辛い目にあって欲しいってだけで不幸せになって欲しい訳ではないのだ、私は。

 ……我ながら割とあれな発言をしている自覚はある。

 ハッピーエンド主義者ではあるけど、自己紹介では絶対にそのように言えないだろう。

 

「それで? それがどうかしたのさ」

『話を戻すが。【フェアリー・ルリリ】の事をどう思う』

「うーん、良い表情を浮かべるよね。天真爛漫で良い子だし」

『どこかの誰かとは大違いだ』

「喧しいわ。それで、だから彼女にはきちんと幸せになって欲しいし、努力が報われて欲しい」

『少女の時が終わるまで、か?』

「そうだね、きちんと魔法少女を卒業して欲しいね。それまで、えーっと。あとどれくらいだっけ?」

『彼女は今、16歳。そして少女の時の終わりの平均は18歳だ』

「んー、じゃああと二年はあるのか。長いね」

 

 その前にこの世界のすべての魔物を駆逐するとは言えない。

 あれはそもそも「そういうもの」なので終わりというものがない。

 ここが地球に生きている以上自然災害があるのと同じように、この世界では魔物が常に現れるようになっている。

 

「んー。もしかしてこの世界の住人が時々おかしくなるのももしかして『そういう』ものだから?」

『その『そういう』が何を指し示しているのかは分からないが。少なくとも魔物は人々の思考を歪ませる力を持っている者もいるらしい』

「なるほど」

『君の思考ももしかしたら魔物によって歪まされたのかもしれないな』

「だったら良かったんだけどね、残念ながら生まれつきだ」

『終わってるな』

「それは我ながら思う」

『難儀なものだ……君のような存在に魔法少女の才能があり、かつ声をかけてしまったのは僕の一生の不覚だとは常日頃から思っている』

「後悔は今更だね、今後も困ってもらうよ」

『お手柔らかに頼む』

 

 やれやれ、とドリースペアは肩をすくめて見せる。

 見た目は人形サイズのマスコットなのにやたら似合っている仕草だった。

 なんだかムカつく。

 

「やれやれ」

『そういえば』

「……なあに?」

『ちょっと思ったというか前々から不思議に思っていたのだが。あの【フェアリー・ルリリ】が危機に瀕した時いつも君は助けにいっているが。それはどういう理屈なんだい?』

「盗聴器仕掛けてるから」

『自首を勧める』

「うそうそ、流石にそんな事はしてないよ。それに関しては単に『そういうもの』だって思ってくれると助かる」

 

 ゲームの仕様通りならば、事件はいつだって登校中、昼休み、放課後のどこかで起きる。

 そこだけ集中していればあとは放置していても問題ないのだ。

 とはいえここは現実なのでもしかしたら想定外の出来事が起きるかもしれない。

 だから不定期に見回りはしているが、今のところ自分の想定を上回るような事態は発生していなかった。

 

『ふうむ。君は相変わらず不思議な存在だ』

「不思議ちゃんは褒め言葉じゃないよ」

『褒めてないよ、何なら不気味ですらある』

「女の子に向けて言う言葉じゃないね」

『時々、もしかしたら君は女の子の皮を被った化け物なのではないっかと思う時がある」

「失礼な奴やなー」

 

 まあ、実際問題私はTS転生者なのでその発言は半分あっていると言えるのだけれども。

 わざわざそれを指摘するつもりはない。

 面倒ごとになりそうな発言を率先してするつもりはないのだ。

 

『む』

 

 と、そこでドリースペアが身を震わせる。

 何事か、と質問はしない。

 ただため息を吐く。

 

「また?」

『ああ。魔物の襲来だ』

「なんか最近多くなーい?」

 

【フェアリー・ルリリ】を襲う事件は三つのタイミングを中心に起こるが、しかし魔物の襲撃自体はこのタイミング以外でも起こりうる。

 何ならドリースペアはやたらそれを察知しやがるのでそのたびに私は魔物討伐のために駆り出されるのだ。

 

「勘弁してくれー」

 

 そうぼやきつつ、私は魔法のステッキを取り出し変身する。

 

「コネクト……愉悦と秘密で世界を嗤う――【グリム・スノー】」

 

 改めて、自分の格好を見下ろす。

 長く伸びた金髪に黒緑のシックなジャケット。

 ズボンスタイルな魔法少女というのも珍しい気がするが、それはさておき。

 

「んじゃ、いこっか。ドリースペア、ナビして」

『了解だ――ここから100メートル先、右方向だ』

「本当にナビっぽいせりふを言うなし」

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