ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染がしっとり激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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第10話

 

「いくら頭に羽が生えてようと兎は兎、寝てるときは巣穴にいるでしょ?」

「おお、確かに」

 

 ふふん、とボクは鼻を鳴らしながら鉄扇で仰ぐ。

 

「巣穴にいる奴を襲えばぴょんぴょん跳ねることもないし安全ってわけ!」

「かしこい、天才、パチパチ」

 

 みなまでいうな! みなまでいうな!

 なんて完璧な作戦なんだろう、自分で自分が恐ろしいよボクは!

 

 協会で拾った冊子にあの羽兎の生態から学名まで書いてあるのだが、何より特徴的なのは巣穴だ。

 羽兎は穴を掘るのが不得意らしく、多くは高いところにある木のうろに住んでいる。

 しかしそれが見つからず仕方なしに掘った巣穴のほうは、入り口が大きくて中がほぼ丸見えらしい。一応気分程度に草や枝で覆ってあるようだが……人の目からしたらむしろそっちの方がまるわかりってわけだ。

 

 そう、ならこの穴を突撃してやればボク達の勝利は目前なり!

 

「よーし、さっそく探すぞ~!」

「お~」

 

 右へ、左へ、うーんさっぱりわからん!

 

 ずんずこと森の中を進みながら探索する事十数分、目的としていたものはまるきり見つからなかったのだが、一つやたらと目立つ物をボクは見つけた。

 金髪だ。目立つ長い金髪がもそもそと、小さく何かを呟きながら新緑の中で動いている。

 

「お、ボクたち以外の探索者初めて見たカモ」

「土日は多いらしい、受付の人が言ってた」

「あーなるほどねー、やっぱり探索専業は少ないのかぁ」

 

 にしても珍しいなぁ。

 他の探索者と出会うこともそうだし、なにより金髪なんて外国の人だろうか。

 ダンジョンに入れば角とかケモ耳は生えてこれど髪色は変わらない、そう考えれば中々レアな出来事かもしれない。

 

 あ、そうだ!

 

「ねね、あの人に話聞いてみようよ! 一人でダンジョンに入るくらいだしボクたちより色々知ってるかも!」

「えー……」

「いーじゃんいーじゃん!」

 

 興味なさそうにする輝良の腕を引っ張りボクは駆けた。

 あんなに地面にはいつくばっている辺り、おそらくあの人もボクたちと同じく巣穴を探しているに違いない。

 何か巣穴を探すコツを知っていたら御の字、仲良くなれればいろんな情報をやり取り出来て万々歳だ。

 

「えーっと……どうするんでしたっけ……確かここを……」

「あのー」

「あっ、そうでした! 確かここに説明書が……」

「あのー! すみません!」

 

 ピクン! と長い耳(・・・)が跳ねた!

 彼女は目をまん丸にして大きく飛び跳ねると、ボクより頭一つか二つは大きい体を縮め込ませて勢いよく後ずさりする。

 

 ぅえ、身長でっか。

 

「どひゃぁ!?!?」

「あっ、すみません驚かせるつもりは」

「ひぃぃぃぃ!! ニンゲン!!」

 

 アンタも立派な人間でしょうが。

 

 わたわたとその場で妙なダンスを踊っている彼女を、じぃとよく見てみると中々面白い服装をしている。

 コルセットをしめて簡素なスカート姿なんてなかなか見ない、どこかコスプレみたいな容貌だ。

 

 へー、雰囲気あるなぁ。

 ダンジョンの中で耳が長くなってるのもあってエルフの王女様って感じ。

 

「ひぇぇ! ごめんなさーい!!」

「あ、ちょっ」

「悪いことはしてないんですー!! いや皆さんにとっては、いやその……ごめんなさーいっ!」

 

 呼び止める間もなく、何か色々叫びながら彼女は踵を返し走り出した。

 ボクの言葉なんて一言すらも耳の中に入ってないんじゃないか? なんて疑う必要すらないくらい、すがすがしいほどの逃げ腰だ。

 

「へぶっ」

 

 あっ、転んだ。

 

「ひぃん……ごめんあさぁい!」

 

 何か叫びながらさらに二度ほど転び、彼女は森の奥へと消えていった。

 

「なんだったんだろ……」

 

 見た目は清楚でちょっと神聖さすら感じるエルフだったのに、滲み出すポンコツの雰囲気が全てを呑み込んでいった。

 

「ただのアホ」

 

 スポーツドリンクを飲みながら輝良がきりりとした顔で呟く。

 

「あんたは人の事言えないからね?」

 

 深々とため息をつき、ボクもリュックから水筒を抜き取って一口つける。

 

 わたわたと騒がしかっただけで、結局何の情報も手に入れることが出来なかった。

 これじゃ輝良一人で戦ってた方が何倍も楽だし輝良も楽しめる、おとなしくさっきみたいに外にいる奴を刺激するべきなのか……?

 

「ねね、りつ、りつ」

「どうしたの?」

「ここ、うさぎの巣穴」

 

 つんつん、と輝良が竹刀で地面を突っつく。

 枝や葉っぱに隠されているがなるほど、確かにそれは本に乗っていた巣穴そっくりの姿だ。

 

「えっ、やったじゃん輝良! ナイス!」

 

 こうなってたのかぁ!

 ちょっと舐めてたけどなるほど、確かにこれは分かり辛い!

 でもよく考えるとここに来るまでに何個か同じものを見かけた気もする、もしかしたらあれも巣穴なのかな?

 

「よーし、じゃあさっそくボクが!」

 

 鉄扇を握り意気揚々と巣穴を覗き込む。

 

 さっきまで全く役に立たなかったボクだけど、流石に巣穴にいる奴を襲うくらいなら出来るに決まってる。

 まあちょっと……生き物? なのか分かんないけど、モンスターを殴るのは少し気が引けるけど……これからダンジョンに潜らなくちゃいけないわけだし、これくらいは出来るようにならないと!

 

 えーっと、どれどれ?

 

「んー?」

 

 なんだか薄暗くて良く分からない。

 兎はどれも白いし、それに巣穴も浅いから簡単に分かるって書いてあったんだけど……?

 

 その時、視線の端で何か素早いものが動いた。

 

「あっ、あぶない」

「おわっ!?」

 

 ぐい、と背負ってきたリュックが勢いよく引っ張り上げられた。

 

「てて……ちょっと、なにすんのさ輝良」

 

 お尻を撫でながら立ち上がり、文句を垂れてやろうと前を見ると――

 

「あばばばばば」

「輝良!?」

 

 ――輝良が地面にうつぶせてびったんびったん震えてた。

 

 その横を静かに、鋏だけでボクの拳くらいはありそうな大サソリが巣穴から這い出す。

 

「な、なにこいつ!? 輝良! ねえ輝良大丈夫!?」

 

 こんなモンスターがいるなんて聞いてない!

 いや、よく考えれば一つのダンジョンにモンスターが一種類だけなんて限らない、もしかして次のページとかに書いてあった……!?

 それにこれ、サソリに刺されたってこと? つまり毒!?

 

「ど、どうしよう……!」

 

 きら、しんじゃうかも。

 

 頭が熱い。

 指先が冷たい。

 

 どうしたらいい? どうしたら……?

 ダンジョンの外に引っ張って連れていく? 間に合わなかったら? そもそもダンジョンのモンスターの毒なんて対処できるの?

 

 ボクのせいだ。

 ボクがぼーっとしてるから、いや、そもそも昨日一緒にダンジョンに行くなんて言ったから……!

 

「っ!」

 

 のそのそと歩くサソリが横たわる輝良へ近づく。

 その鋭く太い毒針を上へ掲げ、もう一刺しせんとばかりに小さく震えている。

 

「このっ!」

 

 これ以上はさせない!

 

 鉄扇を硬く握りしめ大サソリへ駆け寄る。

 あちらもボクの剣幕に危険を感じたのだろう、その大きさからは信じられない身のこなしで後退し、同時に素早く尻尾を伸ばしてきた。

 

「っ、だからなんだっての!」

 

 ぶつり、とボクの腕に針が突き刺さった。

 何か生温い液体が流れ込んでくるのを感じる。

 

 キモチワルイ。

 

「でも逃がさないっ!」

 

 そのままボクは片腕で尻尾をガシリと握り掴み、思い切りサソリへと駆け寄った!

 なおも抵抗し大きなハサミで脇腹を狙って来たものの、その手に持った鉄扇を力強く左右へ叩き付けると、それはまるでおもちゃのようにポロリと引き千切れ地面へ転がる。

 

「っ、これでトドメ!」

 

 自分でも信じられない身のこなしだった。

 吸い込まれるように振り落とした鉄扇はサソリの頭上を打ち抜き、奴は一つ大きく震え、そしてゆっくりと砂と化した。

 

 何もなかったかのように転がる魔石、そして千切れて残った二つのハサミだけが静かに地面へ転がる。

 

「っ、きらっ!」

 

 荒い息もそのままに今もなお痙攣している輝良へ近づき、ボクは呆然と立ち尽くした。

 

 どうしたらいいの?

 毒は傷口から吸い出す? やり方なんて知らない、どうやって?

 

 どうにかしなくちゃいけないのに、ただパニックになった思考に脳が埋まったまま輝良を抱き上げ――

 

「あの……」

 

 背後から、突如声がかかった。

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