魔法少女よオギャらせろ!! 作:オギャァァァアアアア!!!!!!!
案の定、私の机には、布田辺が毎朝花屋で厳選していると噂の日替わりの花が、花瓶に生けられて鎮座しており、クラスメイトの何名かが■■■■■■■■■で■■した私の遺影風コラ画像の前で焼香をあげている。
なお、花瓶の数はその日の布田辺の調子を示しており、五本ある今日は絶好調というわけだ。
コンプライアンス的に間違いなくアウトなこの光景を無視して乾パンを取り出すと、すかさず赤髪の少女がこちらへ駆け寄ってくる。
小柄で可憐な姫の様な印象を抱かせる彼女は、私の机に置かれていた花瓶の内一本を両手で掴み・・・・・・
その中の水を私の顔面にぶっかけた。
びしょ濡れになった乾パンを見て、不快な顔をしながら口の中へ放り込むと、反面、先程の少女はこれ見よがしに笑顔を見せる。
「小山さんごめんなさい!そのボサボサな髪のせいで、カピカピになった人形だと勘違いしてました!不潔だったので洗ってあげましたが、迷惑でしたよね!?」
「そうだな酷い迷惑だ、まさか朝から
「・・・・・・」
ピキッという幻聴と共に、クラス内が静まり返る。
教室へ入ろうとしていた一時間目の先生は、その空気を感じ取ったのか、教室全体へ防音魔法をかけた後、扉の前で電話が入ったフリをして何とか無関係を決め込んでいた。
「そういうことだからお互い不快な出来事は忘れることにしよう。おや?何故突っ立っている?もしかして記憶を消すのに三歩も要らなかったか?」
「チッ」という舌打ちと共に、赤髪の少女は先ほどまでの笑顔を捨て、赤鬼のような形相でこちらを睨みつける。
「・・・・・・テメェ、誰が鳥頭だ。誰が、誰にクチ聞いてると思ってんだこの雑魚娘がァ!!!朝に鳴くのはオスの方だボォケェ!!!!」
「おお怖い怖い。全身真っ赤だとどこが顔だかわからなくなるな。これじゃあ餌をやれん」
「オイゴラ小山テメェボケカスゴルァア!!
「ちょっと姐さん!そろそろ落ち着いて下さい!どー、どー」
「誰が馬だァア!!!どさくさに紛れてお前も煽ってんじゃねェ!!!!!このクソ■■■と共に教育してやんぞゴルァア!!!!!!!」
「調子乗りましたごめんなさいぃぃぃ!!」
見かねたクラスメイトに宥められるこの女こそ、二年三組戦功トップの
見ての通りの二重人格で、沸点が低いためにキレてる人格の方が実質的なメイン人格となっている。
「ほら!小山も謝ってください!全部あなたが弱いせいですからね!!」
「・・・・・・そうだな、すまなかったよ
ムカつく話だが、これ以上煽り返すと
「あっ」
「・・・・・・」
おや、どうしたのだろうか。
私が謝ると同時に、布田辺はピシリと固まったまま動かなくなったぞ?
「あっあっあっ」
「小山テメェ・・・・・・」
何故か周囲の視線は私に集まっており、まるで私が失言をしてしまったかのように訴えかけてくる。
そう、例えば酷い言い間違えのような。
「あの・・・・・・」
───ん?
「姐さんの名字は、
「誰が豚鍋じゃオンドゥルァアア!!!!!!!ただの豚ならまだしも煮込んでんじゃねェよォオ!!!!!!!!!」
完全にブチ切れた布田辺は、私に拳を入れようとして取り巻きに止められると、真っ赤な顔のまま狂犬のように唸っている。
おいおい、鶏、馬、豚と食肉が続いたのに次は犬か?
全身真っ赤な女はどうも全身真っ赤な国の食文化に興味があるようだ。
「まぁ落ち着け、お前はただの言い間違いでキレるような器の小さい奴だったか?」
「えっちょっ」
「あぁもう完全に頭にきたァ!!!こうなったら小山テメェ!!!『魔女決闘』で徹底的に叩きのめしてやんよゴルァア!!!!!!!!」
「ほらもう何してるんですか小山!!煮込み鍋に油注がないでくださいよぉ!!!!」
「取り敢えず一旦落ち着きましょ!?もう授業が始まっちゃいますよ!!」
「そうですよね。こんな馬鹿なことはやめて、授業の準備を始めませんと」
「うわぁ!急に落ち着かないでください!」
取り巻きも驚きの速度で、冷静さを取り戻した布田辺は、「自分の机のものは自分で片付けてくださいね☆」とだけ言い残して去っていく。
二重人格なだけあって、変わる時は一瞬なのがまた恐ろしい。
一方の私はというと、先程の発言を思い返して頭を抱えていた。
───魔女決闘。
それは魔法少女同士が一対一で決闘をする催しであり、学園内に問わず、魔法少女なら誰もが好きなタイミングで参加することができる。
そしてその最大の特徴は、決闘の様子が
普段は配信活動をしていない魔法少女でも無理矢理公の場に引っ張り出され、当然不正なんて許されない。
特例で勝敗に賭けることが許されているために、敗者はSNSを中心に大バッシングを喰らう可能性が高い。
元はとある博打好きの妖精が企画したこの催事は、今でこそ開催数は少ないが、未だにファンからは根強い人気を保持している。
正直、布田辺が言った通り、私と彼女とでは実力の差がありすぎる。
虐められ始めた当初から魔女決闘だけは何とか避けようとしていたわけだが、こうなってしまえばどうすることもできない。
参加拒否を突きつけようとするも、既に布田辺がSNSで大々的に宣伝していたので手遅れだった。
あの様子だと既に申請もしているのだろう。
本来なら私も一々申請をしないといけないはずなのだが、彼女の隣で先程の取り巻きが私のスマホを操作していたのでその必要もない。
ああいう電子機器操作に長けたユニーク持ちは大した戦闘力を持たない代わりにこういう場面で厄介だ。
頼むからカク■ムの閲覧履歴だけは見ないでくれ、甘々女子が登場するラブコメを好んでいることだけはバレたくない。
ちなみに私の『雑草むしり』は利便性も戦闘力もない正真正銘のゴミ魔法なので、魔法格差というものは本当に理不尽である。
───さて、来る魔女決闘は止められないが、逆にこれはチャンスでもある。
ここで布田辺に勝ちさえすれば、彼女の主張である『弱者は強者に逆らうな』を正面から突破することができ、この最悪で面倒な虐めの日々を終わらせることができる。
基本的に、要望がなければ魔女決闘は申請から一ヶ月後に行われる。
この由来には様々な説があるが、最も有力な説は、始まりの魔法少女が活動開始からB級妖獣を討伐するのにかかった期間であるというものだ。
つまり一ヶ月もあれば魔法少女は大幅にパワーアップできる可能性が残されており、申請時の実力差も覆せるかもしれないというわけだ。
布田辺でも倒せるのはD級妖獣まで、私がこの間に覚醒さえすれば何とでもなるはずだ。
希望的観測だが、虐めを終わらせられるかもしれないとなると、こうも心は躍るものなのか。
そう浮かれていた私は、スマホから魔法少女専用アプリを起動する。
もしかしたら準備期間が一ヶ月よりも長いかも知れないと考え、確認したくなったのだ。
───しかし、魔女決闘の告知画面に映ったのは想定を遥かに上回る残酷な事実だった。
「嘘だろ、魔女決闘まで、残り
公開処刑という名の死神の鎌は、既に私の首筋に届きつつあったのだ。