もし二人であの頃に戻れたなら(完?)   作:冬乃菊

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ヒナタが火影になった日

 ナルトとの結婚式が執り行われた翌日、ヒナタは火影塔のバルコニーに立ち、広場に集まる人々を見下ろしていた。

 ヒナタは元より穏やかな性格だが、その内にある芯の強さは目を見張るものがあった。上忍となってからは部隊の隊長も務め上げ、その実力は誰もが知ることとなった。そして、あの戦い以来英雄と呼ばれるようになったナルトとサスケの推薦や、カカシと綱手のバックアップもあり、ヒナタは名実ともに木ノ葉隠れの里の七代目火影に就任した。里では初の女性火影であり、また初の日向一族出身の火影となった。

「今日は里の皆に新しい火影を紹介する」

 カカシは後ろに控えているヒナタに目配せをする。

 先代火影であるカカシから火影の笠を譲り受け、ヒナタは前へと進んだ。七代目火影と刺繍の入った白い外套の中には、日向一族を思わせる淡い色の着物が見える。

 足がすくみ、ヒナタはごくりと息を飲んだ。今この場所から見えるものは全て、これから自分が背負っていくものだと、改めて感じた。

「ヒナタ、頑張れ!」

 ナルトの声にハッとし、ヒナタは唇を引き結んで凛と前を見据える。

「本日をもって、わたし、うずまきヒナタが七代目火影に就任します。……わたしが目指す木ノ葉隠れの里は、皆が前向きに生きていける、そんな里です。それから、他の隠れ里とも連携し協力してより平和な世界を実現したいと思います。

 今回火影就任の話をうけて、アカデミーの頃に聞いた今は亡き三代目火影の言葉を思い出しました。それは、「里の子供たちは里の宝だ」という言葉です。今わたしたちに宿る火の意思を、次代に繋いでいけるよう、わたしたち大人は次代へ託していかねばなりません。

 第四次忍界大戦が終結した後、木ノ葉隠れの里や火の国、その他近隣の国々の情勢は目まぐるしく変化し、発展しています。故に、これから多くの改革を推し進めていく必要があります。まだまだ至らないところもありますが、火影という名に恥じぬよう、努めて参ります」

 ヒナタは深々と頭を垂れた。

 着任演説の内容は堅いが、それを語る声は柔らかく、心地よく人々の耳に響いた。盛大な拍手が響き、ヒナタは一瞬驚いたような表情をしたが、すぐにフワリと微笑んだ。

 火影塔のバルコニーの隅に控えていたナルトとサスケも、今初めてその演説を聞いた。ヒナタはシカマルに相談していたようだが、内容は当日のお楽しみだと言って少しも教えなかった。

 ナルトは自分の火影就任式のことを思い出していた。といっても、この光景を見るのは初めてだ。きっとあの日も同じ光景を見るはずだったが、それは思わぬトラブルで叶わぬこととなった。

 それに引き換え、ヒナタの演説は……。

 驚いたり、悩んだり、がっかりしたりと百面相をしているナルトを見て察したのか、サスケはくすりと笑った。ナルトのあの日とは雲泥の差。ヒナタの駆け出しは良好だ。

「行くぞ、ナルト」

 サスケに小突かれてナルトが顔を上げるとと、ヒナタがはにかんだ笑みを浮かべこちらを見ている。サスケとヒナタ。これが火影の座を手放してまで望んだ光景だった。この道を選んでからわかったことがある。火影ではないからと、自分の生き方はそう変わらない。これまで通り、絆という人と人との繋がりを大切にしていきたい。

「ナルトくん、サスケくん」

 二人は呼ばれるがままヒナタの元へと歩いた。

「……皆さん、木ノ葉隠れ里の二人の英雄をご存じかと思います。先日の夫となったナルトくんと、それから……夫いわく、かなりの友達のサスケくんです」

 英雄の名に「くん」が付くと少し可愛い感じがする。

「全力でオレの奥さんをサポートするってばよ!よろしくな!」

「ヒナタとはそれなりに長い付き合いだ。ナルトと共にヒナタをサポートする」

「二人は云わば里の顔です。本当は二人のどちらかが火影となるに相応しいのですが、皆さんもご存知の通り二人には少しやんちゃな所があります」

「なっ?!」

「オイ……」

 たしかに、という声が至る所から上がった。結局は、あの二人には常識なんてものはないのだろう、という見解に終着している今日この頃。それから、二人のしでかしてきた事を「やんちゃ」という言葉一つでサラリと片付けてしまう手管には舌を巻く。

「このような二人ですが、わたしは二人を信頼しています。これからも協力して里を治めていきますので、よろしくお願いいたします」

 ヒナタは柔らかな笑みを浮かべているが、捉え方を変えるとそれは脅しのようにも聞こえる。最早ナルトとサスケに並ぶ力を持つ忍びはいないとされている。それを左右に携えそのような台詞をいい放つヒナタの姿は正に、女傑だ。ヒナタには微塵もその様な気はないのだが。




ヒナタの演説、そのうちかきなおします…
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