もし二人であの頃に戻れたなら(完?)   作:冬乃菊

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はかぜの章:中忍試験編
次代に継承するもの


 波の国のなんちゃってCランク任務が終わると、零班は他の下忍たちと同じようにDランク任務に励む日々が続いていた。ナルトとサスケがうんざりするのは当然だが、ここ数日、ヒナタもこのDランク任務が続いていることに焦りと不満を抱いていていた。

 今日の任務は科学班で行われている研究のサンプル採集であった。土壌の研究のようで、決められた場所の土をひたすら透明のパウチに入れて保存するというただの肉体労働だ。多重影分身の術を使えるナルトが適任だとして与えられた任務だった。

 任務は予定よりもかなり早く終え、カカシは報告書の提出のため火影塔へと向かったため、零班は早々と解散となった。任務が終わったとはいえ、まだ正午さえ回っておらず日は高い。ヒナタは溜め息をついた。

「……ヒナタ、何か悩んでるんなら話くらい聞くってばよ」

 我慢強いヒナタが溜め息をつくなど余程の事だ。それをよく知っているナルトは声をかけずにはいられなかった。

「えっ……わたし、そんな風に見える?」

 ヒナタはようやくナルトとサスケの視線に気がついた。

「強くなろうと、気負い過ぎているんじゃないか?」

 サスケの言うことはどうやら図星のようで、ヒナタは否定せずモジモジと両手の指を絡ませる。

「そっか。ヒナタってばそんな事を考えてたんだな。……なあ、この後さ、木ノ葉丸の修行に付き合う約束になってんだけど、ヒナタも行かねえ?サスケも。モエギもうどんも喜ぶってばよ」

 木ノ葉丸は三代目火影・ヒルゼンの孫で、ひょんなことからナルトを兄と慕うようになったアカデミーの少年だ。ナルトは任務の合間に都合をつけては木ノ葉丸の修行につき合っていた。

 零班のヒナタは、ナルトの知るヒナタよりも格段に早く力を付けてきている。その原動力でもあり、ヒナタを焦らせているものが自分だという自覚もあった。

 

 ナルトたちは木ノ葉丸と約束している演習場へと向かった。この日のために木ノ葉丸がヒルゼンに頼み込んで確保した演習場だった。木もあれば池もあるため、多くの修行におあつらえ向きだ。

「おーい!木ノ葉丸」 

 ナルトは木ノ葉丸たちの姿が見えると、手をブンブンと振って大声で呼んだ。

「あっ、ナルトの兄ちゃん!早いなコレ!」

「任務が早く片付いたんだってばよ」

「リーダー、この人たちは?」

「オレの班のメンバーだってばよ。ヒナタとサスケだ」

 木ノ葉丸たちは子供らしく無遠慮にヒナタとサスケの爪先から頭の天辺までまじまじと見ると、顔を見合せた。

「強そうだね!」

「うんうん!」

「えっ!……えーと、オレは?オレは?」

「「「リーダーはバカっぽい」」ぞコレ」

 ナルトはガクッと項垂れ、サスケは吹き出していた。

「そんないことないよ。ナルトくんは強いんだよ?」

 ヒナタは慌ててフォローを入れており、それがまた切ない。

 だが、ヒナタが言うようにナルトは強い。にも関わらず彼らの態度を見るとろくな修行などできていないのではないだろうか。

「普段はどんな修行をしている」

 サスケが問うと、木ノ葉丸は両手を腰に当てて得意げに胸を張る。

「フフン!サスケの兄ちゃん、よーく見ておくんだコレェ!モエギ、うどん、準備はいいかコレ!」

「ちょっ!おまえらそれは……」

 我に返ったナルトが慌てて制止したがそれを聞く三人ではない。

「「「お色気の術!!!」」」

 木ノ葉丸たちが立っていた場所には、三人の水着美女がお色気ポーズをとっていた。

 サスケは予想通りの展開に頭痛がした。体術はもちろん、暗器の扱いもナルトは卓越しているはずだ。それなのに教えている相手が口を揃えてバカっぽいと言う。そこから考えられることは、ナルトがあのバカっぽい術を伝授しているからに違いないとサスケは確信していた。それがやはり真実とわかると、やるせない気持ちが芽生える。木ノ葉丸はゆくゆくは里の大きな戦力のうちの一人となる人材であり、将来はボルトとサラダの師となる可能性もある。

「あれ?!なんでサスケの兄ちゃんに効いてないんだコレ?!」

「ぼくらはまだボン、キュッ、ボンが足りてないんだね……」

「サスケさん、やっぱりリーダーと違って強いんだぁ!」

 ナルトは唖然としているヒナタの後ろに隠れてガタガタと震えていた。

「ナルト。説明しろ」

 サスケはナルトの方を振り返ることなく背を向けてそう言った。

「お色気の術は次代に伝えるべき術だってばよ!」

「それは螺旋丸のことだろうがァ!!」

「へぶしっ!!」

 サスケの姿が消えたかと思えばナルトの腹に蹴りがクリーンヒットしていた。

「「「!!」」」

 水着美女が目を見開いている。蹴り飛ばされたはずのナルトはポンと丸太に変わった。

「だってラスボスにも効いたろ?!」

 いつの間にかナルトはサスケの背後に立っていた。前に立つもんならまた攻撃を受けかねない。

「……あの術は猫だましに過ぎない」

 サスケは静かに木ノ葉丸たちの方に視線を戻した。

「お前ら、修行というからにはこのオレが本当の修行を教えてやる。覚悟しろ」

 こうして修行の鬼・サスケのスパルタ修行が始まった。サスケは手裏剣の扱いやチャクラコントロールについて指導し始めた。嬉しいようで悔しいようなそんな気分で、ナルトはヒナタの横に腰を下ろした。

「ヒナタ、どうだってばよ?少しは気が晴れたか」

「うん。ふふっ、それよりもおかしくって。ナルトくんの術もそうだけど、普段は静かなサスケくんがあんなに怒るなんて。初めて見たかもしれない」

「あいつ、修行に関しては厳しいとこあっからよ。それに教えるのはオレより上手い」

「わたしね、ナルトくんやサスケくんを前にして、自分の力に自信がなくなっていたの。けれど、今日ここに来て、木ノ葉丸くんたちを見ていたらアカデミー生の頃の自分を思い出した。あの頃に比べたら……って思えたの。これまですごく頑張ってきて、わたしは前よりも強くなってるって、少し自信が持てた。……ありがとう、ナルトくん」

 ヒナタはナルトの顔を見ると、フワリと微笑んだ。昔の頃のヒナタはショートカットであったが、今のヒナタはちょうどナルトとヒナタとの間に子供ができた頃の髪型に似ている。それを見るとナルトも穏やかな気持ちになった。

「そういえばさ、ヒナタ、よくしゃべるようになったな。アカデミーの初めのほうはどっちかというと無口だったよな」

「それもナルトくんと、サスケくんのお陰だよ」

「オレたちの?」

「そう。アカデミーの頃、初めてできた友達がナルトくんとサスケくんだったの。父様からもハナビからも、他のくノ一に友達と言える子がいないのは変だって言われるけれど……」

「そっか。……伝えたい事は言葉にしねぇと伝わらねぇこともあるんだ。ヒナタの言葉数が増えたのはよかったかもな」

 かつて下忍だった頃のヒナタとのやりとりを思い返すと、ヒナタとまともに話したことはほとんどなかった。それが今では自然に言葉を交わすことができているのが不思議でならない。

 初夏の風にサスケの濡羽色の髪がなびいて、目が合う。言葉にしないと伝わらない事は多いが、言葉がなくても伝わることもある。ナルトはすっくと立ち上がるとサスケの元に走っていった。

「ほんと、ナルトくんとサスケくん、仲がいいなぁ……」

 雲一つない空。鳥の鳴く声がやけによく聞こえた。サスケとナルトは空を見上げる。

「招集か。そろそろだな。中忍試験」

 二人はその鳥が火影からの招集の合図であると知っている。

「最終試験の本選ではお前と戦いたい」

「臨むところだってばよ」

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