七代目火影に就任し、初めてのリモート五影会談に挑むこととなった本日。ヒナタは緊張した面持ちで画面に向かっていた。五影会談とはいえ周囲にはシカマルを筆頭に頼もしい部下がいるため、おそらく何を聞かれても返答に困ることはないだろう。
「回線、繋ぎます!」
四つの画面に他里の影が映った。現職の影は砂隠れの里風影・我愛羅、霧隠れの里水影・長十郎、岩隠れの里土影・黒ツチ、雲隠れの里雷影・ダルイである。かつてナルトが七代目であった時のメンバーに相違ない。
「このたび、新たに七代目火影の名をいただきました、うずまきヒナタと申します。よろしくお願い致します」
窈窕淑女を絵に描いたようなヒナタの挨拶に、友人の妻ということで交流のある我愛羅以外の影は放心していた。
「えっ、このお姫様って感じの美人がうずまきナルトの妻ァ?!」
妙な数秒間の沈黙の後に仰け反り大声を挙げたのはヒナタと同性の黒ツチだった。
「ナルトにしては品が良すぎねぇ?」
「ちょっと、失礼ですよ雷影」
「いいえ。言われ慣れていますから平気です」
「おいおい、育ちが違いすぎないか?私と同じくノ一とは思えないんだけど……」
黒ツチはまだ何やらブツブツと言っている。
「火影、単刀直入に聞いてもいいか?」
「はい」
「次の火影はうずまきナルトだと思っていたが、……何か理由があるのか?」
他里に話しても良い内容かと隣のシカマルの方を見ると、首を縦に振る。
「そのような話もあったのですが、夫が辞退しました」
「辞退?なぜですか?」
「夫は火影の座ではなくサスケくんを選びまして」
そこは確認せずに即答するのかとシカマルはずっこけた。
「だーっ!!ヒナタ!根掘り葉掘り聞かれる前に会談始めるぞ!」
五影会談の前座にしては長すぎる話にたまらずナルトが声を挙げた。モニターには映っていないため、そこにナルトがいたのか、なら本人が話せと影たちがやんややんや煩い。
「オレってば火影じゃねーけど、火影代理って役職もらったから役割的には火影とあんましかわんねーから。ってことでこれからよろしくってばよ」
「なーんかはぐらかされた感じ。ってかサスケを選んだってどういう意味だよ」
黒ツチは容赦なグイグイくる。あまり深掘りされたくない所を的確におさえてくるためナルトはしどろもどろでまごつく。
「あー……えーと、その、うん、浮気男が火影なんか名乗れねーってゆーか……」
「あの噂はマジなんだな」
黒ツチの次はダルイが間を置かずに斬り込んできた。
「墓穴を掘ってどうするナルト!」
シカマルがナルトに拳骨を落とす。
「あの噂、とは?」
我愛羅は一人首を傾げている。
「うちはサスケとデキてるって話じゃねー?」
「土影、奥さんの前で話す内容では!」
黒ツチの歯に絹着せぬ言い様に長十郎はあんまりだと抑止の声を上げる。
「それはわたしも承知していることですから、問題ありません。夫にはサスケくんが必要です。夫は浮気といいますが、アレはライフワークの一部で必要なものなんです」
まさかの妻公認という事実に影たちは固まる。
「ヒナタァアア!サスケ、オイ!なんとか言え」
冷静沈着なシカマルでさえこの焦りっぷり。
「何をだ。ヒナタは事実を言っている」
サスケにとって都合の悪い事は何一つない。
「……よっし、吹っ切れたってばよ」
「ナルト、お前はもう何も言うな!」
「ヒナタはオレの奥さんで、サスケは……一般的な言葉で言うなら……愛人だ。だからケジメとして火影は遠慮しました」
「ナルトォおおお!!」
シカマルがハゲそうである。
我愛羅は沈黙していたが、長十郎、クロツチ、ダルイは堪えきれず木ノ葉隠れのコントかよと大爆笑をしていた。
「すまん。……英雄二人が愛人関係ってもう最強すぎて笑うしかねぇ」
「うちはサスケもいるんならちょうど言っておきたかったことがある」
「なんだ」
「あの一年くらい前の写真集はなんなんだ?大戦の英雄としてアンタに憧れる者も多いのに……。アレを手にとった者がおかしくなるから大変なんだけどどうしてくれんだよ」
「……アレは燃やしてくれ」
サスケのライフはゼロだ。
「オレも見たが、凄かったな」
「ええ、本物との落差が激しすぎます」
「だろ?せっかく撮るならサスケの良さが伝わんねーとな」
「ナルトが撮ったのか?」
「ん?半分くらいな。他はカメラのおっちゃんの横でアレコレ指示出してた」
サスケは輪廻眼で異空間に引きこもった。
「あの写真集のおかげで国からの予算も増えましたし、サスケくんには感謝しています」
「サスケ予算とかで割り増ししてくれるんだよな。スゲェ太っ腹だってばよ」
なかなか本題に入れない火影会談であった。
三年後。再びリモート五影会談。
「今日は七代目とサスケが育休中ってことで、オレが代理を務めるってばよ」
「サスケも育児休暇だと?……いつのまに結婚していたのか?子どもまで……」
「結婚?我愛羅なに言ってんだ、サスケは結婚しねーぞ」
ナルトの反応から影たちは察した。だがそんなはずはないと、その答えに辿り着くのを躊躇していた。
沈黙を破ったのはダルイだった。
「まさかとは思うが、……そのサスケの子ってのはお前の子か?」
「たりめーだ。他に誰がいんだってばよ」
ナルトは真顔だが全くもって当たり前の現象ではない。
「はぁああああ?!生物学的におかしいだろ!」
黒ツチが叫ぶ。
「大蛇丸の実験が奇跡的に成功したんだってばよ。最初はオレもサスケも、オレらの遺伝子掛け合わせたら手に負えないヤツができるからやめとこって話してたんだけどさ、だんだんサスケが乗り気になって。でも金はかかるわ倫理的に問題あるわで汎用性はないんだなあ。うちの上層部はなんだかんだでサスケの子を望んでたから良かったみてぇだけども」
そこで大蛇丸という名が出てきたら、常識的には考えられないようなことでも納得せざるを得なかった。
「木ノ葉は……すごいな」
我愛羅はポツリと呟いた。
「本当に。常軌を逸しています。いつものことながら」
「これが五影会談の醍醐味でもある」
「それな」
他里の影たちは、会談冒頭でうずまき家の近況を聞くのを毎回楽しみにしている。五影会談はなかなか始まらない。
END
ナルトが仕事をしている間は、ヒナタとサスケは仲良く一緒に子育て中ってことで。一緒にオムツやら粉ミルクやらも買いに行きます。どんな世界線だよ。