ナルトとサスケがよくわからん自分達の関係について少し言及して痴話喧嘩します。
ナルトの作戦
状況はゆっくりと、そして確実に変化していた。
暁による尾獣狩りが始まり、各国・隠れ里は各々独自に対応している。足並みを揃えるために各里に働きかけても、雲・岩・霧の隠れ里は重い腰を上げようとしない。当然、その周辺の小さな隠れ里もその三つの隠れ里が動かない限り、現状維持に努めるはずだ。
「……なかなか、難しいもんだのぉ」
自来也はそうぼやくと、御猪口をクイと口に傾けた。
「当然よ。暁に縁のある忍里もあるわけだし」
大蛇丸はだし巻き卵をつまみに、お手製の美容酒に舌鼓を打つ。
「考えは早々変わらないだろうね。忍は確かに闇に生きる存在だ。世の中にはその意味を履き違えている輩が大勢いるのさ。……そういえば大蛇丸、改心のきっかけは何だ?策に応用できるかもしれないぞ」
綱手は鳥ささみの串を頬張りながら、焼酎の入ったグラスを軽く回す。
「綱手……ヤツの場合は特殊だっての。やめとけやめとけ」
「お前が知っていて私が知らんのはおかしいだろう!」
「そんなにワシが好きかのぉ!げへへ」
「興が冷めるから本気でやめろ」
「あなたたち、ゆっくりお酒も飲めないの?そのくらい良いわよ。教えてあげる。サスケくんという新しい風を見つけたからに決まっているじゃない。出会った瞬間、色んな物が吹っ飛んでいったわ。あの日のこと……まだ、色鮮やかに、覚えているのよ」
大蛇丸はウットリとした表情で、この世ではない何処か遠くを見つめている。
「ヘイ!ラーメンお待ち!!」
カウンター越しに、タイミングよく出来上がったラーメンが差し出された。
ここはラーメン一楽。最近になって、居酒屋メニューの提供が始まった。主にこの三人のためで、お品書きには、鳥の唐揚げ、だし巻き卵、鳥ささみ、おむすび(おかか)とだけ書かれている。
こんな場所で、いや、こんな場所だからこそ、伝説の三忍の密会の場となっている。色々と危ない。
――ガラララッ
誰が来たかは大体その音で判る。
「おっちゃん、みそラーメン二人前ェ!」
「おおナル坊、来たか」
「エロ仙人たち、今日もいんのかってばよ!大蛇丸まで!」
サスケとラーメン〜♪と意気揚々で来たところに三忍。少しばかりイラッとするが、一楽に近づくと彼らの気配には気づいていた。
「出会い頭にはもっと言うべき言葉があるんじゃないかしら?そうね……新しい試験薬ができたから、今度ナルトくんに……」
「だってだってさ、サスケと二人っきぶふぉっ!」
「うちのバカがすまない」
大蛇丸はナルトには厳しい。というよりもサスケへの対応が例外だ。面倒なことにならないよう、サスケはナルトの鳩尾を突いた。連帯責任としてサスケも巻き込まれて色んな事を要求される可能性があった。
「あら良いのよサスケくん」
ナルトとサスケが一楽を訪れるのは、いつも木曜日の夜と決まっている。もちろん任務で里に出ている場合は除く。というのも、ラーメンばかり食べるのは不摂生だとサスケが言い出したのがきっかけだった。そのルールに気づいた自来也は、今日もわざとその時間に合わせて来ていた。ナルトとサスケもまたそのことには気づいているが、毎回この茶番を繰り広げていた。
ナルトにとっては週に一度のお楽しみが奪われたことには変わりない。しょんぼりと綱手の横の席に腰を下ろした。サスケもその横に座る。
「はいよ。サスケちゃんはラーメン半玉と握り飯だもんな!」
テウチはラーメンの麺を鍋に入れるとすぐにどこからかおむすびを取り出した。大きな一枚の海苔で綺麗に巻かれている。サスケはその皿を両手で受け取った。
「いただきます」
微妙にサスケの表情が緩んだ。
「……おむすび頬張るサスケ、可愛いってばよ」
「心の声が駄々漏れじゃないかナルト。少しは忍び堪えるクセでもつけな」
ナルトの隣に座る綱手はツッコミを入れずにはいられない。一方サスケは、今はナルトよりもおむすびの方が優先されておりそんな戯言は耳には入っていないようだ。いや、聞き慣れているのか?綱手は考えることをやめた。
「ヘイ!ラーメンお待ちぃ!」
ナルトとサスケのラーメンが出来上がった頃には、ちょうど自来也たちはラーメンを平らげてしまっていた。
「そろそろ、邪魔者は退散するとしようかのぉ」
「む゛?!……っ。エロ仙人たち、またな~!」
自来也と綱手は少しふらつきながら、ヒラヒラと手を振って去っていった。大蛇丸は名残惜しそうに最後までサスケを見ていた。
「里の重役が酒盛りかあ……。すっげー平和だってばよ」
「確かに色んな意味で危ないな。ここは」
「あー、週に一回のラーメンが体にしみるってばよ……。話は家に帰ってから、な」
「ああ。わかっている」
ここはただの二人の行きつけのラーメン店だ。誰が聴いているかもしれない場所で、容易に話す内容ではない。
ナルトが自来也たちとの鉢合わせを嫌ったもう一つの理由。彼らと一楽で会うということは、つまり、何かが起きて接触を図る必要があったということだった。
帰宅しシャワーを浴びると、ナルトはベッドに腰掛けて小さな紙きれを見ていた。
「暁の奴らが本格的に尾獣狩りを始めたんだとよ」
「そうか」
小さな紙切れはサスケの天照で消えた。
ナルトはサスケの顔を見るなりキラキラと目を輝かせ、ポンポンと自分の隣にとベッドを叩くがサスケは素知らぬフリをして近くの椅子に腰を下ろし、ナルトは口を尖らせる。
「しっかしなーんでそんな情報までハッキリわかるんだ……?」
暁が向かった土地までもが書かれていた。ナルトはちらりとサスケを見たが、彼は何も言わない。
「諜報部隊が上手く機能しているということだ。……お陰でオレが里を出る理由はなくなった」
「ああ、前に言ってたヤツな。……お前と旅、したかったな」
サスケが何かを隠していることには、ナルトも何となく気がついている。同居している以上、細かい隠し事を一々追及してもお互いに居心地が悪くなるだけだ。今回の隠し事が小さいとは少しも思っていないが。
「人柱力の奴らを助けたいと言っていただろう。何か策はあるのか?」
「あるっちゃある。ただそれには、オマエの力が必要だ」
力強い青い目。そういう表情にゾクリとする。そして改めて自覚する。自分と同等の力を持つこの男に、どうしようもなく惹かれているのだと。
「ってなわけで、早速明日にでもダンゾウのじいちゃんに会いに行くってばよ」
「そこでダンゾウか……」
サスケは突然出てきた根の総帥の名にガクリと項垂れた。
「なんだかんだであのじいちゃん、オレらの上司だし」
「別に反対はしていない。オレはお前の行く道を信じる」
「お、おう。大げさだってばよ。ありがとな」
ナルトは照れ臭そうに鼻を掻いて笑った。いつもは必要以上の干渉を拒む彼だが、不意に素直になる時がある。そんな時はまっすぐに澄んだ漆黒の瞳で射抜くように見つめてくる。
「ナルト、大体お前はどういうつもりなんだ?」
「何がだってばよ」
「よくもまぁ外で可愛いだのと……」
「んなの決まってんだろ。定期的な愛情表現。おまえに応えてんの」
「そういうのは別にいい。ヒナタがいるだろう」
「それとこれとは別だ。おまえはオレを選んだんだろ?アカデミーの頃なんかもっと露骨だった。まあ今もだけどな」
この鈍感な男は何とも思っていないだろうとふんでいたがそうではなかったらしいことに、サスケは目を見開く。
「……そうだ。ここではオレは罪人ではないし、選ぶ権利はある。だが、これまで通りでいい。多くは望まない。一方的にオレがお前を慕っているってことでいいだろうが。……かつて、お前がそう言ったように」
「あーも。おまえってばまた一人でゴチャゴチャ考えてんな。シカマルじゃねーけどメンドクセー。そういうところも含めてほっとけねーんだ。……そうだよ。最初に誑かしたのはオレだ」
「……本当に、面倒な仲だな」
「今に始まった事じゃねぇだろ」
翌日、二人はダンゾウを訪ねた。彼の家は里の外れにある古風な一軒家だ。事前に鷹を飛ばし訪ねることを伝えていたため、ダンゾウは座敷に客を招く準備をして待っていた。
「珍しいな」
ダンゾウが二人を呼び出す事はあっても、その逆は今までにない。訪問を拒むことはなくとも、ダンゾウは怪訝な表情をしている。もともとそういう人相かもしれないが。
ナルトとサスケは勧められるがまま、座蒲団の上に腰を下ろした。ダンゾウも卓の向かい側に座り二人を見ていた。用件を言えという事だろうか。この空間には、ナルトのアパートと同じ類いの特殊な術が施されている。盗聴を防ぐ空間忍術だ。サスケは口を動かさずに、ナルトにだけ分かる声で伝えた。
「単刀直入に言うってばよ」
「構わん」
「オレとサスケ、内勤を希望しますってばよ!」
「「は?」」
サスケもナルトがそう宣う理由は知らない。早速信じた事を後悔した。ナルトの説明能力は信じられない。
「まさか、お前たち二人、まさかとは思うが……二人の時間を大切にしたいだとか、新婚くノ一あるあるのような事を言い出さないだろうな」
二人が同居していることはダンゾウも知っており、時折どこからか聞こえてくる噂話も合間って、ダンゾウは限りなく偏った推測をした。
「は?」
「そもそも新婚くの一あるあるって何だってばよ?」
「ならば、分かるように説明してみろ」
「スルーされた!?」
「いいから落ち着いてゆっくり説明しろ。ナルト」
「お、おう。……暁が尾獣を集めにかかったらしーから、オレたちもそれに対応すべく、内勤を……」
「暁?お前たちにも話が行っていたか。……だが、お前たちに何ができる?」
「うーんと、オレってば尾獣の場所、分かっからさ、そこにサスケの輪廻眼の力を借りて、飛んで、そんでもって尾獣を抜かれた人柱力にオレの中にいる尾獣チャクラを入れんの。そしたら人柱力は死なずに済むってばよ」
「理解できんな。尾獣の場所が分かる?何故だ」
「あーっと……生まれつき、生まれつきだってばよ!」
「ならば、それ以前に守る方法もあるだろう?」
「確かに人柱力を守る手もあるけどさ、尾獣が集まらねえと十尾は出てこないわけであって……。親玉をやらねえと決着つかないしさ」
要領を得ないナルトの説明に、サスケは頭を抱えた。ダンゾウにそんな話をするのであれば、事前に相談くらいして欲しいものだ。
「成る程な……」
「?!」
何が成る程なのかと、サスケはダンゾウの発した言葉に耳を疑った。
「そういうワケだから、お願いしますってばよ!このとーりっ!」
ナルトは座蒲団の上から飛び退いて土下座をする。ナルトがそういうスタンスならば、それに倣うしかないだろうと、サスケも頭を垂れた。
「……わかったわかった。頭を上げろ。十尾のことを何処で知ったかは知らんが、筋は通っている。だが……ナルト、お前、九尾の他にも尾獣のチャクラを?それはにわかに信じ難い話だ」
サスケは目を見開いた。ダンゾウはこの時点で既に尾獣と十尾の関係を、即ち、暁の目的に辿り着いていた。もし、彼が他の誰かを信用しそれを打ち明けることができていたならば、別の結末も有り得たのかもしれない。そして今、その別の結末への道を確かに歩み始めている。ダンゾウを変えたのは、おそらくナルトの誠実さだ。いや、誠実さというよりも、それはナルトなりのバカ正直さだ。サスケはナルトの横顔を見てわずかに微笑む。
「よーっし!わかったってばよ!影分身の術っ!」
ナルトの背後に九体の影分身が出現した。その影分身はすぐに手のひらを上に向けてチャクラを練り始めた。螺旋丸だ。それぞれの色が違っている。それぞれの分身が違うチャクラを練っている事は明白。ダンゾウの目がわずかに見開かれた。
「どういうことだ……」
「えーっと……天からの授かり物だってばよ」
ナルトとサスケにとっては、今が二度目の人生であることをダンゾウに話すことも考えたが、そんな事を言ってみても、どうかしていると思われるだけだろう。だからナルトは、生まれつき何故か尾獣のチャクラを持っていた説を推した。
一方サスケは、ナルトの「天からの授かり物」発言を受けて、どうフォローしようか考えあぐねていたが、その答えを出すよりも先にダンゾウが口を開いた。
「……事実は小説よりも奇なりというのはこの事だな。目の前のものを信じる他あるまい。お前たちの言い分は分かった。もし人柱力を救うことがあれば、交渉の時に有利になることもあるだろう。……ただし、もし失敗に終われば通常の任務に就いてもらう。いいな」
「わかった」
「……ああ」
ダンゾウの理解力の高さと、物分かりの良さには脱帽すると、サスケはナルトの横で返事をしながらそんな事を思っていた。
ナルトとサスケがダンゾウの承諾を得た翌日、ヒナタは人里を荒らすクマパンダ捕獲の任務を終え、任務終了の報告をしに火影塔を訪れていた。
「指揮するのって、本当に難しいですね。あの時、もう少し具体的な指示を出していれば、とか色々考えてしまいます」
「ダイジョーブ。ヒナタは考えすぎ。指示が具体的過ぎるのも良くない。下忍が自分で考えて動ける程度の余地は少しあった方がいいね。ま、それも人それぞれだよ。そのうち慣れるさ」
これまでは医療忍者としての実践経験を積むことを優先し、中忍となっても隊長として任務に就くことはなかったため、今回の任務がヒナタの隊長デビューとなりカカシがそのサポート兼指南役として同行していた。
報告書の提出のため、二人はそんな事を話しながら任務受付所のドアを開ける。
「お疲れさまってばよー」
聞き慣れた声に、二人は話すのをやめて受付所に座っている人物を見た。そこには暗部として任務に就いているはずのナルトとサスケが座っている。
「おい。早くしろ」
「え?ナニ?……ドッキリ?」
カカシは固まって動かないヒナタの手から報告書を取ると、おそるおそるサスケに渡した。
「話は後だ。読み上げるぞ……クマパンダ捕獲、Dランク任務」
「よっ!」
「隊長、日向ヒナタ。実施時間は約三時間」
「はいっ!」
「問題なく終了。クマパンダは火の国の動物園へと移送中」
「ソイヤッ!記入漏れナシ、記録集計完了だってばよ!」
サスケが報告書を読み上げ、ナルトがダブルチェックしつつ統計を取る作業をしている。
「……ダンゾウ様の怒りにでも触れちゃった?」
「間違っても左遷ではない」
「イルカ先生というかアカデミーの先生たちがテストの採点とかで忙しいからさ、オレたち助っ人に来てんの」
「そ、そう……すっごい忍の無駄遣いのような気がするけど、ダンゾウ様の深い考えがおありなんだろうな……。ってヒナタ、大丈夫?ホント」
ヒナタはこの部屋に入ってきた時からずっと硬直している。カカシがつついてようやくハッとして言葉をこぼす。
「サスケくん、ナルトくんと一緒に受付け係だなんて……。そっか。やっぱりセットで、一心同体、一蓮托生の仲なんだよね。正直、羨ましい」
なんだかすごい落ち込み様のヒナタを前にナルトは焦って椅子から立ち上がる。
「え、えーと、ヒナタ?!」
埒が開かない様子にサスケはため息をついてヒナタを見据えた。
「……ヒナタ。オレからみても、ナルトとお前はセットだ」
「え?」
「カカシ風に言うなら、オレとおまえはナルト教ナルト信者の同志ってことだ。それが零班だろう」
「同志……。なんだか色々すっきりした気がする。ありがとう、サスケくん」
ヒナタはふわりと微笑んだ。
ナルトとカカシには何故いい感じに纏まっている風なのかまったく理解できなかった。
任務受付所の扉が閉まり、ナルトはチラリとサスケの横顔をみる。
「さっきの、どういう意味だ」
「……ヒナタがお前のことを諦めたら困るだろう」
「は?!」
「普通ならそうするだろう。見込みがないなら引くに決まっている」
「いーのかよ。お前は、それで」
ギンとサスケの写輪眼がナルトを捉える。
「チッ……なんならお前は選べるのか?どちらかを取れと言われてもどうせ一生決めきれないのがオチだろう。それに、オレを選んだところで里からは身を固めろとか子を成せとか色々言われるのは目に見えている」
「んなわけねーだろ。いくら里でもそこまで……」
「いや、事実だ。あの頃……うちはの血を絶やすなと、里の圧力があった」
ナルトは目を見開く。
「お前……今になってンなこと言うのかよ……」
「本当なら、ここまでお前に話すつもりはなかった。もし、あの時話していたならおまえはどうした?」
「里の上ン奴らを問いただすに決まってんだろ」
「はぁ……。そういうところだ」
ナルトはサスケのこととなるとカッと血が上って手がつけられなくなる節があった。当の本人もけして自覚がないわけではない。
そこで言い合いは終わり、こんな場所でするような話ではなかったことに気づく。
「とりあえず、この件は……保留ってことでいいか」
「ああ。オレたちには他にやるべきことがある」
それから二人はセットで、里の人手の足りていない部署に期間限定で送り込まれ続けた。ナルトとサスケは元火影とその右腕ということもあり、里の業務の全体像と各部署のは何となく把握できている。そのため、どの部署でも即戦力として重宝された。そして後に「伝説の助っ人」という異名を残すこととなる。
あーっ、無理ゲー。どうやって妻妾同衾にするんだよ。零班みんなで迷走中。
シリアスムードですが、ギャグですからね。