もし二人であの頃に戻れたなら(完?)   作:冬乃菊

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三次試験・予選

 二次試験が終わり、三次試験予選が始まった。

試験官の指示に従い辿り着いたのは三次試験の会場だった。二階の観覧席には各々の班の担当上忍がいる。

そして受験者の人数から、二次試験を通過した班は合計七班のみと分かった。受験者たちは久々に見る担当上忍に手を振ったりしていた。

 会場内の正面の壁には大きな電子モニターがあり、中央には木ノ葉隠れの忍の制服を纏った青年が立っていた。

「……ゴホッ、三次試験は、私、月光ハヤテが審判を務めます。三次試験ではランダムで選ばれた二名に一対一の試合を行ってもらいます。どちらかが戦闘不能となれば試合終了。勝者が本選への出場権利を得ることができます。それから対戦者の抽選の前に一つだけ……。この予選の公平さを保つため、二次試験を最初に通過した木ノ葉隠れの里・第零班に本選出場のシード権を与えます」

 ナルトとサスケとヒナタは驚き顔を見合わせた。驚いたのは彼らだけでなく、他の受験者やその担当上忍もだ。畏怖や好奇の入り交じった視線が三人を突き刺した。すると、受験者の一人が手を挙げ抗議した。

「ちょっと待てよ!!その方が不公平じゃねーか!!」

 周囲からは確かに正論だという声も挙がっている。試験官の発言に注目が集まる。

「……ゴホッ、第零班は二次試験開始後、わずか四十分で棟へと辿り着きました。それも無傷で。ゴホゴホッ。……彼らと初戦で戦いたいですか?」

 二次試験の通過者は一日目に第零班と我愛羅の班が通過しただけで、それ以降は試験開始から三日目以降にしか通過した班はいなかった。ここにいる受験者にはそれがどれ程のことなのか、すぐに理解できた。

 第零班があり得ない早さで通過していることを知っていたテマリやカンクロウは、予選で彼らと当たらないと知り密かに胸を撫で下ろしていた。

「異議はないようですね。……それでは早速、一試合目の抽選を行います。上のモニターに名前が出た者はここに残り、その他の受験者は二階へと移動をお願いします」

 一試合目はサクラといの。試合開始前の舌戦が既に始まっている。三人は階段をかけ上がってカカシの元へ向かった。

「カカシ先生!!なーんでオレら勝手に本選出場することなってンの?!」

「お疲れさん。って、疲れてなさそうだけど。……二次試験ではやってくれたみたいだな。俺もびっくりだよ。予選が試合観戦だけで終わるなんて」

 カカシは疲れた顔をしていた。隣には顔の濃いオジさんがいる。

「お前たちが死の森を四十分で抜けてきたのか!ウンウン、青春だな!!」

「ボクよりも年下なのにそのパワー!君たちは尊敬するに値します!どんな修行をしているんですか?!」

「カカシ、どんな修行をしてるんだ?!」

 第零班は濃い顔の二人に迫られていた。二人の後ろでネジとテンテンが呆れた様子で見ていた。止めるのも面倒だといった表情だ。

「え、えーと……修行?ヒナタとなら基本的な体力をつける修行とか、チャクラコントロールを高める修行とか、性質変化の修行とか……まあ、こんな感じ」

 抽象的で具体的な内容がない。

「お前……そんな趣味があったのか?!」

 ヒナタとなら、というカカシの台詞がガイとしては気になったらしい。

「え、何言って……あ、そーゆーのじゃないから。ヒナタが可愛そうだからやめたげて」

 カカシはガイのヘルメット頭をチョップした。

「クスッ、先生方って仲が良いんですね」

 ヒナタの声でその場が和む。日向一族は皆ネジのようなものだとなぜか思い込んでいたテンテンとリーは頭を殴られたような感覚がした。ネジは相変わらず眉間にシワを寄せ、ヒナタを視界から除外していた。本来ならここで宗家であるヒナタには少しでも挨拶をするのが筋だ。

「ははは!カカシはオレの永遠のライバルだ!」

 ガイはカカシの肩に腕を回して親指を立ててキラリとポーズをとって見せた。一方、カカシはいそいそとイチャイチャパラダイスを取り出している。

(うっ……これ、絵的にキツイわ)

 テンテンは心の中でそう思っていたが、いくらダサくても上司は上司ということで口には出さずに無言で項垂れた。

 

 予選が終わり、本選開始までの準備期間として一ヶ月が与えられた。ヒナタはナルトとサスケと別れると、自宅へと向かって駆け出した。三次試験の本選に出場できることを早く伝えたい。

「父様!」

 ヒアシの部屋の前までバタバタと走ってきた。

「ヒナタか、入りなさい」

 落ち着いた声が返ってきたため、ヒナタは一呼吸置いて返事をした。

「……はい!」

 ヒアシは入ってきたヒナタを見て驚いた。一週間にわたる中忍選抜試験から戻ったばかりなのだからさぞかし汚れているだろうと践んでいた。だが、その予想を裏切りヒナタは怪我一つなく、身につけている服にも汚れは殆ど見られない。

「見たところ、大事ないようだな」

「はい。父様、一ヶ月後、中忍選抜試験の本選へ進むこととなりました」

「そうか。……おめでとう」

「ネジ兄さんもです」

「うむ……。して、試験はどうであった」

「実は、……二次試験を一番に通過したので三次試験の予選は免除されました。でも、これはナルトくんやサスケくんのお陰です」

 ヒナタはサスケやナルトと比べると明らかに力が劣っていることを自覚している。二次試験でもヒナタは自分なりに動いたが、やはり二人と比較すると情けなく感じてしまう。二次試験を通過し、三次試験の本選出場まで決めたにも関わらず、ヒナタの表情は冴えなかった。その理由がそこにあることはヒナタの父であるヒアシであれば手に取るように分かる。

「その"お陰様"、という言葉は大切にしなさい」

「……?」

「分からぬか。お陰様で、お互い様、という言葉は他者を認める言葉だ。宗家の嫡子としてヒナタ、お前に必要な言葉だと私は考える。その心、忘れるでないぞ」

 ヒアシ自身、それはつい最近まで忘れていた感覚だった。というのも日向宗家当主という重責と立場は、そういう身近な大切なものを忘れさせる。そして、そういう感覚を思い出すことができたのは、ヒナタのアカデミーでの話を聞いたりナルトやサスケと一緒にいる姿を見ていたからだった。どんなに高い地位に居たとしても、人は一人では生きれない。そして一族においても。日向という一族はその一族の中で終始するものでもない。子供にとって一族の括りなどあってないようなもの。大人の建前など容易く飛び越えていった。

「父様……」

「ヒナタ、お前は誰よりも心根が優しく強い子だ」

 劣等感という気持ちが如何に厄介なものか知っているが、ヒナタはそれを物ともせずに直向きに努力している。

「父様や零班の皆のお陰です」

 ヒアシは厳格な父親で、叱咤激励することはあっても、褒めることはあまない。ヒナタは思いがけない言葉に目を丸くしたが、すぐにはにかみ微笑んだ。

「本選となると……今までのようにはいかないだろう。励みなさい」

「はい!」

 

 その頃、サスケも家に帰ると家族に本選出場が決まったことを報告していた。

「くれぐれも目立つマネはしないでくれ」

 浮き足立っている両親とイタチを見ていると妙な不安に駈られる。

「サスケ、これは良いでしょ?母さん、可愛いと思うんだけど……」

 ミコトの手には見覚えのあるブツがあった。

「……それ、何?」

「これ?ふふっ、大蛇丸さんと一緒に作ったのよ。一緒にサスケを応援しましょうの会で。会員は大蛇丸さんと、イタチと私よ」

 イタチの方を見ると、彼もサッときらびやかな団扇を取り出した。

「……。」

 初めは大蛇丸のことを警戒していたミコトも、今や大蛇丸とは放っておいたら井戸端会議を始めるような仲となっていた。イタチに至っては、サスケのことが愛しくて堪らないという共通点で意気投合してしまっている。サスケの精神年齢は高くとも、身体は思春期の少年だ。精神年齢はある程度外見に伴ってくるため、いくら家族という存在を大切に思うサスケでも構われ過ぎるのは苦痛でしかない。

 その頃ナルトは、一人で自分のアパートにいた。一人の空間にはもう慣れており、帰ってすぐに放置していた観葉植物に水を注し始めた。

ーーコンコン

 振り返ると、窓の外には針金のような白髪頭のあの男がいた。

「エロ仙人!」

 ナルトはじょうろを置いて、窓の鍵を開けた。

「ナルト、本選出場おめでとう!!」

「あ、ありがとうってばよ。……ってか来るなら玄関から来ればいいのに」

「いや、もし他に誰かいれば声をかけずに帰るつもりでのぉ……」

「のぞきかよ!」

「ガキの私生活をのぞく趣味は断じてない」

 自来也は腐った牛乳を飲んだような表情をした。

「……。で、火影がこんな所に来てもいいのか?」

「可愛くないガキだのぉ……。直接祝いの言葉をかけたくてだな……」

「そんなん中忍になったらでいいってばよ。でも、ありがとうってばよ」

「一応、短くてもワシはおまえの師でもあるからのぉ。……なんだ、嫌か?」

「違うってばよ!……そんな風に思ってくれてるとは思ってなかったから」

 自来也とは、アカデミーの頃の最初の夏休みに形ばかりの修行をし、里に帰ってからは数年同居していたこともある。

「ふん。……そう、お前にはもう一つ用があってな。コイツを探してほしい。どうせこの一ヶ月は暇だろう」

 自来也はある人物の写った写真をナルトに見せた。

ナルトの力を知っているとはいえ、いくらなんでも本選前の準備期間に頼むことではない。だがその写真の人物は今後の里になくてはならない存在だ。

「わかったってばよ。けど、この写真だけじゃな。……手掛かりは?」

「短冊街にいることはわかっとる」

「そっか!探してみるってばよ」

「それでこそワシの弟子!!この書簡も一緒に渡してくれのぉ。この件はイタチにも伝えとる。サスケも誘って観光がてら行ってくるといい」

 自来也はそれだけ伝えると姿を消した。ナルトは再びその写真に目を落とした。それは若い女の写真。彼女こそ自来也や大蛇丸と並び称される伝説の三忍の紅一点、綱手だ。特殊な術でいつも若い女性の姿をしている医療忍者であり、現在主流となっているスリーマンセルに医療忍者を組み込むスタイルを考案したくノ一だ。そして彼女は初代火影の孫娘でもある。

 ナルトは早速サスケに事情を話すと、その翌日にお目付け役のイタチと共に里を発った。

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