世界とは常に無常である。
たとえば、昨日までイチャイチャしていたカップルが次の日には分かれていたり、人気タレントがスキャンダル発覚して芸能界を引退せざるを得なくなったり。
だが、そんなそんな小さな変化など可愛く見えるくらいの自体を今まさに体験している少女がいた。彼女の名は絢瀬絵里。ここ音ノ木坂学院に通う生徒で、人気スクールアイドルμ'sのメンバーの一人である……はずだった。
「どういうことなの……これは」
絵里が驚くのも無理はない。風邪で1週間学校を休んでいる間に、μ'sの部室だった部屋は空室になっており、誰かが使っていた形跡は一切なかった。
いや、変化はそれだけではなかった。かつて音ノ木坂学院は、廃坑に追い込まれたことがある。しかし、その事態を自分たちのアイドル活動が救ってからは再び学校は活気づいていた。
そのはずなのに、現実今の学院内には鬱屈としたオーラが漂っている。
その事に只ならぬ事態を感じた絵里は他の部員を探すべく廊下を駆け抜けていく。
かつて自分が生徒会長だったころ廊下を走る生徒を見かけたらすぐに注意をしていた。だが、今はそれどころではなかった。
やがて、自分の所属する教室に近づくにつれてオーラはより禍々しさを増していくように感じられた。いよいよ、自分の教室が目の前に迫った時見覚えのある後姿が絵里の視界を捉える。
黒い髪をピンク色のリボンでツインテールに結んでいる。小さな少女。それは、かつてμ'sで一緒に歌った矢澤にこの姿に他ならなかった。
絵里は安堵し、
「ちょっとにこ、何があったの? 部室に行っても誰もいないし、心配したじゃない」
と声をかける。だが、返事はない。代わりに、彼女はこちらを振り向き、冷めたような目線で絵里を睨み付ける。
「あんたたしかμ'sの絢瀬絵里よね……? どうしてここにいるの」
「どうしてって」
反論しかけて、明らかに異様なにこを包んでいることに気付いた。悪意、殺気、何と表現したらいいか分からないが、好意でないことだけは絵里にもわかった。
それに、にこの腰には奇妙なベルトがつけられていた。バックルが、人間の掌を模した形になっている。
「すべてのアイドルは私が滅ぼす。悪く思わないでちょうだい。変身」
にこはそう言うと、バックルに左手にはめた指輪を近づける。それは真っ黒い不気味な形をした指輪だった。
ダークネス・プリーズ
ベルトが喋ったと思うと、にこはさっき見た指輪のデザインそっくりな異形の姿へと変わっていた。
彼女はいつの間にか手に持った剣を構え、こちらに突撃してくる。
何が起きたかはよくわからない。ただ一つ、このままでは命が危ない。
すんでのところでにこの剣を避けると、さっき来た道を全速力で駆け逃げる。日頃μ'sの練習で身体を鍛えていたおかげで、何とか逃げ切れるかのように思われた。しかし、昇降口まで逃げたところで絵里の希望は打ち砕かれることとなった。まだ、昼間であるにも関わらず入り口の鍵が施錠されている。
「ちょっと……嘘でしょ」
カギをガチャガチャと動かしても、扉はびくりとも動かない。背後ににこの気配が迫ってくる。
ルパッチマジックタッチゴー・ルパッチマジックタッチゴー
場違いなくらい陽気なメロディーが絵里の耳につく。
スラッシュストライク
その音の次の瞬間、にこの剣が絵里の眼前まで迫ってきた。
ああ、私ここで死ぬんだ。
絵里は静かに目を閉じる。
「さあ、絢瀬絵里。あなたが戦うのです、μ'sを救うために」
「こんな事って」
絵里はポロリと涙をこぼす。
次回、仮面ライダーKKE
『認められない戦い』
誰かが傷つく未来なんて、認められないわ。