狙われた九尾
うちはからの情報がポツリ、ポツリと届く度に「暁」の全貌が詳らかになっていく。これは憶測でしかないが、核心に近い。
「何も火影が自ら出向くことはないでしょうに」
「オマエの懸念はわかる。直接確認したい気持ちもわかるが……」
「すまん。わしの留守を預かってくれんか」
自来也、彼の表情を見ればすぐに分かる。彼は現状に対し責任を感じているのだ。火影だからこそ、かもしれない。
大蛇丸と綱手は一瞬視線を交わすと、同時に溜息をついた。自来也が黙って里を出ないだけ良しとしよう。ひょっとするとこういう場を設けず、何も告げずに里を出て行ったかもしれないことは想像するに容易い。そして逆を言えば、こういう場を設ける必要があるほどに自来也は分が悪い自覚があるのだろう。嫌な予感がしていた。火影の執務室の窓から差し込む夕陽がやけに赤く感じた。
水に沈んでいきながら、ああこれが自分の最期だと悟る。喉が焼け付くように痛む。左腕は痛みを越えて感覚がない。そこにあるはずのものがないのはひどく変な感覚だ。「暁」の頭の正体。そしてペインの「術」の秘密。フカサクの背に書いたが、それで分かるだろうか。
「エロ仙人!!」
ナルトは、沈みゆく自来也の右腕を掴み九尾チャクラで包み込んだ。ナルトが異変に気づいたのは、我愛羅の救出が一段落ついた時だった。自来也のチャクラの位置が雨隠れの里に移動していた。気づくのに遅れたのは、相当な理由がない限り火影である自来也が木ノ葉の里を動くはずはないだろうとたかを括っていたのもある。ペインの本体である長門と話をする必要もあるが、今はそれどころではない。サスケは二人を目視で確認すると空間を開き、木ノ葉の里の集中治療室前に移動した。
重症の五代目火影・自来也と共に現れたずぶ濡れのナルトとサスケに、院内は一時騒然となったがすぐに救命処置へと移行した。
「くっそ……間に合わなかったってばよ」
できることならこうなる前に長門に接触し、対話で改心を促したかった。しかし、どう話したところで今の長門に伝わるとは思えない。
「わざと俺たちの任務中に合わせたんじゃないか?」
だとしたら何のために?自来也には尋ねたくても今は生きるか死ぬかの瀬戸際だ。自来也の死はナルトにとって絶対に回避したいことの一つだった。全ての「悪い事」を回避することは難しく、それが未来に必要な事となる場合もありすべてを起こらないようにすることは一概に「良い事」とはいえないことは理解している。そして、これまでナルトとサスケが起こしてきた行動により未来が予測しづらくなってきている上に、「予定」が早まってきている感覚があった。第四次忍界大戦が始まったのはナルトが十七歳の時であったが、既にその兆しが見え隠れしている。つまり、二、三年程度事が早く進行しているのだ。これはナルトとサスケが意図的にそうしている部分もあった。元凶のカグヤを討つ力は十分に持っているが、カグヤは討つにしてもまだこの世には存在していないため「儀式」を進める必要がある。ゼツやうちはマダラ、うちはオビトあたりを転がさなければならない。
「よっし。みんなにペインが来るってこと伝えねーと。サスケ、後方支援は任せたってばよ」
ペインによる木ノ葉襲来は変えられない運命のようだ。ペインのチャクラは既に木ノ葉に向かって移動している。自来也を討ち損じたことはすぐに分かっただろうし、自来也を助けたことでナルトとサスケの存在も知られた可能性がある。
「オレはダンゾウ、大蛇丸あたりと合流する」
前回のペイン襲来時にもほとんどナルト一人が対応したようなもので、サスケは後方支援に回ることとした。それに上層部に対する説明はナルトよりもサスケの方が向いている。
たった一人の子どもに遅れをとっている。全ての手管を読まれている。自来也の喉は潰し、あれから数日と経たない今、自来也が生きているとしても全ての情報が渡っているとは考えにくい。
「……九尾、これまでで一番厄介だ」
相手にしているのは本体ではなく影分身だ。影分身であってもチャクラ量は膨大で簡単には消えない。その影分身に六体の「ペイン」が次々に倒されていくのを感じる。
今のナルトにかかればペインの本体である長門はワンパンで倒せる。倒せるのだ。しかし、そうしないのには理由があった。外道といえば外道かもしれない。ペインに関する謎解きを頑張ってもらわなくてはならないからだ。これを機に木ノ葉隠れの諜報機関や暗号部等の裏方部署は大きく成長した。ペイン六道のそれぞれの特徴や技、攻略方法等必死になって探っていた。危機に瀕している時こそ成長する。それはナルト自身身をもって経験してきた事だ。しかし、里の者の安全を守ることが最優先でもある。
(こういうのは苦手だってばよ……)
ナルト自身の倫理観にも反するため、かなりのモヤモヤ感は否めない。それにここであっさり長門を倒してしまえば、ゼツに目をつけられてしまう。面倒なことになるのは避けたかった。できることなら最短でカグヤに辿り着きたい。
諜報部からの情報によると、長門は木ノ葉隠れの里から少し離れた樹木の中に身を隠していた。繰り返すことになるがナルトは当然ながら初めから知っていた。
「よう。長門。木ノ葉に手を出すなら相応の覚悟が出来てるんだろうな」
「……おまえ、何者だ?」
「何者って……ご存じの通り、九尾の人柱力、うずまきナルトだってばよ」
「殺さないのか?」
「うーん……今のところ、里のみんなは無事だしな。オマエの言い分も分かるし。それにもうボロボロじゃん」
長門は足が不自由のようだ。そのうえチャクラ切れ。頭髪も白く、年齢以上に老けて見える。同情の余地しかない。
「……はあ」
「ただ、もう分かったろ?力で抑えつけて平和を実現するってムリな話だってばよ。ホラ、もう詰んでるし。だから、後はオレがやってやる。あ、でもエロ仙人のことは許さねー」
ーーバゴッ!!
ナルトの一撃で長門は気絶した。それを小南の白い紙が包みこんでいく。
里の内部だけでも数えきれない程の悲劇があった。里が属するのは火の国という大国。大国ならではの富の得方というものがあり、ある一部の者にとっては戦争が富を得る手段であったりもする。雨隠れの里は言うなれば「養分」であった。犠牲になるのはいつも弱い者で、とりわけ子ども達は一番に犠牲になるものだ。ナルトはやり場のない憤りを堪えるようにギリと唇を噛んだ。
その後再不斬と白からは、暁からトップの長門と小南が消えてリーダーが不在となり暁の統率がとれなくなったと報告が届いた。
そして、その消えた小南はなぜか木ノ葉隠れの里に身を寄せていた。小南によると長門はトビとゼツにやられたらしい。輪廻眼の回収のためだろう。
「長門の願いだから」
小南は彼女の知りうる限りの情報を話した。ゼツ等の介入を防ぐため、漏れなく妙木山入りだ。蝦蟇たちにとってはいい迷惑だがナルトとサスケにとっては便利で使い勝手の良い妙木山であった。
後日加筆修正余地あり。。