もし二人であの頃に戻れたなら(完?)   作:冬乃菊

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二人の距離感

 あの出来事は全て、自分の想い描いた絵空事だったのではないかと、そう思うことがある。

 サクラはおよそ二ヶ月後に予定されている試験に向けて、机にむかっていた。。

「……ダメ。集中できない」

 鉛筆とノートを放り投げ、家を飛び出した。サクラはアカデミーの筆記試験では一番をとるほどの頭脳派で、こういった試験勉強も苦にならないタイプだが、たまにはこういう日もある。

 近々の目標は、医療忍者育成プログラムの試験に合格して、更に本格的な医療忍術について学ぶこと。そして最終的な目標は、伝説の三忍の紅一点・綱手のような医療忍術にも戦闘にも秀でた一流のくノ一になることだ。

 試験に合格することで、綱手から直接医療忍術について指導を受けることができる。綱手に師事する、という話は、あの人との最後の会話でもあがった。

「イタチ先生……」

 あの事件から数ヵ月の時が流れ、その忌まわしい事件が話にのぼることはあまりない。その事が、皆が彼らのことを忘れてしまったように感じてしまう。

 

 向こうから、サスケとナルトが歩いてくるのが見えた。二人は仲睦まじく何かを話しているようで、見ているとサスケと目が合った気がした。彼は穏やかに微笑んでいた。兄弟だから、その表情も似ている。

 

 

 あの事件の後、サスケとはうちは一族の居住区の門の前で出会った。

「サスケくん……」

 その日はうちは一族の居住区に慰霊碑が置かれる日だった。門の前に、その侵入を拒むように大きな石碑が置かれていた。

 泣きはらして瞼も腫れ上がっているサクラとは対称的に、サスケはいつものように涼しい顔をしてその門と石碑を眺めている。

「サクラか」

 暫くの沈黙の後に、口火を切ったのはサクラだった。

「サスケくんは、どうしてそんな顔でいれるの?」

 それは嫌味でも何でもなくて、純粋な疑問だ。

「そうだな。……オレにはやるべきことがある。それが一族の弔いになると思っている」

 サスケはこの事件の真相を知っているが、サクラは当然そのことを知らないし話すわけにもいかない。

「やるべき、こと……?」

「それはオレの中に秘めていることだ。簡単には口にしない」

 サスケにとってやるべきこととは、ナルトとともにこれから起こるであろう戦に備えることだ。話したところで、他人には理解できないだろう。

「そういうもの……なのね」

「……あれから約二週間。おまえはまだ泣いているのか?忍の心得を淀みなく暗唱できたお前が」

「っ!!」

「これから里をあげて医療忍者の育成を始めるらしい。綱手の主導だ。医療忍術には膨大な知識と緻密なチャクラコントロールが必要だ。……兄さんもサクラには向いているんじゃないかと言っていた」

 それ以前に、サクラの持ち前の才能についてイタチに話したのはサスケだが。

「そんなことを……」

「もし興味があるなら、お前の上司から推薦してもらえばどうにかなるんじゃないか?アカデミーでの成績は良かったし中忍選抜試験では三次試験まで残っている。見込みがあるとオレは思うが」

 普段から必要最低限のことしか話さない彼が、このように話すことは珍しい。サクラは、それが彼なりの励ましのように思えた。

「サスケくん……ありがとう」

 それからすぐに、サクラは上司の紅に医療忍者の育成計画についてたずねた。サクラとイタチの関係を知っていた紅は、酷い落ち込みようのサクラにどう声をかけようかと考えていた矢先のことだった。まさかサクラの方から声をかけてくるとは、そして医療忍術に興味があるとは思いもよらず、紅はそれを快諾した。

 

「綱手様、私の率いる班に医療忍術に興味があるという者がいるのですが」

「ほう。……名は?」

「サクラです」

「その子なら知っている。例の事件の後で、その…大丈夫なのか?」

「ええ。この件、どうも……うちはサスケから薦められたようで、例の事件のショックは彼女なりに片を付けれたのかもしれません。そちらについては私がフォローしていきます」

「そうか。……お前からの推薦として、サクラもメンバーに加えよう」

「ありがとうございます」

 

 あれからずっと、彼とは顔を合わせていなかった。

「サスケくん!」

 サクラが声を上げると、サスケの隣にいたナルトも彼女の存在に気がつき、手をブンブンと振った。

「ヒナタから聞いたが、無事、講習会に参加できたらしいな」

「うん。サスケくんが教えてくれたおかげよ。感謝してる。ありがとね」

「……ってことは、サクラちゃんも今試験勉強中?ブラブラしてていーのかよ。ヒナタは家にこもってるぞ」

「うっさいわね!たまにはこういう日もあっていいでしょ。集中できなかったのよ。……それより、中忍になって何か変わった?」

「んー……今のところはあんま変わんないってばよ。この制服を着るようになったくらい?」

「そう。あ、その制服を着るってことは一人前の里の忍になったってことなの。今までみたいに人目も憚らずにイチャイチャするのは禁止よ!!」

「オレたちってそんなにイチャイチャしてっかな?さすがに外では控えてっけど」

 サクラはそれで控えていたつもりだったのかと、頭を殴られたような衝撃を受けた。

「いい?……外では十センチくらい離れて歩きなさい」

「お、おう」

 そんな二人のやりとりがなんともおかしく、サスケは第七班として共に戦った遠いあの頃を思い出し小さく笑った。

 サクラと別れると、ナルトはサスケの顔をのぞき込む。

「てっきり、サクラちゃんとは関わってねぇのかと思ってたんだけど」

「見ていられなくて声をかけただけだ。兄さんもサクラの成長を望んでいる」

「ふーん……」

「何か言いたいことがあるならはっきり言え」

「……いいのかよ?」

 言葉にせずともナルトの思考回路は手に取るようによくわかる。

「はー……。今回は結婚しない。アカデミーの頃から決めていることだ」

 目を丸くするナルトを見て、サスケは眉を寄せた。

 前もそうだったからと今回もそうするなんてことはない。全く別の人生だ。

 




【なよたけの章・あとがきと言い訳】
 この章は一番まとまってない章です。〇〇編とか正直わかりません。なんなら迷走編?
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