もし二人であの頃に戻れたなら(完?)   作:冬乃菊

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うずまき一族の少女

 フガクとミコトはうちはの総司令本部として、寄せられる情報をまとめ口寄せ蝦蟇を通じて五代目火影・自来也へと伝達していた。この作戦の実行に伴い、フガクとミコトはなぜか妙木山の蛾蟇との口寄せ契約を行っていた。

 里を離れ数ヵ月がたったある日、西の方角にあるアジトから雨隠れと草隠れとの間に何が原因かは不明だが紛争が勃発しているとの情報が入った。

「これは……この目で確かめておく必要があるな。ミコト、お前は残れ」

 雨隠れの里は、暁の根城があるのではないかと囁かれている場所だ。大国に囲まれたその場所は、紛争の絶えない地域でもある。それでもここ数年は大きな衝突はなかったはずだ。

「何かがあったときに切り抜けるためのツーマンセルよ。私も行くわ」

 ミコトは芯の強い女だ。言ったことは曲げない。折れるのはいつもフガクだった。

「……わかった」

「水月ちゃんには一言言っておくわね」

 二人はすぐにアジトを発った。口寄せの鷹を先行させ、先の様子を探る。その先には確かに戦いが繰り広げられていた。鼻に掠めるのは火薬と鉄の臭い。今回はあくまで情報収集。不必要に近づく必要はない。二人は戦闘の中心となっている場所から一定距離離れたところで数日野営した。数日もいるとその戦闘の規模とレベルも分かってくる。これは互いに戦力増強と領土拡大を目的とした戦だった。

「同じ隠れ里でもこうも違うとはな……」

 文献や情報では知っていたが、実際に見るのとは全く違う。木ノ葉隠れの里は火の国という大国の隠れ里だが、雨隠れも草隠れも小国だ。その忍たちがどのような暮らしをしているのかは容易に想像できた。

「暁の情報は得られなかったな。ミコト、帰るぞ」

「ええ……」

 ミコトの表情は暗い。彼女もまた、現状にショックを受けていた。二人は再び北のアジトへと向かった。

すると、視界の端に赤色のものを捉えたような気がした。振り替えるとその地面には赤い髪の少女が倒れていた。

「……どうした」

「ここで待ってて」

 周囲に人の気配は感じない。ミコトは地面に倒れている少女の首もとに指をあてた。拍動している。ミコトは少女の体を上向きにすると、閉じられたまぶたを開け、瞳を確認する。微かに息もある。この子は生きている。

「目をあけてちょうだい!」

 その赤い髪の少女は、かつての友人の姿を彷彿とさせた。この子もあのこの子のように、明るく笑うだろうか。ミコトが彼女の頬を強くつねると、ようやく反応があった。ゆっくりと少女の瞼がひらく。

「あなた、大丈夫?水でも飲む?」

 ミコトが水筒を差し出すと、少女は奪い取るようにして一気にその水を飲み干した。

「……ありがとう」

 少女の額には草隠れのマークの入った額宛があった。

「あなた、草隠れの忍なのね」

 少女はようやくミコトが他里の忍である可能性に気づいた。その出で立ちからは特定の里を割り出すのは難しいし、額宛もしていない。だが、彼女のチャクラは確かに大きい。そしてすぐ側にさらに大きなチャクラを持った者がいることに気づく。それが彼女の能力の一つだ。チャクラを感知し、対象者の強さをある程度予測することができる。ミコトは少女が警戒していることに気づき、できるだけ優しく微笑んでみせた。

「草隠れの陣営はあちらの方角のはずよ。帰れる?」

 帰りたくない。少女の瞳から静かに大粒の涙が溢れ始めた。

「……いやだ、ウチは!あいつらから逃げてきたんだ!」

「……そう……。もしかして……あなたのその傷痕と、関係するのかしら?」

「っ!!」

 図星のようだ。少女の顔をのぞく全ての皮膚に、おそらく無数の歯形があるのだろう。露出の少ない服装であっても、容易に想像できる。彼女の首、手首、足首と見える皮膚には全て歯形が見えた。新しいものから古いものまで。その傷は明らかに不自然で、初めて見たときから気になっていた。少女は恐る恐る、小さな声で訊ねた。

「……あなたは、どこの忍ですか?」

「わたしは……どこの忍でもないわ」

 おそらく、既に書類上は木ノ葉の忍ではない。嘘は言っていないはずだ。

「?!」

「わたしの友達の女の子も、あなたのように赤い髪をしていたの。うずまき一族の末裔だった。懐かしい……。もし、あなたが本気で逃げたいと思うのなら、付いて来る?」

 少女はこくりと頷いた。フガクは木の上からその一部始終を見ていた。彼女が、その少女の肩を持つのも分からなくはなかった。見る限りではその少女はまだ幼い。サスケや水月と変わらないくらいの年齢だろう。そのくらいの年齢の子どもであればまだ教育のしようがある。大人の忍が敵の忍に捕まった場合、その行き着く先はほぼ死で間違いない。だが、それが幼い忍であれば話は違う。再教育され、戦力とされる可能性がある。

「ミコト、その子を連れていく気か?すぐにここを発つ。追手が来る可能性もある」

「ええ。……あなた、走れる?」

「はい……。あの……ここから半径五キロメートルに追手と思われる忍はいません」

「……感知タイプの忍か。わかった。だが、先を急ぐ。着いてこい」

 着いてこれなければそれまでだと言わんばかりに、フガクはその速度を緩めることなく北のアジトへと向かう。少女は食らいつくようにし必死でその後を追った。追手はなく、三人はやがて無事にアジトへと辿り着いた。

 その道中も少女の感知能力は発揮され、他の忍に遭遇することなく最短ルートで辿り着くことができた。この少女に聞きたいことは山程ある。フガクはすぐ部屋へ案内した。

 水月が帰ってきたフガクとミコトを出迎えたが、一言言葉を交わすだけで、三人は一室へと姿を消した。

「まず、名は何という?」

 フガクはペンと紙を用意し、尋問を始めた。幼い子どもとはいえ、得体の知れない他人であることに変わりはない。

「……香燐」

「年齢は」

「十三」

「うずまき一族の者か」

「母はそうでした」

「……生まれも草隠れか」

「いいえ。母に連れられ草隠れに身を寄せました」

「お前の母は?」

「……奴隷のように扱われ、死にました」

「……そうか。うずまき一族は強大なチャクラと特殊な封印術を扱う。故に力を誇った一族だったが……戦乱の中、散々になったと聞く。お前もここに来たからにはそれなりに役に立ってもらうつもりだが、嫌ならいつでも出て行ってもらって構わない。お前について一つ分かっているのは、優れた感知能力だ。他には?」

「ウチはチャクラが見える……というか感じるから、敵の強さはだいたい分かります。それと、噛みつかれることでウチのチャクラを分けることができます」

「……敵の強さが分かるだけでも優れた能力だ。そんな忍を捨て駒のように扱うのか。草隠れは……」

「だってウチ、強くないし……」

「誰にも向き不向きはあるわ。もっと自信を持って。木ノ葉隠れの初代と四代目火影の奥様はうずまき一族出身のくの一だったのよ」

「……ミコトさんは木ノ葉隠れの忍なんですか?」

「あ……ええと、今は違うのよ。どこの隠れ里にも所属していないことになっているわ」

「ミコト……」

 フガクは頭を抱えている。長く現場から離れていたためかすぐにボロが出た。

「そうですか。でも……ウチ、知りませんでした。一族のこと……教えて下さりありがとうございます」

 一通りの尋問が終わり、部屋を出るとそこにはアジトの入り口で見かけた同じ年頃の少年がこちらを睨んでいた。香燐は思わず自分が何かしてしまったのだろうかと記憶を遡るが、思い当たる節はない。

「こ、こんにちは。ウチ、香燐。よろしくな」

「……バカリーン!!」

 水月はそう捨て台詞を吐いて、一目散に逃げていった。

「か香燐ちゃん……気にしないでね」

「あいつ、気に入らないんでシバいてきます」

「……そ、そう」

 そこにはもう香燐の姿は見当たらなかった。

「俺もこれくらいの年頃は喧嘩もしたもんだ。子どもたちの問題は子どもたちに任せるとしよう」

「そうね……。けれど、水月ちゃん、きっと寂しかったんだと思うの。後であなたもちゃんと話を聞いてあげてね」

「……なるほどな。うむ、わかった。」

 

 それから香燐はアジトで過ごすことになった。そこでは色々な雑用をして、少しでも自分の居場所が欲しくて手伝いは率先して行った。そしてアジトに大きな書庫があることを知り、暇を見つけては通った。そして専門書も読み始め、アジトにいる研究者に質問したりしてその知識を深めていった。しかし水月との関係は決して良くはならず、水月も香燐もいつもどちらからとなく突っかかり取っ組み合いが始まる。

「これはこれで一種の修行になるようだな」

「こ、これでいいのかしら?」

 水月も香燐も互いに打倒水月・香燐を目標に日々研鑽に励んでいた。特に香燐は地頭がよく、大蛇丸が残していた研究資料を驚く速さで理解してしまったようだ。

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