ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~ 作:IXAハーメルン
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ボク、
コーヒーはミルク多め、寿司はさび抜き、面倒ごとは避けて、流行の物に流される。
量産型と言われてしまうかもしれないが、突っ張り過ぎた人生を歩むよりは何倍もいいんじゃないかな、なんて誰に言われるわけでもなく言い訳することだってあった。
「
「はーい!」
うぇ、ゴミ溢れてるじゃん。
めんどくさいなぁ。
使い捨てのビニール手袋をはめながら、ガラスに映りこむ自分の姿を目で追う。
茶髪のショート、ありきたりな靴と服、背丈もさしてとびぬけて小さくも大きくもなく、まあ、多分大体普通。
正直、街を歩いて石ころを投げれば無限に当たるだろう。
「うお、栃木のダンジョンが崩壊だってさー」
「怖いですねー」
後ろを通った通行人たちが、突如として鳴り響いたスマホの通知へ目を通し、おどけたような声を上げる。
互いに適当な会話を繰り返し、ふと興味を失ったように彼らは道路の先へ消えていく。
ダンジョン。
正式名称はなんだったっけ、特定領域超……空間?
まあめんどくさいしなんでもいいや。ダンジョンね、ダンジョン。
見つかったのは五年前だっけ? いや、本当はもっと昔から見つかってたんだっけ?
詳しいことは知らなかった、興味もあんまりわかなかった。
いや、もちろんさすがに最初に話を聞いた時は驚いた、なにせ世界中を震撼させた大ニュースって奴だったから。
良く分からないひび割れが世界中に生まれて、その中に入ったら化け物がうじゃうじゃいて、さらに魔法も使えるようになるんだなんて、漫画やゲームみたいな話だったし。
でもすぐに興味を失った。
ダンジョンは急速に発見管理、仕事なんかが整備されて、急速に『当たり前』の物になっていった。
それより周りに合わせたファッションやコスメ、流行の物を追いかけるので必死だったし、どうせボクたちの生活に関わることなんてあんまりないんだから。
たまになんか壊れてモンスターがあふれるらしいけど、大体顔も知らない誰かが怪我をしたとかその程度。
街中のはどれも管理されてるから、壊れてもすぐに対応されるんだって。
じゃあボクたちにはどーでもいいよね、安全ってことだし。
「うへぇ」
飲み切られなかったであろうボトルの中から、どろっとゼリー状の物体が流れ落ちる。
最悪だ。ゴミ掃除の後、水で流さないといけないじゃないか。
「はぁ……サイアク」
顔の横に垂れてきた髪を耳にかけ小さく愚痴る。
「ん?」
だがその時だった。
視界の端、目まぐるしく走り回る車の間で、ふと何かが目についた。
――ヴゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!
そりゃ目につくわけだ。
なにせその白いスクーターは、流れに逆行してこの店に突っ込んできているのだから!
「はぁ!?」
え、ちょ!?
「うわうわうわっ!?」
なになになに!?
平和だった昼下がりの午後に似合わぬ爆音、あわや大事故という直前でそれは軽快なブレーキ音をかき鳴らす。
そしてスクーターにあるまじき激烈なブレーキターンを決め、一人の少女が颯爽と飛び降りた!
「やっと見つけた」
プラゴミ片手に唖然としていたボクへ、
周りの様子なんて知ったこっちゃないといった様子で、こちらへ一直線だ。
まるでこっちが知り合いかの様に。
……いや、正直に言おう。
一人だ。たった一人だけ、こんなことやりかねないバカをボクは知っている。
というか昨日メッセージで届いた、原付の免許ゲットしたって。これで会いに行きやすくなった、なんて言われた気もしたけど、適当に返したのもぼんやり覚えてる。
……いやいやまさかね? まさかって話でしょ!
まさかあのバカだってそんなバカなわけないでしょ!
だって今は
めぐる思考、動かない体。
ぽかんと口を開けしゃがみ込んだボクの前へついにたどり着いたそいつは、覚えのある姿より少し高くなった身長。
かっちりとしたフルフェイスのヘルメットをすっぽりと脱ぐと、そこには凛々しい、なんて周りからは言われる顔が飛び出す。
「ふぅ……ろっくんろー、だね」
そいつはバカなことを言いながらふぁさりとウルフカットの髪を整え、小脇にヘルメットを抱え微笑む。
あぁ、バカだった。
見知ったバカだった。360度どこから見ても間違いない、人形みたいに整った幼馴染の顔立ち。
幼稚園からボクを振り回し続けた完璧女、
「な、あ、な、な、なんで!?」
なんでここに!?
「なんでアンタがここにいんの!?」
「……なんで?」
あまり表情が変わらない顔をこてん、と傾け彼女が質問を返す。
「昨日メッセージおくった」
「はぁ?」
そんなふざけたメッセージを受け取った記憶はない!
ポケットをまさぐりバキバキのスマホを彼女はこちらに突き出してきたので、しぶしぶ画面を睨みつける。
じゃありつ、明日むかえにいくね
ダンジョンいこ
淡白な文章。
だがその下に薄く書かれている、送信失敗の四文字。
「……送れてないじゃん」
「んー?」
「アンタまだスマホ使えないの?」
「つかえる、ちゃんとメッセージおくった」
送れてないっつーの!
スマホ片手にむふーっと自信満々に胸を張るバカの頭をはたき落とす。
機械音痴過ぎて妹とゲームすら出来ない女は伊達じゃない、これで学業の成績は良いってのだから世界は理不尽だ。
どうすんだコレ、道路にがっつりブレーキ跡が残ってるんだけど。
べつに事故とか起こってないしほっといていいのか?
というか驚いてゴミ放り投げちゃったから、道路中にゴミ広がっちゃったんだけど!
「はぁ、あたまいたい……」
「りつ、頭痛いの? よしよし」
「やめい! 誰のせいじゃと思っとるん!」
何が面白いのか、にこにことこちらの頭を撫でている腕を振り払う。
「りつ、元気でよかった」
「輝良のせいで元気百分の一だよ!」
「叫ぶ元気があってたいへんよろしい」
満足げに頷いているがなにもよろしくはない。
「はあ……とりあえずゴム手袋貸すからゴミ拾いなさいバカ!」
とりあえずこのゴミ片づけないと、いつ近所からクレームが来て店長にどやされるかわかったもんじゃない!