絵里が目を覚ますと、そこは不思議な空間だった。真っ暗なはずなのに不思議と周りが鮮明に見える。
眼前にはスクリーンが広がり、自分たちがかつてアイドル活動をしてきたときの映像が映りだされている。希、真姫、花陽、海未、穂乃果、ことり、たった1週間しか経っていないはずなのに何十年ぶりかに再会したような気分になる。
スクリーンに近づき、気づく。スクリーンの前に紫色のフードをかぶった女が立っている。顔は見えないが、どこか懐かしい、見知った雰囲気を感じる女性だった。
彼女はゆっくりと絵里に近づき、
「絢瀬絵里――――あなたは、運命によって戦いを宿命づけられています」
招待を悟られないためか、女性はくぐもった声で絵里にそう告げる。
「ちょっと待って。意味が分からない。戦いって何なの? みんなは、にこはどうなったの」
絵里でなくとも動揺するのは当然だった。女性は、全く動じた様子もなく語りかけてくる。
「彼女たちもまた、戦いを宿命づけられている。ほかの部員たちに会いたければ、このベルトを手に取りなさい」
そういって彼女が差し出したのは、バックルにナイフが飾り付けられた珍しいかたちのベルトだった。そして、その上にはラズベリーを模った錠前が一つ。
「そんなもの……」
「受け取らなければ、君は死ぬしかない」
彼女の言葉に、ここに来る前起きた出来事を思い出す。にこは間違いなく自分を殺しに来ていた。
「仲間に会えずただ死を受け入れるというのならそれでも構わない。だが、その先で待つのはμ'sメンバー全員の死だ」
「そんな……」
「さあ、どうする?」
女性は絵里の事を挑発するように、眼前にベルトを突き出す。
「もしも、私が戦えば希や真姫、みんなを救うことができるの?」
「それは、君次第だ。絢瀬絵里」
絵里は女性の手からベルトと錠前を引ったくる。
「それが君の選択か」
「別にあなたの挑発に乗ったつもりはない。だけど、1年近くも一緒に頑張ってきたみんなが不幸になる未来……。そんなの、認められないわ」
一瞬女性が笑ったように見えた。だが次の瞬間、絵里は再び昇降口で変身したにこと対峙していた。
スラッシュストライク
にこの剣が絵里の眼前に迫る。それをすれすれのところで避けて、さっき女性から受け取ったベルトを腰に巻き付ける。
錠前を手に取り、開錠する。
ラズベリー
電子音が聞こえる。絵里は不思議と、どうするべきか分かっていた。錠前をベルトに取り付ける。
ラズベリーロックオン。
頭上にファスナーが開き、巨大なラズベリーが下りてきて絵里の頭にかぶさる。
ベルトについていたナイフを下す。すると、錠前のラズベリーが開き、
ラズベリーアームズ、進み抜け光の道を
絵里の姿がにこの様な異形の者へと変わる。手には、ラズベリーがデザインされたライフルが握られていた。
「へえ、あなたも変身できたんだ。でも、にこは負けないよ」
にこは動じた様子もなく、絵里の方へと駆けてくる。
キックストライク、サイコ―
にこの足が闇に覆われ、やがて天高く飛び上がる。
――バックルのナイフを3回振るうのです。
絵里の脳内に先ほどの女性の声が響く。
声の指示通りナイフを下す。
ラズベリー・スパーキング
――銃を構えて、撃ちなさい。
銃口から紅色の光が放たれ、昇降口全体を覆う。光が消えた時、そこににこの姿はなかった。床には、にこのベルトの残骸だけが悲しげに転がっていた。
「ちょっと……話が違うじゃない。私が戦えば、μ'sを救えるって。なのに」
「確かにそういいました。が、μ's全員を救えるとも、矢澤にこを救えるとも言っていません」
「そんなのって。そんなのって」
絵里はこぶしを握りしめる。一度は夢見た全員との再会が儚く打ち壊された気分だった。
女性は冷淡に言葉をつづける。
「嘆いている暇はありませんよ。言ったはずですμ's全員が戦いを宿命づけられていると。このまま、全員が死ぬのを指を咥えてみているつもりですか?」
女性の言葉に、絵里は強く足を踏み鳴らす。
「どういうこと、3つのスクールアイドルって」
絵里は女性との肩を強くゆすぶる。
「音ノ木坂スクールアイドルは、μ'sともう2つあるじゃないですか」
次回、仮面ライダーKKE
『3つのスクールアイドル』
誰かが傷つく未来なんて、認められないわ。