もし二人であの頃に戻れたなら(完?)   作:冬乃菊

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謀略

 翌朝、ナルトとサスケの一日は採血から始まった。スケジュールを見ると、検査の一時間前には病室にいるようにと書いてあり、二人に自由な時間はほぼないと考えてもいい。病院の白い壁と天井ばかりを眺めていると気がおかしくなりそうだ。本来休息の為の場所であり、多くの刺激をシャットアウトしているため、健常人の二人には少々刺激が足りない。ナースからオセロのセットを借りて二人でやってみたが、三回ほど勝負を終えるとすぐに飽きた。というのも全てサスケが勝ってしまうからだ。ナルトは賭け事なら負けないのにとベッドに転がって駄々を捏ねている。

 二人は順番に呼び出され同じ検査を受けていく。様々な機械に入れられ、画像が取れるとわけも分からず説明されるのを聞いた。

 二日目は頭や身体中にコードのついたパッチを付けられ、チャクラを練ったり写輪眼を出したり、その他に言われた通りに動いた。明らかにデータを取っている。他にも身体能力テストなども行われた。結構ハードなスケジュールだ。

「疲れたってばよ……」

「ああ……」

 全て簡単な動作ではあるが、やらされている感じが疲労に繋がっていた。病院の寝衣に加えて、こんな病室にいると気が滅入りそうだ。ナルトは、今後もこんな状況は続くのかと、初日にシズネからもらった検査のスケジュールの記載された用紙を見た。

「……ん?」

そこに書かれているのはがん検診だとか胃カメラ、大腸カメラであったりバリウム検査であったり骨密度検査であったりと、二人の年齢に対する検査内容とは思えないものがずらりと並んでいた。というのも、生前(?)ナルト自身、ある一定年齢で定期的に行っていた検査ばかりであるためにわかったことだ。

 ナルトの様子がおかしいことに気が付いたサスケは用紙を覗き込み血相を変える。

「すぐにここを出る」

「ああ」

 二人が行き着いた考えは同じ。ナルトとサスケは着替えると、腕に付けられた入院患者用のリストバンドを取って窓から飛び降りた。病室は三階。この高さなら雑作もない。

――バンッ!

ナルトもサスケも肩で息をしている。火影室には自来也を初めとする三忍が集っていた。

「ほら。三日と持たないでしょう」

「他に手がなかったんだ、しょうがないだろうが」

 火影室の入口に立つ二人を見て、大蛇丸と綱手が口々にそう言った。その言われ様から、自分たちの行動が予測されていたことがわかる。

「どういうことだってばよ!」

 ナルトがそう叫ぶと、火影室のドアが再び勢いよく開かれた。

「火影様、うちは居住区の封鎖、完了しました!」

「……今、何と言った?」

「ひっ……!」

 サスケの右目の万華鏡写輪眼と左目の輪廻写輪眼がその男を射抜いた。失神しそうな程の殺気。

「サスケ!!落ち着け!!全てが無駄になる……!!」

 綱手がサスケのそれよりも勝る殺気を放った。サスケは我に返り、息を飲んだ。

「……いいか。サスケ。落ち着け。この書を。読んだら焼き払え。一切、声に出すな」

 サスケは自来也から投げ渡された手のひらに収まる程の大きさの巻物を受け取る。写輪眼でしか読めないように細工されており、その筆跡は確かに父、フガクの物であった。内容は、うちは一族の高齢者を除く全ての者全員が地方に散り、火影直轄の暗部として任務に就くというものであった。その期間は不明。そしてその文末には、フガクは自分たちの事は一時忘れるようにとの内容が綴ってあった。今目にしているものは現実だろうかと疑ってしまう。

 サスケは自分を落ち着かせるように深く息を吐くと、その巻物を見つめた。黒い炎が巻物を跡形もなく消し去る。ナルトは固唾をのんでその横顔を見守る。自来也の言い様から察するに、サスケにその書の内容を尋ねてはいけない。尋ねてもサスケは応えないだろう。

「サスケ……」

 何故か、その肩に触れることを躊躇った。サスケは、ゆっくりと顔を上げてナルトの方を見た。

「……また一人になるのは同じだな」

「お前、その目……左目、黒い点が増えてるってばよ……」

 サスケはクナイを鏡のようにし、左目を確認した。ナルトの言う通り、黒い巴模様が増えていた。写輪眼の発現条件は自来也たちも心得ている。このタイミングから考えると、輪廻眼の模様の変化の条件も同じのようだ。今、サスケの心はひどく不安定な状況だ。ナルトは茫然と立ち尽くすサスケの手を握った。

 

 ナルトとサスケが世間から隔絶されていた期間はたったの二日間。外を歩くと、人々の囁く声は嫌でも耳に入ってきた。その内容は驚くもので、うちは一族の中に軟禁されていた白と再不斬が一晩で一族を惨殺したというものだった。俄かに信じられない話だ。それはおそらく偽り。ナルトには確信があった。あの試合の後に、白が残した不自然な言葉。サスケに渡された巻物といい、綱手の言葉といい、今回の事件には裏がある。要するに何かの策だろう。そしてそれには木ノ葉隠れの三忍もしくは上部が一枚噛んでいる。二人が一族を皆殺しにしたと聞いても、サスケは取り乱さなかった。沈んだ表情は変わらないが、何かを考えているようだった。火影室を出てから、ずっとナルトはサスケの一歩後ろを歩いている。闇堕ち歴のあるサスケからは目を離さないつもりだ。

 

 サスケの足は自然とうちは一族の居住区の入口へと向かっていた。その門には立ち入り禁止を意味する黄色いテープが張ってある。サスケはじっとその奥を見ていた。

 事件が起きたのは、あの試合の次の日の夜だったという。あの試合の後、彼らと言葉を交わした時も、こうなる事はもう彼らは知っていたのだろう。この計画は数日で立てられたものではない。おそらく長期に渡って綿密に練られたものだ。そしてあの場に居たのは三忍。木ノ葉隠れの里の忍としてまだ正式に復帰していない綱手までもが同席していた。そこで考えられるのは、綱手が木ノ葉隠れの里に来る際に言っていた自来也に伝えておきたい情報、それが気になる。だが、それを直接尋ねるのはまずいようだ。

 フガクの残した書を見たとき、また、同じ思いをするのだと一時は思った。だが、あの時とは状況は似ているようで違う。少なくとも事件には裏があると知っているし、かつてのイタチのように何も残さず消えたわけではない。フガクはサスケ宛に伝言を残した。それに今ならばわかる。一時は里のトップの隣に立ち、他の忍の上に立ち判断を下す立場でもあった。時には非情な決断を下さなくてはならない時もある。一個人であると同時に、里の忍でもある。そうして冷静に考えられるのは、かつて一族を一晩で失った経験があったからだろう。例えば、そういう経験を知らずに、今と同じ事が起こっていたならば……そう考えると身震いがする。

「……ナルト、オレは問題ない」

「ああ、何かの作戦だよな!」

「お前のそういうところがだな…。そう思っても口にするな」

ナルトにも伝えるな、というのはこういう考えの足りないところを危惧してのことだろう。

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