もし二人であの頃に戻れたなら(完?)   作:冬乃菊

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サクラの恋路

 夕刻にヒナタの家に行くまでの間、サスケはうちは居住地の敷地内にある演習場で、手裏剣やクナイの的当てをしていた。イタチは帰宅するときにこの道を通る。

 

「兄さん。……その、サクラの手紙には何て?」

「うん。話したいことがあるから、木ノ葉公園に来て欲しい。って」

「兄さんはサクラのこと、どう思う?」

「そうだな……成績優秀で可愛い女の子だね。熱心で、よく質問しに職員室に来ていたよ」

 イタチの様子は普段と変わらず、その言葉からもサクラのことを特に何とも思っていないことがわかり、サスケは肩を落とす。

「そうか……」

 イタチは明らかにがっかりしているサスケの様子が腑に落ちないでいた。

「どうしたんだ?」

「あ、いや、なんでもない」

「サスケは、サクラさんのことが好きなのかと……」

「サクラのことは嫌いじゃないが、オレはナルトにしか興味が持てない」

「……とりあえず、サクラさんとはちゃんと話すよ。サスケ、うちに帰ろうか」

 イタチはサスケの口から聞き捨てならないことを聞いたような気がしたが、華麗にスルーした。

「ああ」

 帰宅すると、ミコトがサスケに持たせる手土産を作って待っていた。

「サスケ、これ、簡単なものだけど、ヒナタちゃん家に行くときに持っていきなさい。おやつに食べてね」

「……ありがとう」

「イヤな顔しないでちょうだい。あなたは食べなくて良いから。ナルトくんとヒナタちゃんに、よ」

 サスケはおやつと聞いて思いっきりイヤな顔をしていた。甘いものは苦手だ。

「母さん、何作ったの?」

「ジンジャークッキーよ。まだたくさんあるわ」

 ミコトは透明なクッキー瓶にみっちり詰まったクッキーを見せた。

「これから出かけるから少しもらっていい?」

「もちろんよ。取り分けておくわ」

 対してイタチは趣味が甘味処巡りという甘党だ。

その点に関しては永遠に兄とは分かり合えないと思うサスケだった。

 

 イタチは荷物を片付けると、すぐに家を出た。サスケはイタチのあとをつけたいとも思ったが、不粋だと考え直す。

「サスケもそろそろ行かなくていいの?」

「あ、うん。もう少ししたら行く」

 

 木ノ葉公園は木ノ葉の里の中でも一番大きな公園だ。手紙には待ち合わせ場所が書かれていない。

(見つけきれるだろうか……)

 イタチは歩きながら空を見上げた。半刻ほどしたら辺りは薄暗くなるに違いない。

 サクラは頭脳明晰。利発な少女だ。広い木の葉公園を選んだのに、待ち合わせ場所を書き忘れるはずがない。桜の花のついた小枝。その昔、国の大名や裕福な貴族は手紙のやり取りの際に季節の花を添えていたという。

 木ノ葉公園には桜の並木通りがある。待ち合わせ場所の指定がないのであれば、行ってみる価値がある。イタチの予想通り、公園の桜並木通りのベンチにピンク色の髪が見えた。何か考え事をしているのか、彼女は微動だにしない。

「サクラさん」

「っひゃ!!」

「ごめんね。驚かせたみたいで。……隣に座っても良いかい?」

「は、はい!どうぞ!」

 イタチが来てからのやり取りを何通りも考えていたサクラだが、一瞬で吹き飛んでしまった。

「手紙、ありがとう。実は……ああいうのもらったの初めてで、少し緊張した」

「えっ!!そうなんですか?!」

 サクラは驚いてイタチの方を見た。すると視線が重なる。イタチはいつものように優しい笑みを浮かべていた。

「うん。サクラさん、もし俺がここに来なかったらどうした?」

 イタチは、サクラが渡した桜の花を見ていた。彼が偶然ではなく、自分が考えた謎かけに気づいてここまで来ていることを知った。

「スッパリ諦めるつもでした。あ、あの、先生……もう気づいてると思いますけど、わたし、先生のことが……好き、です!」

 頬を赤く染めて、真っ直ぐにそう伝えてくる女の子は予想以上に可愛い。イタチは少し考えると口を開いた。

「……サクラさんみたいな女の子に面と向かって言われると、やっぱり嬉しいよ。だけど、サクラさんの言う『好き』には、今はまだ応えられない。サクラさんはまだ十二歳で、まだ早すぎる」

「そう、ですよね……」

「弟がね、君のことを誉めていたよ」

「え?!わたし、サスケくんとはほとんど話したことないですよ」

「頭が良くて、チャクラコントロールが上手くて、根性がある。ってね」

「え……」

「だからね、忍としてはすごく興味がある」

「えっ!?」

 恋路が断たれたわけでないと知り、サクラの表情がパッと明るくなった。

「修行をするとき声をかけてくれたら嬉しいな。事前に言ってくれたら、学校のない日は付き合える」

「いいんですか?!」

「ああ」

(メルヘンゲットー!!)

 サクラは心の中でガッツポーズをとった。

「そろそろ行こうか。家まで送るから」

 周囲はいつの間にか闇に隠れていた。イタチはスッと立ち上がると、サクラに手を差し伸べる。サクラは恥じらいながらその手をぎゅっと握った。

 歩き始めても、その手が離れないことに嬉しさ半分緊張半分。家までは道順のことしか話すことができなかった。

「あ、サクラさん、これ……母がたまたま作ってたから持ってきたんだ。今日は卒業おめでとう」

 イタチはリボンで結ばれた包みをサクラに渡した。

「ありがとうございます」

 サクラはイタチの背中が見えなくなるまで見送った。

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