班分けの日、ルーキーの担当上忍たちは行きつけの酒酒屋で酒を酌み交わしていた。
「オレんところは猪鹿蝶で有名な家のガキどもだが、なんせ個性が強すぎて疲れる。一人は一言目にメンドクセーメンドクセーって。一人はポテチ食ってばっか。くノ一はキーキーうるせえ」
「ああ、……あれくらいの年頃のくの一はそうよね。私のところは……サクラとキバがよくぶつかるわ。キバはバカだけどリーダーシップとりたがるし、サクラは頭が良いから口を出したくなるのよ。シノは……静かね。カカシのところはどうなの?」
「どうなんだカカシ」
紅もアスマも今日はその話が聞きたくて来たようなものだった。
「一言で言うなら、ナルト教のナルト信者」
「「は……?」」
「サスケもヒナタも何でかナルトのことが大好きなんだよね。もう妻妾同衾の勢い」
「うちはと日向の妻妾同衾……。最強だな」
「にわかに信じがたいんだけれど……」
「目線というか……雰囲気が、ね。オレ、あの三人の中に入る余地ないって。いっそオレなんかいなくていい」
((カカシ、スイッチが入ったな))
「……明日さ、例の鈴取り演習するんだけど、正直怖い。何されるかわかんない……。チームプレイも難なくできそうだし」
「写輪眼に白眼に……九尾。上もそれを一纏めにするあたり、お前の信頼も厚いのがわかるな」
「……たぶん、サスケとナルトには教えること、何にもないよ。あの人たちのお墨付き。ヒナタだけかな。オレが何か教えるとしたら」
「そんなに……?」
「ナルトなんか蛾蟇と契約して仙術も使えるし、チャクラの性質変化までやってのける」
「「……。」」
「サスケは最終形態の写輪眼とか持ってるし。うちはの秘蔵っ子だよ。しかもあの大蛇丸様を口説き落とした張本人。もちろん蛇と契約済み」
「なにそれやだ怖い……。もし彼らが中忍試験に出るとしたら、他の受験生にとっては悪夢の中忍試験になるわね」
「でしょ?!怖いんだよ。明日の演習であいつらどこまで力出すか分かんないから!」
「……カカシ、その鈴取り演習、ムリにしなくても良いんじゃないか?……オレならしたくない。いや、しない」
「アスマ……。オレはその言葉を聞きたかった」
零班の三名は、カカシから言われた通り朝食抜きで待ち合わせの場所に集合した。
「おい、手を出せ」
サスケに言われて、ナルトとヒナタは不思議に思いながらもサスケの前に手を出した。サスケは腰のポーチから、小さな包みを二人に渡した。
「あ!サンキューってばよ」
「これ、何?」
ナルトは分かっているようだが、ヒナタは首を傾げた。
「サスケお手製の兵糧丸だってばよ」
「そうなの?サスケくん、ありがとう!」
「礼はいい。今のうちに食っとけ」
その瞬間、今までなかった気配にナルトとサスケは身構えた。
「お前ら!!……合格合格。もう合格で良いよ」
「「「え?!」」」
「兵糧丸なんか使われたら先生困るよー。確かに飯は食ってくんなって言ったけど、兵糧丸のことは禁止してないもんね。腹ごしらえは大切だよほんとに。それに、万が一オレが任務で負傷してお前らだけで任務続行しなきゃいけないって場合もあるかもしれないしね。自分で考えて行動するってのはできてる、と思ってもうみんな、ごーかっく」
「えー。先生と手合わせしてみたかったってばよ」
「お前らの実力がおかしいってことくらい先生もわかるよ。……午後からできるような任務があれば、任務、やってみる?」
「おー!やってやるってばよ!」
「わかった」
「はい、やってみたいです」
「じゃ、午後一時にまたここに集合。オレは火影様のところに行ってくるよ」
カカシは姿を消した。飯の代わりに兵糧丸という考えが恐ろしい。カカシは汗を拭いた。
「火影様、失礼します」
「……ん?カカシか。あいつらは、どうだ?」
「どうって……とてもオレの手に負えません。実力がおかしすぎるのは分かりきっていますし、三名の仲間意識は高いので合格にしました。まずは難易度の低い任務でもやらせようかと」
「そうだのぉ……。今日は里の草取りの任務くらいしかないぞ」
「もうそれでいいです。里中の雑草を根こそぎきれいにさせます」
午後一時、ナルトたちはもちろん、カカシも集合時間ぴったりに姿を現した。
「カカシ先生~!何の任務だってばよ?」
ナルトは目をキラキラさせてカカシに迫る。
「落ち着けってナルト。下忍の任務はDランクからと決まってる。今日は里の草取りだ」
「カカシ、範囲は?」
「特に決まってないけど、どうしたの?」
「……効率が悪いだろうが。他の下忍も同じ所を数日前にしていたらどうする気だ」
正論だった。
「はい……。善処します」
「先生、頑張りますから……」
カカシはヒナタから気をつかわれた。
「じゃ、先生は草取り任務の改善案をまとめるから……って聞いてない?!」
「ヒナタとオレはこのエリアを担当する。ナルト、お前は残りの九割のエリアを頼む」
サスケはどこから出したのか里の地図を広げていた。
「え?!それってちょっとひどくねぇ?」
ノルマがナルトに偏りすぎやしないか。
「得意の影分身があるだろう。ホラ、追加の兵糧丸。……お前のために作った」
(サスケがオレのために……)
「やらせていただきまーっす!多重影分身の術!」
ナルトはサスケに転がされ演習場には影分身約百人が整列した。
「ナルトくんが、たくさん……!!」
「くれぐれも雑草だけを始末しろ」
「「「「「オッス!!」」」」」
全員が敬礼すると、ナルトの分身は四方八方に散らばった。サスケのナルトを扱うスキルはすでに最高値に達している。
「よし。ヒナタ、オレたちはこっちだ」
「う、うん」
サスケは勝手に里全体の草取りをすることにしたらしい。
「ちょ……おまえら……」
仮にも部下である下忍を止めることができないのは問題かと考えたが、草取りという公共奉仕任務であれば問題なかろうと都合の良い解釈をし現実逃避したカカシであった。
三時間後、サスケは演習場に集められた雑草の山を見つめていた。
ーー天照
雑草の山が黒い炎に包まれた。いくらサスケの右目が永遠の万華鏡写輪眼でも天照の無駄遣いだ。
「それって普通の火遁でもよくね?」
「他のものに移った時が面倒だ」
「あ、なるほど」
そんなやり取りを普通にしているナルトとサスケ。
「先生、わたし……今回の任務に必要なかったのではないでしょうか……」
「……。そんなことないよー」
「あ!こんな任務ならオレらが片付けるから、その間ヒナタはカカシ先生と一緒に修行したらいいってばよ」
ナルトの言葉を受け、ヒナタの肩が震えている。
「ひ、ヒナタ?」
カカシは恐る恐るヒナタの顔を覗き込む。
「先生……。たしかに私は役立たずです。強くなりたいです!修行をつけてください!」
「よ、よーし。先生と一緒に頑張ろう!」
「よろしくお願いします!」
この日を境にDランク任務でも奉仕系の忍でなくてもやれる作業の時は、二手に分かれることとなった。スリーマンセルというシステム上、推奨されないスタイルである。
「ナルト、サスケ、今日はよく頑張ってたが、一つだけ、先生と約束してくれ」
「なんだってばよ」
「約束?」
「今日はびっくりしたから、これからは必ず何をするのか先生に言ってから行動すること!」
カカシは頑張って叱ってみた。
「カカシ先生、ごめんなさいってばよ」
「……すまない」
意外と素直な反応が返ってきたためカカシは拍子抜けする。
「……分かってくれたら良いんだよ。次からよろしくね」
その間、ヒナタは演習場の丸太に向かって柔拳を打ち続けていた。
恐怖しているのはカカシ先生でした。