その日、里は朝から慌ただしかった。警報のサイレンが空に鳴り響き、サクラは飛び起きた。場所はうちは一族の居住区。放送の内容は、凶悪犯が里にいる可能性があるため、各自自宅待機し警戒するようにという内容だった。だが、ブローもせずに、ただ着替えたままの格好で家を飛び出していた。そしてその場所へと向かった。
居住区の門の前には、里の上層部の顔が揃っていた。サクラの気配に気づいた里の忍にすぐに拘束された。
「離してやれ。その子の腕は折れてるんだ」
見かねた綱手がその忍に声をかけると、サクラはすぐに解放された。
「綱手様……イタチ先生、は……」
綱手は目を伏し、ゆっくりと首を横に振った。サクラの目が見開かれ、その足は身体を支えきれずにぐしゃりと地面に崩れ落ちた。
嘘だ。あんなに強いと言われていた先生が簡単に死んでしまうわけがない。
「サクラ……」
「ゆるさない……!!」
「っ!!」
「一体誰がこんな事を?!」
「それは、直に、分かる……」
今の彼女の耳に入れるわけにはいかないと、直感的に、綱手はそう思った。だがいずれ、彼女の耳にも入ることだろう。
サクラは里の忍によって家に戻された。二日後、里をあげた追悼式が行われた。慰霊碑にはうちは一族の名前がずらりと刻まれている。追悼式が終ると、うちは居住区の広場に置かれるのだという。里に暮らす人々は黒い礼服を纏い、里の広場へと集まっていた。喪主は本来ならばサスケが行うが、今回は代理で火影が執り行った。慰霊碑の右端の方に親族席が設けられており、サスケは勿論のこと何故かナルトまでそこに座っていた。
ヒナタはヒアシと共に、二人の前までやってきた。
「……サスケくん、何て言ったら良いか……。もし、力になれることがあったら何でも言って」
「心中は察する。……無理はしないように。たまにはナルトくんも一緒に食事でも食べに来なさい」
ヒナタとヒアシは会釈し再び里の人たちの中に消えた。
式が終わり、花を供えるために列ができている。サスケはその列の中にサクラの横顔を見つけた。憔悴しきって泣き腫らしたのであろう目元が痛々しい。ナルトもサスケの視線の先を追って彼女を見つけた。以前は共に戦ったもう一人の戦友。そしてサスケの妻だった人。今の彼女の想い人はイタチ。
「声、かけてこいよ」
「ああ。……ナルト、お前も」
ここで待っている気だったが、サスケが服を引っ張った。サスケは花を供え終わったのを見計らって、サクラに声をかけた。
「サクラ」
「……サスケ君、それにナルトまで」
「大丈夫か?」
「サスケ君こそ……。っ……わたし……イタチ先生、言ってくれたの。中忍試験が終わったら長期任務に着くから、数年は会えないって……そして、任務が終わったら、ちゃんと付き合おうって……それが、こんなことに、なるなんて……」
サクラの気持ちは痛いくらいによく分かる。サクラはイタチも死んだのだと思い込んでいるようだが、本当は違う。どこかで生きているのだ。だが、それを彼女に伝えるのはまずい。事前にイタチの口から直接、本当の事を伝えられていたようだが、今やそれを信じろという方が難しい。いや、何があるかわからない世の中だ。命を落としてしまう可能性もなくはない。
イタチは確かにサクラの事を想っているようだった。イタチが不在の間、サスケは何としても彼女を守らなくてはならない。
「ナルト、今日からお前の家に世話になる」
「え?!」
「……駄目か?」
「いや、むしろ良いのか?」
「何だその顔は」
「な、何でもないってばよ!」
うちは一族の居住区には手入れのためにたまに行こうと思うが、広い家に一人で住む気にはなれない。他人からみても、仮にも虐殺の現場に住まうのはどうかと思うはずだ。
「おー、いたいた。もう帰るのか。……サスケ、無理はするなよ」
「カカシか。……オレは問題ない」
「思っていたよりも、顔色は良いな。……ま、ナルトがいるなら大丈夫、か。一応上司だから何かあれば相談しろな。それと、中忍試験の結果はヒナタも含め三人とも合格だ。辞令公布はまた知らせがあるはずだ。これからはバラバラに任務につく可能性も出てくるぞ。……こんな日に仕事の話でごめんな」