追放されたので隣国乗っ取って取り返しに行く系王女   作:サイリウム(夕宙リウム)

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10:漁りましたわ!

 

「ん~! 流石に堪えましたわね!」

 

「……ぁ。」

 

 

そんなこんなで約3日。

 

ほぼ不眠不休で作業しましてちょうど最後の方を墓に収めることが出来ました! いや~、流石のワタクシでも体がガクガクですわ! 3000人分の装備検めてお墓作るとかもう色々ヤバいですわね! 最初は一人一人十字架作る予定でしたけど、体力と資材の関係から棒一本に成っちゃいましたし! 無理はするものじゃないですわね!

 

……あ! 祟らないでくださいましね死者の皆様!? ちゃ~んと後で聖職者派遣してお祈りさせますし、時間と金の余裕が出来れば真っ先に良い感じの慰霊碑立てますわ! それでも足りなければワタクシが乗っ取った後にはなりますが、この辺りの土地滅茶苦茶発展させるので許してくださいまし~!

 

え! ダメ!? いやだってワタクシ久しぶりに腕ふるえてるんですのよ!? ほらジェーンなんてもう言葉喋られないぐらいに疲労困憊ですもの! ご勘弁ですわ!!!!

 

 

「っと、まぁ茶番はここまでにして。……ジェーン? 生きてる?」

 

「ぁ……。」

 

「う~ん、死んでますわね。肉体的には生きてても精神が終わってますわ。途中から目が死んでたというか、虚無になってましたものねぇ。ほら飯食わないと死にますわよ~?」

 

 

そう言いながら持ってきた干し肉を口の近くに運んでみれば、即座に動き始める彼女の体。

 

肉体に叩き込まれているのでしょう。ワタクシの視線を遮る位置へと腕を動かしながら、懐から取り出すのは1本のナイフ。そして一直線にワタクシの首元へと飛んできます。常人どころか訓練された相手ですら絶死の一撃。良く練り上げられていると称すべき技です。

 

でもワタクシには効きません。

 

だって遅いですもの。

 

ぱっと指でナイフ受け止め無力化。そして彼女よりも早く干し肉をその口の中に放り込みます。最初は即座に吐き出そうとする彼女でしたが、脳がエネルギー不足を訴えたのでしょう。気が付けば彼女の全身から力が抜け、もごもごと干し肉を齧るだけのジェーンが完成しました。

 

 

「親鳥の気分ですわね! ……というかジェーンの耐久度を高く見積もり過ぎてましたか。悪い事しちゃいました。正気に戻ったら謝っておきませんと。」

 

「んぐんぐ」

 

「……反応が無いとつまらないですわね。」

 

 

ジェーンの様子を眺めながら、寂しくその場に腰を下ろしワタクシも肉を齧ります。

 

作業の分担としては、ワタクシが2500でジェーンが500程。当初の予定としては半々ぐらいの予定だったのですが、想像以上にダメージが酷かったのでしょう。途中で彼女が使い物にならなくなったがゆえに、私一人でしていた感じです。

 

まぁ人の死に向き合い続ける感じの奴ですからねぇ。その方の死因によってはちょっとヤバい亡骸もいますし、途中から腐敗臭もきつくなり始めました。それ相応の準備は整えていたのですが、積み重なった数というのは馬鹿になりません。

 

 

(ワタクシはまぁ前世のこともあるので“死”には慣れてますけど……。)

 

 

ほぼもう確信なのですが、ジェーンは我が母国の暗部に身を置く存在でしょう。そうじゃなきゃ先ほどの“身に染み込んだ動き”は出来ませんし、ただのメイドでは説明のつかないことの方が多いです。

 

故にある程度死という概念に慣れている、死体に慣れているのかと思っていたのですが、そうではなかったみたいです。……ま、見た所完全に壊れているわけではなさそうですし、腹いっぱいにして十分な睡眠をとれば元に戻るでしょう。可哀想なことをしてしまったのは確かですがリカバリーできる範囲で収まって良かったと言えます。

 

 

「さて……。これ、どうしましょうかね?」

 

 

そう呟きながら視線を送るのは、“まだ生きた”人間たちです。

 

えぇそうです死んでません。そして先の戦で戦った人間でもありません。

 

言うならば……、同業者。でしょうか。

 

 

(この周辺の村から飛び出してきたのだと思われる男数人と、盗賊十数人。来るとは思ってましたけど、まさかこのワタクシに喧嘩を売るとはねぇ? 片腹痛いですわ~!!!)

 

 

普通に大量の死体剥ぎながら穴掘ってる女を見つければ、気味悪がって逃げると思うのですが……。彼らはそういうおつむをしていなかったのでしょう。羅生門のおばばから鬘を奪うタイプです。

 

確か……、ちょうど作業開始から1日ほど経ったぐらいのころ。ちょうどジェーンが壊れ始め『あ、これ全部一人でやる奴ですわね』と覚悟を決めていた時、最初にやって来たのは村人たち。武器は持っておらず、大きめの籠を担いだ軽装の彼らでした。

 

 

『あ~、そこのお方。何してるんで?』

 

『見てわかりませんか? 品々の回収と埋葬してるんですの。手伝ってくれるのでしたら幾つか恵んで差し上げてもよろしくてよ?』

 

『……成程。じゃあそうして貰いましょうかねぇッ!』

 

 

ワタクシたちも服装は普通の恰好でしたが、同業者とは思わなかったのでしょう。

 

埋葬などという面倒なことをしているため貴族か何かの関係者と思った彼らのリーダーは、ワタクシに対し精一杯の敬語のような何かで話しかけてきました。一応ワタクシも鬼ではないですし、人手は欲しかった所。言葉通り手伝ってくれるのならいくらか分けてあげるつもりだったのですが……。彼らの選んだ選択は、強奪。

 

そちらのほうが利益になると考えたのでしょう。それに村の外ですし、全員が秘密にしておけばここで“何が起きても”困ることはありません。戦場跡にモノ拾いに来る程度の倫理観しか持たない彼らは即座に行動に移し、数人でワタクシを取り押さえようと動き出したのですが……。

 

まぁ次期女王たるワタクシがただの村人相手に負けるのはありえないわけで。

 

拳で全員の四肢を砕き、秒で制圧を終わらせました。

 

 

(痛い痛いとうるさかったのでずっと気絶させてますけど。ま! 治しやすいように綺麗に壊してるので問題ありません! 慈悲のアデ様とはワタクシのことですわ~!)

 

 

んでもう片方の盗賊団の方ですが、此方はなんと愚かにも会話すら挟まずに襲い掛かってきたのです。とっても破廉恥でしょう?

 

此方を発見した瞬間に馬に乗った頭らしき奴が突撃を命じ、歩兵が走り出した瞬間に弓兵が投射を開始。小規模ながら合戦の形と相成りました。まぁその時は壊した村人と壊れたジェーン、それとワタクシしかいませんでしたからね。盗賊からすれば物資を奪える上に女を手に入れられられるとウハウハだったのでしょう。

 

 

(まぁこっちも全員吹き飛ばしましたけど。)

 

 

ちょっとだけ魔力を使い、身体強化。

 

空に放たれた矢を回収し、放った弓兵たちのお手手にシュート。後は全力で距離を詰めて歩兵たちを全員蹴飛ばし、馬に乗った頭を振り落とす。ついでに乗っていたお馬さんを頂いて施工完了ってやつでした。殺すまではしていませんが、ちょっと雑魚すぎて手加減ミスっちゃいましたわ!

 

というわけでこいつらの武器武装&お馬さんを貰った後は縛り上げて積み木にしてますわ~! 人間ピラミッドですわよ~!!!

 

 

「んで貴女。こいつらの処遇はどうしたらいいと思う?」

 

「ブルルルッ!」

 

「あ、皆殺し。う~ん、でもお金になるかもしれないんですのよねぇ。」

 

 

おそらく盗賊からあまりよい扱いを受けていなかったのでしょう。“作業”のせいで血と腐臭だらけな筈のワタクシになんか懐いてきたお馬ちゃんに聞いてみれば、結構殺意の籠った鳴き声が。まぁそれも別に悪くないんですけど……。

 

こういう“人手”ってお金になるんですのよね。

 

この世界において創作の中に出てくるよくある『奴隷』は存在しないのですが、ソレに近しい存在は結構います。町の詰め所とかで取引できる人手と言いますか、強制労働者と言いますか、まぁそんな感じの奴らです。冒険者ギルドでの報酬が結構しょっぱかったのと同様に、人の命が安いからこそ“人手”の値段もそこまで高くないのですが……。お金はいくらあっても困らないでしょう?

 

 

「と言うわけでこの大量の武具たちと一緒に売り払いに行きたいのですが……運んでくださる?」

 

「ブ!? ブブブブブ!!!!!」

 

「あ、嫌そう。じゃあジェーンだけお願いしましょうか。」

 

 

んじゃ失礼して。

 

 

よっこらせッ!!!

 

 

……う~ん、流石に3000人分の装備は魔力使わないと運べませんわねぇ。しかも結構きついです。最大出力にしてようやく、って感じ? もしかするとギリギリ次の町まで持たないレベルかもしれません。

 

ごめんお馬ちゃん。引きずっていいから盗賊&村人を運んでくださる? こういい感じで縄で連結しておきますので。あ、それと御背中に乗せるジェーンは出来るだけ揺れは少なくしてくださいましね?

 

ワタクシの大事なメイドなので。……振り落としたりしたら、どうなるか解りますわよね?

 

 

「ブル!? ブ! ブ!」

 

「……なんか生命として逆らってはいけない存在みたいに見られましたわね。まぁいいでしょう、んじゃ出発ですわ~!!!」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

とまぁそんなわけで超特急で町まで走ったんですけど……。

 

 

「なんで死ぬほど警戒されてるんでしょうねぇ?」

 

「あ、あたりまえでしょうが馬鹿ッ!!!」

 

 

あらジェーン、復活おめでとうですわ。どうします? お祭りでもやっちゃう? ほらこっちの世界にもいらっしゃった死後3日目に復活ライブのなさった伝説のミュージシャンみたいに。

 

 

「どなたですかソレ! というかかの聖人だったら色々と不敬すぎますよッ!?」

 

「だってワタクシ無宗教ですもの。関係ありませんわ!」

 

「そうなのッ!?!?!?」

 

 

あ、ちなみにですがこの世界における宗教はキリスト教っぽいのが広がっております。名前も教えもちょっと違うのですが、よくよく調べてみれば多分そうだな……! ってやつです。後普通に14世紀ぐらいなので教会の権力バカ強いですし、洗礼を受けていない、もしくは破門された奴は非人間みたいな扱いをされます。

 

一応母上が何かうまくやったみたいでワタクシも書類上は洗礼されてるっぽいんですけど、大体全部拒否してたので実は母国の教会勢力とめっちゃ仲悪いんですのよね~!

 

 

「まぁ即位したら全員“異教徒”扱いしてワタクシを教皇とした新しい教派を生み出す予定だったので仕方ないんですけど。」

 

「何やってんの!?」

 

「あ、ご安心くださいな。既にある程度母上が掃除しちゃってるみたいですし、大陸には一切情報が流れてないって豪語してたので問題ありませんわ!」

 

 

いや~、懐かしいですわね! 確か5歳ぐらいの頃だったかしら? あまりにも王都の大司教が煩かったのでぶん殴って吹き飛ばしちゃったんですのよね!

 

そしたらそもそも入信してないのに『破門だ!』とか言い始めちゃいまして。“カノッサの屈辱”みたいなことになったら面倒だったので、その場にいた全員病院送りにしたんですのよ! んで母上にそのこと報告しに行ったら……、めっちゃキレられた! あはー!

 

 

(まぁでも母上からしても邪魔でしたから、もみ消しからのお掃除を手伝ってもらえたんですのよね!)

 

 

やっぱ中央集権、というか絶対王政に教会勢力は邪魔ですから。

 

静かに神に祈ってるだけなら献金してあげるくらい仲良く出来るんですけど、坊主が勝手に土地抑えて武力まで持ってたら……、ねぇ? 領主やその元締めの王からしたら邪魔なんですよ。

 

 

「あ! もしかして教皇したかった? んじゃ帰ったらいい感じの奇跡でっちあげるんで、聖女スタートからの教皇ルートを……」

 

「だからさっきから何言ってるんですかアンタッ! ……というかそういう話じゃないッ! 色々目立ったら困るのに何やってんのって言ってるんですッ!!!!!」

 

 

おっと失礼お話が飛んじゃいましたわね!

 

皆様ご存じのように、ワタクシは“戦利品”と“盗賊”片手にお馬さんと一緒に町までひとっ走りしてきたのですが……。

 

なんか到着しかけた町の方がね? 酷く騒がしいというか、ワタクシの方を見て何か叫んでいるというか……。

 

 

「なんかこっちに向けて武器向けてません?」

 

「そりゃそうですよあっちからしたら正体不明の巨大な何かが迫り寄って来るんですからッ!!!!!」

 

 

え、自分のことよく見ろ?

 

えっと、最初の町でジェーンが買ってくれた服でしょ? 皮の防具でしょ? あと鈍器として使い過ぎて鉄の棒と化している長剣でしょ? あと腰に愛用の書類鞄を付けまして、背中には大量の武器や防具たち。

 

何処もおかしくないのでは?

 

 

「最後ッ!!!!!」

 

 

最後……。あぁ!

 

そういわれ上を見上げてみれば、天高くそびえたつ沢山の装備達。まぁ3000人分全部持ってきましたからね! 頑張って綺麗に纏めはしましたけど小山ですわ! 数十mはありそうですわね!

 

 

「そんなもんが高速で走り寄ってきたら誰だってビビりますよバカッ! な、なんで目立つことするかなぁ本当にッ!!! あと後ろでうめき声上げながら引きずられてる人たち誰ッ! あとこの馬何ッ!!!!!」

 

「あら、ごめんあそばせ!」

 

 

えっと……、説明が面倒なので圧縮しますわ!

 

かくかくしかじかですわ~!!!

 

 

「……この数の武器と防具、ついでに盗賊も売っぱらうんですか? あの町で?」

 

「えぇ!」

 

「確実にあっちの資金が底つきますよ? あと目を付けられますし、途中で買い取り拒否られます。」

 

「んじゃそれでいいですわ!」

 

「…………はぁぁぁぁ。わっかりましたよもうッ! やればいいんでしょやれば! 商人の真似事だってやったりますよこっちがッ! アデ様! 馬借りますよ! あとこれ以上そこから動かないことッ! 今からひとっ走りしてあっちの門番と商人に交渉してきますッ! 多分ここで取引すると思うんで仕分けだけしておいてくださいッ! いいですね!!!」

 

「りょ、ですわ~~!」

 

 

 

 





〇アデ様の強さ

え、ワタクシですか? そうですわねぇ……。簡単に言えば、1対1なら絶対に負けないことを極めた、って感じでしょうか? 無論この程度で武の頂に立ったなど言えるわけがありませんが、自身が目標としているのはソレです。

なのでまぁ普通の兵士500人ぐらいなら一気に襲い掛かって来ても大丈夫ですわね。延々と1対1を押し続けられますし、それぐらいなら1対多でも跳ねのけられますから。ただ1000を超えてくると正面衝突されると難しいですわねぇ。色々と準備できれば勝てるとは思いますが、いきなりソレをやられると全力で逃げ始めますわね。

まぁ実際の戦闘じゃ騎士、所謂貴族の兵士で魔力を使って来る奴が出てきますし、その騎士の力量も兵士数十人分だったりします。ワタクシのような接近戦に重きを置いている奴もいれば、遠距離魔法を重視し遠くからチクチクして来る奴もいます。

こういうのも1対1じゃ絶対負けませんが……。クーデターの時みたいに色々入り乱れた状態で奇襲されると、ちょっとアンブッシュがね? 怖いんですのよ。しかのあの時サキュバスのせいで正確な敵味方の判別がマジで難しかったですから。こっちからすれば味方だったはずの奴らが『お前嫌い! コロス!』とか言い始めたようなもんですからね~。

……あの場で全員殺す気でやれば鎮圧できたかもしれませんが、おそらく無関係の者も大幅に消し飛ばしていたことでしょう。そうなれば残るのは『王女が乱心し虐殺を行った』という事実だけです。明確な“敵”を識別できなくなっていた時点で、あの場での勝負はついていたのでしょうね。

ま! 最終的に全部吹き飛ばして大勝利するので問題ないですわ~!!!





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