魔法少女よオギャらせろ!! 作:オギャァァァアアアア!!!!!!!
ステッキに脳天をかち割られ、F級妖獣であるゴブリンが光と化して消えていく。
跡には妖結晶と呼ばれる石ころのようなものが落ちており、それを拾い上げるとバケツの中へと放り込む。
妖結晶は合成することで魔法石と呼ばれる特別な宝石へと変化する。
これをステッキに嵌め込むことで、
妖結晶を合成店へと持ち込んだ私は、カタログを広げ、付与する魔法を考える。
今回は手持ちのF級妖結晶を全て注ぎ込んだため、ワンランク上のE級魔法石が出来上がる見込みだ。
今までF級魔法石しか所持していなかった私にとって、対布田辺のメインウェポンとなることは間違いない。
「決闘相手のメタを狙った方がいいだろ?
いつの間にかチャラ男は、私の肩からひょいと顔を出してカタログを眺めていた。
「彼女のユニークは『地雷』、コモンは土属性を得意としているな」
「なるほどな。店主さん聞こえてるか!コイツの魔法石は土属性にしてくれ!」
「おい待て、彼女の土魔法はD級上位の妖獣に通用するレベルだぞ。そんなE級魔法石で太刀打ちできるものでは「あいよ!土属性いっちょあがり!」早ァ・・・・・・」
すんなりチャラ男の言うことを店主が聞くあたり、カップルだと勘違いされているな。
全くもって不愉快だ。
チャラ男は店主から魔法石を貰い受けると、こちらへ投げ渡す。
茶色の宝石は小ぶりながら、強いエネルギーを宿しているのか、小刻みに震えているように感じる。
せめて丁重に扱ってくれと文句を言いたくなったが、それよりも先に問い詰めておきたいことがあった。
「そもそも何故ここに君がいるんだ。警察はどうなってるんだ警察は!」
確かにチャラ男は昨日、私の通報を受けた警察によって逮捕されたはず。
その時にチャラ男に対する不満をありったけ伝えたはずなので、
「あ?知らねぇよそんなもん。なんか閉じ込められたから抜け出してきただけだ」
「えぇ・・・・・・」
まさかの脱獄犯であった。
察しの良い店主は、既に通報したぞと言わんばかりに親指を立てている。
仕方ない、警察が到着するまで時間稼ぎをするしかないようだ。
「ところで、昨日話そうとしていた続きとは何だね?」
チャラ男のニヤつきが強くなり、がっしりと私の肩を掴む。
一刻も早くムショ暮らしをさせたい。
「どこまで話したっけな、魔法少女のステッキが子供をあやすガラガラをモチーフにしてるって話は?」
「してないがしなくていい。さっさと本題を話せ」
チャラ男の悲しそうな顔が妙に苛立つ。
まるでおもちゃを買ってくれない子供のようだな。
「俺が魔法少女にオギャりたいって話は覚えてるな?」
「ああ、あんな悍ましい発言を忘れるわけがない」
「あれを小山に手伝って欲しい」
「
どうせ大した対価も用意できないのだろう。
こんな不名誉な仕事を誰がやりたがるというのだ。
「俺には魔法少女と戦うノウハウがある。俺に協力してくれるなら、布田辺を完封できるやり方を教えてやるよ」
『布田辺に勝つ』ではなく『完封する』か。
「ほう、魅力的な提案だが、信憑性に欠けるな。ただの男が魔法少女の専門家気取りとは笑わせる」
男と女、若者と年寄りでは体内の魔力量に差がありすぎる。
従って、若い女しか魔法を使うことはできないはずだ。
「おっ、初めて笑ったな」
「うるさい黙れ、私は笑ってない」
サイレンの音が近づいてくる。
相変わらず来るのだけは早いな。
「まぁいい、どうせすぐに協力したくなるだろうよ。ほら、これを持っておけ」
チャラ男に渡されたのは、重厚感のある漆黒の宝石だった。
内部には黒いモヤのようなものがかかっており、先程の魔法石とは異なって、まるで死体を触っているかのように冷たく、静かだった。
「何だこれは、闇属性の魔法石か?だがあれは紫色だったはずだが・・・・・・」
「魔法石ってのは当たりだ、いざという時はそれを使ってみればいい。死にたくなければな」
わざわざ「死にたくなければ」と付け足すあたり、相当な曰くつきのようだ。
恐らく持っているだけでお縄にかかるレベルの厄ネタに違いない。
即座に突き返そうとしたが、既にチャラ男は警察に連行されており、この魔法石は持ち続けなければいけないことになった。
まぁ、存在自体が厄ネタなチャラ男のことだ。
原理は知らんが、どうせ明日には脱獄してくるだろう。
その時に突き返せばいいやと思い、黒い魔法石をポケットにしまった。
「とまぁ、ステッキは余程のことがなければ壊れないので、このようにゴブリン相手なら殴り勝てる」
「うわぁワンパンしちゃったよこの先輩」
「容赦ねぇ・・・・・・」
「戦闘体の動体視力でも殴る瞬間が見えなかったんだけど」
頭部がひしゃげたゴブリンを背に、新米魔法少女達へと講義を続ける私。
昨今は魔法学校を通らずに魔法少女へなる者が大多数を占めているため、こういった民間のボランティア講習の需要は高い。
面倒臭いが、もしその怠惰のせいで、同じような
こういった理由で、専用のアプリを通じて定期的に後輩育成を行なっているのだ。
「大したことはしていない。ただ近づいて
「これでF級なの流石におかしいでしょ」
「ゴブリンの頭部ってあり得ない程硬いって聞いてたんだけど」
「私、前にゴブリンの頭を砕いてみたって動画がバズってたの見たよ」
「多分それは私の動画だな。これでも近づきさえすれば上位の妖獣だって倒せるという自負はある」
しかし、その近づくという行為が上位の妖獣相手には難しい。
何せ、力以外のステータスが弱いために、少しでも攻撃が掠ると余裕で身体が吹っ飛ぶ。
故に宴会芸以上の価値はなく、それしか持たない私はF級止まりというわけだ。
「そういえば小山先輩って、来週の魔女決闘に参加しますよね?」
「えっ、あれ小山先輩だったの!?お相手の人かわいそー」
「可哀想なのは私の方だぞ、一週間でD級に対策しないといけないのだからな」
「でもワンパンでしょ?」
「当たりさえすればそうだが、そんなことは布田辺も知っているし、当然、対策もされている」
伊達に一年以上の付き合いだ。
お互いのスペックは当然熟知しているし、それを踏まえた上での決闘申請なのだから、念入りに私をコテンパンにする準備はしてくると考えた方がいい。
それに、彼女のユニークである『地雷』は、近づかなければ碌な打点を持たない私にとって非常に厄介だ。
「水か風でなんとかするつもりだったが、肝心のD級魔法石を土属性に染められてしまったからな」
「水はわかりますけど、何故風なんですか?相性的には不利と聞きましたが」
「属性相性論か、あれは迷信の類だぞ」
魔法の種類によって個々の相性の差はあれど、○○属性だから◇◇属性に有利といった関係性はない。
「水や風は防御に使いやすい。土もそうだが彼女の魔法で相殺されてしまうのがオチだ」
E級魔法石とD級魔法石とでは当然出力は大きく異なり、同属性で戦いを挑むのは極めて分が悪い。
「思い返すだけで腹が立ってきたな、ただでさえ魔法石は貴重だというのに」
ちなみに布田辺の魔法石は土のD級、聖のE級、火と水と雷のF級であり、私の魔法石は土のE級と聖と火のF級だ。
「でも、これでE級妖獣とも戦えるようになりましたね!」
「確かにそうだな、
「あっ・・・・・・」
そういうものなのだ。
あの布田辺でさえもD級魔法を使い熟せるようになったのはつい最近と聞く。
一週間という期限は力量差を覆すにはあまりにも短い。
当然の事実を再認識させられ、勝ちたいという気持ちに陰りが生じる。
不意に、ポケットの中の黒い宝石に意識が向く。
チャラ男の言う通りこれが魔法石なのだとしたら、一体どんな魔法が眠っているのだろうか。
「さて、ユニークの重要性について理解してくれた所で、その活かし方を実演してやろう」
使うのは草の根を編んだ紐と
適当な雑草の根に紐を結びつけ、雑草の根ごと紐の一部を土の中に埋める。
「私のユニークである『雑草むしり』は、地面に埋まった雑草を、高速かつ正確に根っこごと引き抜くというものだ」
ステージの上に置いた独楽に、雑草とは反対側に突き出た紐をくくりつける。
イメージ的にはこんな感じだ。
独楽紐紐紐 雑草
─────紐───紐─────
紐紐紐
「この際に、引き抜いた根っこは途中で千切れず、他の根っこを巻き込むことができる」
ちょいちょいと独楽の位置を調整した私は、魔法を発動して雑草を掴む。
「これらを上手く組み合わせることで・・・・・・ほっ!」
引き抜いた根によって、独楽は生徒の手から離れ、ステージの上を高速で回る。
後輩達は驚きに満ちた目で独楽を眺め、思い思いに感嘆の声を漏らしている。
「地面を挟まないといけないのがネックだが、こんな魔法でも回転エネルギーに変換できる。今の仕組みを少し弄れば、タービンを回して発電することも可能だ」
なお、妖獣相手だとすぐ地面が荒れたり燃えたりするので、やはりこれも花見で披露する芸止まりなのだが。
講義が終わり、荷物をまとめていた私は、こちらへ近づいてくる少女に気がつく。
「姉さん、ほらこれ。独楽を拾い忘れてたよ」
「ありがとう
「・・・・・・別に、悪くはなかったと思う」
「そうか、わからないことがあったら遠慮なく聞いてくれ」
「うん、わかった」
実妹である陽珠は私の一個年下であり、同じ学校に通っているために、唯一虐めの事実を知っている肉親でもある。
「姉さんの方は大丈夫?今日も怒声が響いてたけど」
「煽りすぎたと反省はしている。最後のアレがなければ決闘は回避できたはずだったしな」
「負けるの?」
「せめて勝てるのかを聞け。これでも一応、勝算はある」
「具体的には?」
「布田辺の遅刻による不戦勝」
「駄目でしょそれは」
流石に冗談だ。
とはいえ、あれから考えてみたものの、それぐらいしか思いつかないのだから仕方ない。
結局のところ、魔法少女の戦いはパワーを制した者が勝つ。
奇跡さえ起こさなければ、待っているのは一方的な蹂躙なのだ。
「まぁ、軽く土魔法の練習はしておくとするよ」
数時間もぶっ通しで練習すれば簡単な壁ぐらいは作れるようになるしな。
「・・・・・・情けない」
「どうした?何か言ったか?」
「ううん、何でも」
「そうか、私は公園で魔法の練習をするから、陽珠は先に帰るといい。くれぐれも一人で戦おうとするなよ?陽珠のユニークが優れているとはいえ、
「そう・・・・・・」
公園を後にする陽珠の髪が風に揺れる。
私とは真逆のサラサラヘアーとモデル体型を兼ね備えたその姿は、実の妹と言えど惹きつけられるものがある。
美しく愛くるしい、私の自慢の妹だ。
私も妹に誇れるような姉になるため精進せねばな。
そう思いを胸に抱いた私は、土の魔法石をステッキに嵌め、土を動かして壁を作り始める。
その日の魔法練習は、普段と比べて熱の入ったものになった。
次回、死闘。