もし二人であの頃に戻れたなら(完?)   作:冬乃菊

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雨隠れの里の偵察任務

ギイと扉の開く音がして、顔を上げる。

「今日も朝から精が出るわね、自来也。ワタシや綱手と違って身を繕う術を持っていないんだから、そういうことには少し気を使った方がいいんじゃないかしら」

 日々送られてくるうちはからの情報。自来也はその情報と向き合うのは早朝と決めて時間を作っていた。

「それこそ余計な世話だのぉ。……ホレ。毎回すまん」

 大蛇丸がやってきたことに気づくと、すぐに懐に仕舞っていた懐紙から小さな紙切れを数枚取り出し、彼に手渡した。

 勝手知ったる大蛇丸は躊躇なくその紙切れを受けとると、袖から出てきた蛇の口に入れた。それはフガクから送られてきた情報だ。その情報は難解な暗号でできており、その解読の役目は暗号部ではなく大蛇丸が担っていた。情報の漏洩を防止するためでもある。

すると今度はバタンと大きな音を立てて扉が開いた。

「大蛇丸、お前、朝でも起きているんだな」

「……二人とも、ノックくらいしたらどうなんだ」

「アナタ、私のこと何だと思ってるの?……夜行性の生物ってわけじゃないんだから」

「マムシは夜行性じゃなかったか?」

「ケンカの売り方が少し変わったわね」

「大蛇丸……また病院の薬品を勝手に使っただろう!!」

「少しくらい良いじゃない」

「あー……火影室では私語を慎め。で、綱手、何の用だ」

「……医療忍者育成の座学が終了した。小テストの成績をまとめたから持ってきただけだよ。こういうのは直接見たいんだろう?教育部門の方には同じ物を回している」

 綱手は脇に抱えていた薄いファイルを自来也に突きつけた。

「ところで……例の件で一つ提案がある」

 大蛇丸と綱手は静かに自来也声に耳を傾けた。

 

 

 

 チチチと、鳥の鳴き声がした。それはしつこく、怪訝に思ったヒナタは廊下に出てその鳥を探した。

 庭の梅の木に小さな鳥が止まっている。その羽の色は独特な模様で、ヒナタはそれがカカシから聞いた召集命令を報せる鳥だと気がついた。

すぐに支度をすると、ヒナタは急いで玄関を出た。

「ヒナタ様?」

 落ち葉を掃いていた庭師が、ヒナタに声をかけた。

「これから任務かもしれません!行ってきます」

 召集命令が出て向かう先は火影塔。火影室までの廊下の先には、同じ時期に中忍になった同期がいた。

「シカマルくん」

「……ヒナタか。ってことはもしかして火影室か?」

「うん。召集命令がかかって」

「俺もだ。何だろな」

 ヒナタとシカマルは二人揃って火影室のドアを開けた。

 

「揃ったな」

 火影室には他に上忍のカカシの姿もあった。そして自来也の横には大蛇丸と綱手もいる。

「これから、カカシを隊長として三人で雨隠れの里へ向かってもらう。任務の内容は、この信書を雨隠れの里長、山椒魚の半蔵に渡してもらう。……ただし、この信書を渡すかどうかはお前たちの判断次第だ」

「……どういうことっすか?俺たちで判断?……その基準は?」

「うむ、この信書には、同盟里同士の関係を強め、連携を強化する旨が書かれている。だが……ここのところ、雨隠れの里に関する良い話を聞かなくてな……。そこで、お前たちには偵察も兼ねて、雨隠れの里へと向かってもらう」

「結局、判断基準がわからないんっすけど……」

「強いていうなら、お前たちが共に戦いたいか戦いたくないか、それを判断基準にして良い。主観で結構。わしはお前たちを信頼しとる」

「全く、黙って聞いていれば適当もいいところね。つまり、メインは偵察で、もし良さそうなら信書も渡して来なさいということよ。そんな手紙、ムリに渡す必要もないわ」

 多少分かりやすくはなったが、適当なことには変わりない。

「そもそも、雨隠れの里に単純に信書を渡せない理由は何ですか」

 シカマルのその問いに、自来也たちは顔を見合わせるとしばらくして大蛇丸が声を落としてその理由を話した。

「あの辺りのエリアを担当していた忍が数名、行方不明らしいのよ」

 その忍というのは根の暗部で、大蛇丸はダンゾウからその情報を得ていた。行方不明、という言葉を聞いて三人の表情が変わる。

「今回の任務……暗部を使うか迷ったが、お前たちに頼みたい。やってくれるか」

 そもそも火影命令ならば拒否権はない。にも関わらず、その可否を尋ねてくるということはそれほどに重要な任務ということだろう。

 

 

 

 雨隠れの里はその土地柄、日が射すことはほとんどなく全く雨が降らないという日はない。ヒナタたちは雨避けの外套を纏い、眼下に広がる寂れた建築物が建ち並ぶ雨隠れの里を見下ろした。

――白眼!

 ヒナタはその白眼で雨隠れの里の様子を探ろうとした。

「っきゃ!!」

 通常であれば遥か遠くまで透視できるはず。ところがヒナタは白眼を出した瞬間、すぐにその目を閉じた。

「ヒナタ!どうした」

 何か衝撃を受けたように、声を上げると同時にヒナタは木の上でよろめいた。カカシは咄嗟にその肩を抱き支える。

「カカシ先生……白眼が、何かに弾かれました。こんな事、今までなかった……」

 何故かそう上手くいかず、ヒナタの目には雨隠れの里全体を覆うピラミッド型をした黒い壁が見えていた。それは里の中央にある高い塔を中心としている。

「ヒナタの白眼では看破できないか。……カカシ先生の写輪眼でも難しいですか?」

「……ああ、どうやらそのようだ」

 カカシは額当の下にある写輪眼をのぞかせるが、すぐにまた戻していた。

「ということは、ある種の結界かもな」

 瞳力を無効化する程の結界など聞いたことがないが、目には目を、歯には歯をという言葉があるように、瞳力をも無効化するこれ程の結界には、同じ瞳力が関係している可能性がある。

「サスケがいればなんとかなったかもしれないが……。とりあえず数日ここで里周辺の動きを探るか」

 

 その頃、雨隠れの里の塔の上ではカカシたちの接近を感知していた。彼らは里に侵入こそしていないため、今のところ攻撃対象とはならないが。

「……木ノ葉の犬が嗅ぎ付けてきたか」

「思っていたよりも、早かったわね」

「いっそこれを機に、痛みを知るための戦を始めるのも良い。あの三人が里に帰らなければ、木ノ葉隠れの里も黙っていないだろう」

「そう……。けれど、私たちには別の目的もある。そちらはどうするの……」

「……まだ、時期尚早か。まずは他の尾獣から片付けるとしよう」

「ええ」

 

 里の外であれば白眼も弾かれない。三人はヒナタを中心として偵察を続けた。

 小さな里なだけに人の出入りは少なく、里に人の出入りがあったのは数日中、たった数回。何れも黒い横長の袋を抱えて里へ帰還している。

「あれの中身は……間違いなく全て人です」

チャクラの流れも血液の流れも見えないということは、つまり死体である。

「どういうことだ……?情報が少なすぎる」

「ああ。……念のため聞いておくが、この信書、お前らはどうすべきだと思う?」

「渡す必要はないかと」

「俺も同意見だ。聞いていた以上に、雨隠れってのは物騒だな……」

「……よし。先ずはこの件、得た情報だけでも報告するとするか」

 ヒナタとシカマルはカカシの声に頷いた。

この報告により、より踏み込んだ偵察が必要であれば再び適正な能力を備えた忍が選出されるだろう。

 三人は任務を中断し、里へと帰還した。

 

 カカシは報告書の提出のため、火影室を訪れた。

「そうか……厄介な情報だのぉ。雨隠れの里の隣国にある草隠れの里からの情報では、国境付近で小競り合いが頻発しているという。信書は渡さなくて正解だったな」

 自来也はカカシたちの報告を受け、雨隠れへの協力要請は取り止めた。雨隠れの里の様子は明らかにおかしい。国境付近で起こる小競り合いは数十年前の忍界大戦と同じ様相をていしていた。その戦争を経験したカカシの表情が険しくなる。

「これから……どうなさるつもりですか」

 前回、中忍選抜試験の案内を届けた際の雨隠れの里とはかなり状況が違うようだ。この短い期間に何があったかしれないが、このまま野放しにしておくわけにはいかない。

「今日中に上層部で会議を開く」

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