ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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第11話

「味が濃い~! 美味しいです~!」

「ボク人生で『味が濃い』を美味しいの感想で使うの初めて見たよ」

「味は濃ければ濃いほどいい」

 

 目を輝かせてカツサンドをパクつくミカをしり目に、ボクは自分のミルクティーを一口含む。

 

 この子、さっきまでダンジョンの危険性について熱心に語っていたと思ったら、今度はただのカツサンドごときにここまでウキウキなんてすっごいちぐはぐ。

 まるで初めて遠足に出た小学生でも見てるみたい。

 輝良も大体渡せばなんでも喜ぶけど、このミカはさらに一段階大げさだ。

 

 少し飽きてきたイチゴのフルーツサンドを手渡すと、彼女はソースでべたついた手のままそれを頬張り、瞬く間に再び目をまん丸へと変えた。

 

「こ、これは! あまーい雲を食んでるみたいですねぇ!!」

 

 すごい勢いで口をもぐつかせ、指先へついたソースを名残惜しくなめとり目を細める彼女。

 

 ただのフルーツサンドに大げさな。

 渡せば大体なんでも喜ぶなんて、まるで子犬の餌付けだ。

 あれも、これも、なんてまあ助けられたお礼もあって持ってきたものを与えていたらあっという間に時間は過ぎていった。

 

 すっかりおなかが満たされた三人でぼーっと森の風景を眺めていたおり、ふと思い出した疑問を口にする。

 

「ねえ、魔法ってどうやって使うの? ボクたちダンジョンの事何も知らなくて……」

「魔術、です! 魔術!」

「はいはい魔術ね」

 

 近い近い! 顔がちかぁい!

 

 両手を握りしめふんふんと鼻息荒く寄ってくるミカ。

 この魔法と魔術のこだわりは何なんだろう。

 

「こう、ぐーっとやってですね」

「うん」

「周りの妖精さんにほわわーってお願いを伝えたらできます!」

 

 ??????????????????????

 

「は?」

「なるほど」

 

 え? は?

 なんで輝良はそんな、なるほど~、みたいな感じで耳ピコピコしてんの?

 

「なるほどじゃないでしょ!」

「でも大体わかった」

「何一つ! これっぽっちも全然わかんないよ!」

 

 あーもう! これだから天才型は!

 

「じゃあさっそく」

 

 すくりと立ち上がった輝良が両手を胸元で合わせ、なにかむむむ、とつぶやきつつ集中を始める。

 ゆらゆらと揺れる尻尾、そしてその様は中々堂に入っていたが、いやはやまさかそんなほいほい出来るわけない。

 

「そう! その調子ですよ!」

 

 ……出来るわけないよね?

 だってボクたち魔法とか一回も使ったことないよ!? そんな、あんなカスみたいな説明で誰しも魔法を使えたら、今頃現実はファンタジー世界さながらになってるよね!?

 

「……ん、今はまだできないみたい」

 

 しばらく唸っていた輝良だったが、しゅん、と項垂れて集中を解いた。

 

 ……だよね!

 流石にそんな一発で出来るわけないよね! いや全然疑ってなかったけど?

 

 いつの間にかいていた冷や汗を拭い胸をなでおろす。

 

「惜しかったですねぇ、まだ魔力が上手く練れてないみたいです」

「これボクがおかしいの? うそでしょ?」

 

 逆に今の魔力多少なりとも練れてたの!?

 というか魔力ってそんな分かるもんなの!? そんなの体内に感じたこと一度もないんだけど!?

 

 この二人の会話を真面目に聞いていたら頭がおかしくなりそうだった。

 何より恐ろしいのは、おそらくこの会話は何も嘘など混じっていない、純粋に彼女らが感じ理解し合っているところだ。

 これはボクの才能不足が招いた結果なのか? それともシンプルな理解力不足なのか? それは誰も分からない。

 

「あー……さっぱり意味わからん」

 

 ただ一つボクが理解したのは、理解を諦めるということだった。

 

 ボクはアホ面で自分のポケットをまさぐりスマホを取り出すと、この混沌とした状況を収めんとばかりにミカへと画面を突き付ける。

 

「ねえメッセージアプリのQR交換しない?」

「はい?」

 

 今度はあちらがぽかんとした顔。

 なぜ? なぜ今その顔?

 

 ミカはそのまま視線を上下に移動し、まるで珍妙不可思議な物でも眺めているかのように口を開け、指先を綿綿と動かし……どうにか、といった様子で一言を口にした。

 

「ぁーっと、めっせーじあぷり? は持ってないですねぇ……」

「え!?」

 

 どういうこと!?

 現代社会で必要不可欠でしょ!?

 

「あの輝良ですら一応入れてるのに!?」

「一応はおかしい、わたしはちゃんと使える」

 

 出来てなかったでしょ!

 

 あはは、と誤魔化すように笑うミカ。その横で堂々と胸を張る輝良。頭を抱えるボク。

 

 一体どういうことだ!?

 スマホを手放せば不安になる人間が九割以上いるんじゃないか、なんて現代に、歳の近そうな三人がこう集まって、そのうちの過半数がスマホをまともに使えない!?

 こ、この二人今までの人生どうやって歩んできたの!? いや輝良のは大体知ってるけども!

 

「普段どんな生活してんのよ……」

「ふ、普段なんて普通ですよぉ! 季節の山菜やキノコの塩蔵を仕込んだり、薬草を集めて街で売ったり……」

「もしかして江戸時代辺りからタイムスリップしてきた?」

 

 口から出てくる単語がイマドキ聞かない話過ぎる、ボクのおばあちゃんが確かそんな暮らししててたまに山菜とか送ってくれたけど。

 いや田舎の方ならまだ全然やってるのかな? 色々知らな過ぎなのも地元から出てきたばっかりとか?

 あ、だからダンジョンのモンスターへの対応とか危険性がしっかりしてたのか。イノシシとか熊が危ないのはボクでも聞いたことあるし。

 

「あ、あと最近はしょこ……」

「しょこ?」

 

 はた、と口の前に手を当てしきりに瞬きを繰り返すミカ。

 

「こ、こ……」

 

 しょこ……書庫?

 本屋でバイトとか? ああでもなんだか雰囲気合ってるかも、変なスイッチ入らなければ大人しい感じだし。

 

「こ、こんな時間かぁ! じゃあ私帰りますぅ、ごきげんよう~!」

「あっ、ちょっ!」

「い、忙しいなぁ~! やらないといけない事いっぱいありますからぁ~!」

 

 突然ミカが立ち上がって駆け出す。

 あまりにいきなりの事だったのでボクは手を伸ばす暇もなく、森の奥へと一目散にかけていく彼女の姿を見送ることしかできなかった。

 

「なにがなんだかさっぱり……」

 

 理解できず唖然とするボクの横で、輝良は足元の草をぶちぶちと引っこ抜き草笛を吹き始める。

 今目の前であったことなどさして興味がないようだ。

 

「ん、変な人だった。多分地球人じゃない」

「あんたも普段の行動あんま変わらないからね?」

 

 ぷぴー、なんて気の抜けた草笛が返事代わり。

 

「結局アカウントも電話番号も聞けなかったし……」

 

 ダンジョン。

 イメージからすればゲームそのものでも、ここも山や海、森と同じある種の自然の姿なのかもしれない。

 様々な環境を冒険するならたとえそれが楽しいモノであっても、同時に怪我などの対策も怠ってはいけない。それはダンジョンでも、普通の山を散策するときだって変わりはしないのだから。

 それを気付かせてくれて、そして助けてくれたミカには感謝しかない。

 

「~♪」

「またどっかで会えるかなぁ」

「~♪ ~♪♪」

「まずは緊急用のキットとか遭難対策とかの準備からだね、専門店探せばあるかな?」

 

 今日は早々にダンジョン探索を区切って探しに行こう。

 

「~♪ ~♪」

 

 ボクも輝良もケガをしてからじゃ遅いんだから。

 呑気にボケっとなんてしてられない、次もミカみたいな助けが来てくれるなんて限らないんだ。

 

「~♪ ~♪♪ ~♪ ~~~♪♪ ~、~~~♪」

「あーもう草笛うるさい!」

 

――――――――――――

 

モンスター図鑑

ダンジョンオオサソリ

学名 scorpius magnusforfex

体長 成体で80センチ程度、爪は20cmに及ぶ個体も

 

羽兎の巣穴を占領する形でダンジョンに住みつく大型のサソリ、羽兎の天敵

普段は穴の中に潜み、巨大で堅牢な爪を前に出す形で侵入者を防ぐ

夜になると這い出し、他の巣穴の子ウサギを狙うことによって食事を行っている

牙と尾に弱いタンパク質性の麻痺毒を持っており、毒性そのものは弱いが体格の分注入量が多いため、人間でもうっかり刺されると即座に一時間ほど動けなくなる(刺された直後に熱湯へ患部を入れるなどで対策は可能、ダンジョン内では対処が困難)

節足動物の例にもれず血中成分はヘモシアニンの青色を呈し、一方で血中には魔力や麻痺毒の元となる成分が存在するため単純な青色ではなく、ラメが入ったように見える

遥か昔、この血から作り出される特殊な青色顔料の奪い合いになった国も存在する

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