ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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第13話

「まずこれをこう握って、足に当ててボタンをぐっと押し込む!」

「ふんふん」

 

 自他ともに認めるウルトラ機械音痴にしては珍しく、スマホに張り付いていた輝良がこちらをちらりと見て頷く。

 ボクは手にした注射器……いや、分かり辛いし回復薬でいいか、回復薬を自分の太ももへぴったり押し付け、彼女へと教わった通りに使い方を語る。

 

「これだけで使えるから、もし何かあったらためらわずに使う事! わかった?」

「分かった、りつが危なかったらすぐ使う」

「ボクだけじゃなくて輝良が危なくても使うの!」

 

 まったくもー聞いてるんだか聞いてないんだが全く分かんない!

 命を守る大事なアイテムだっていうのに! ……まあ輝良はどうせ理解してるから大丈夫か、実は無駄に頭いいし。

 

 口をとがらせながらボクは梱包材を細かく切っていく。

 そう簡単に壊れるとは思わないけど、ま、何事も準備が大事っていうもの。

 

「折れないように一本ずつプチプチで包んでおくから、リュックの中に全部セットで入れておくからね!」

「らじゃ~」

「ちゃんと分かってるんでしょうねアンタ……」

 

 風呂上がりで濡れた髪もそのままにスマホにかじりついてる彼女へため息。

 ボクは片手にドライヤーを握りしめ、ひょいと後ろからその手元を覗き込んだ。

 

「ふんふん」

「さっきから何見てるの?」

「うぇぶ版モンスター図鑑、協会公式」

 

 協会そんなんも管理してんのね、ほんとダンジョンの事なら何でも手出してるんだ。

 

 次から次へ更新されるページ。

 推奨レベルごとに表示されているようで、一瞬だったが羽兎の画像が長い文章と共に消えていった。

 

「あっ、コレ今日のサソリじゃん」

「ダンジョンオオサソリ、学名scorpius magnusforfexだって」

「がくめ……なんて?」

 

 輝良の指先がぴたりと止まり、じいと読んでいる文章の上、添付された画像をボクも見てみればなるほど、これもまた今日出会ったモンスターの一匹のようだ。

 あの超大型のサソリ、広く知られた名前でダンジョンオオサソリと、まあなんともあんちょ、分かりやすい名前を冠している。

 

「あれ? ミカって別の名前で読んでなかったっけ? ボクの勘違い?」

 

 アナホリ? いやアナトリ、だっけ? んー、探索者の間で使われてる俗称みたいな感じなのかな?

 ま、いっか。

 

 再び視線を輝良のスマホへ向けると、今度は生態についての調査結果なども書かれているらしい。

 オオサソリは羽兎同様、特に低レベルとして指定されているダンジョンにはかなり多く分布しているモンスターらしく、大分詳細に書かれている。

 どうにも羽兎の、それも地面に掘られた巣を乗っ取る性質があるようで間違って刺される探索者も多いとのこと。

 

「あぁなるほど、だから昨日ウサギの巣穴の中にいたのか」

 

 ついつい顔に浮かぶ渋い表情。

 まさに初心者の罠って感じで、ボクたちも完璧にその罠にドはまりしてしまっているのだから笑えない。

 

 でも逆に動きはさほど速くないらしい……ってもその見た目からしたら大分速かったんだけど。

 ただ思い返してみれば、ちょっと必死になっていたからあやふやだけど、輝良が倒れて焦ったボクが思い切り殴って倒せたわけだし確かにそうなのかも。

 

「とりあえず名前を付けたって感じのモンスターが多いね」

 

 なんだかいろいろ情報が載っていて面白そうなのでボクも自分で調べてみたものの、実態はそう目を見張るほどではない。

 レベル帯としては大体100くらいまでだろうか、輝良がたった一日で13レベルとかになったのを考えるとそう高いわけではなさそう。

 

「ダンジョンが見つかってから五年程度、これだけ分かってるだけでも十分」

「確かにそんなもんか」

 

 モンスターって倒したら消えちゃうし、ダンジョンの危険度ってそこら辺の自然と比べたら全然上だろうし、言われて見れば観察って大変だよなぁ。

 オオサソリだって後ろから刺されたら全く動けなくなって危険だろうし……む、そう考えると逆にすごいのか?

 

「む! むむ!!」

「うぇ!? どうしたの!?」

 

 ダンジョンって本当に何も分かってないんだなぁ、なんて考えていたところで、突然輝良が興奮したように飛び上がった。

 

「ないしょ、明日になったらわかる」

 

 にんまりとした珍しい笑み。

 なんだかろくでもないことの気がするなぁ。

 

.

.

.

 

 

「りつ、サソリの巣穴あった!」

「おっけー!」

 

 輝良がぶんぶんと手を振る穴の前へ駆け寄り、ボクは自前の鉄扇を硬く握りしめた。

 

 彼女が自前の竹刀の先へ枝をつけ、穴の中へとフリフリ揺らしたその瞬間、黒く大きな影が飛び出した!

 しかしすぐにそれが獲物ではないと気付いたのだろう、そして周囲のボクたちを見つけ一直線に駆け出す!

 

「ほりゃ!」

 

 ためらいなく竹刀をぶん投げ、素早い身のこなしで輝良がその尻尾を握り掴んだ!

 

「りつ!」

「う……よ、よし! えいっ!」

 

 尻尾を封じられた直後、彼女の胴体を掴もうと襲う二つの爪。

 ボクは開かれた鉄扇の薄い刃を関節へと突き立て、思い切り振り払った!

 

 バツン!

 

 恐ろしいほどあっけなくちぎれる片爪。

 昨日は思い切り殴ったら切れたが、今日はことさら簡単だった。

 

「りつ気を付けて! もう片方も!」

「う、うん!」

 

 サソリとてさるもの。

 片方は半ば自切の様な物だったのだろう、ためらうことなくもう片爪をこちらへ振りかざしている!

 でも落ち着いてみれば――

 

「――けっこう遅い!」

 

 さながら返す刀。

 燕返しとばかりに歯を食いしばり鉄扇を振り回すと、もう片腕も強い抵抗と共に地面へと転がった。

 

 輝良はそれを見て満足げに頷くと、尻尾を掴んだまま体をぐるりと強くひねり――

 

「ほあちょ!」

 

 映画さながらの回し蹴りでサソリの脳天を蹴り飛ばした!

 

「おつかれ~、いぇい」

「いえーい、さすが剣道全一!」

 

 うーん、回し蹴りに剣道関係ないか?

 

 ぱちんとハイタッチ、同時にサソリが砂へと変わり小さな魔石を残す。

 そして……そこにはついでに、ちぎれた二つの大きな爪も転がっていた。

 

 ん、そう言えばサソリは消えたのに爪は残るんだ。

 思えば昨日もそうだったな、ボクがぶん殴って落とした爪は残ってたし……なんだかダンジョンって不思議。

 

「ねえ輝良、そう言えばあんたが言う通りの作戦で倒したけど……」

 

 完璧な連携、それには輝良が事前に準備していた作戦通りに動いたからだ。

 いってしまえばちゃんとした戦闘の初勝利、少しあっさりしているけどうれしい……が、はて、わざわざこんなことする必要があったのか?

 

 これ、別に輝良がさっさと蹴り飛ばしてたら終わってたんじゃ?

 

 ふと浮かんだ疑問をよそに輝良は、ぷんぶんと尻尾を振りながら落ちた爪を両手で拾い上げ、ライオンキングさながらに大空へとその二つを掲げた。

 

「最高級の食材をげっとだ~!」

「んぇ?」

 

 ふりふり尻尾を振りながら自分のリュックを漁り、一体いつ用意したのやら、小さなトンカチを片手に、もう一方はサソリの爪を手にこちらへ振り向く。

 ボクの脳天を鋭い電撃が駆け抜けた!

 これは人生で何度も直観したことだ、主に輝良がなんかよからぬことをしようとした時に!

 

「ま、まさかアンタ……」

「これはカニのおさしみ」

「なるわけないでしょ! 見た目だけだよ似てるの!」

 

 ウキウキの顔で二つをフリフリして小さく小躍りする姿にボクは絶叫した。

 

 いやああ!!

 何考えてんのアンタ!? 昨日そいつにぶっ刺されてアンタ死にかけてたんだよ!?

 いやそもそもモンスター食べようとか正気!? そんなおなか減ってるなら持ってきたバターサンドあげるって! い、いやそれで足りないならとっておきのマカロンも! 家に帰ったらいくらでもご飯だって作ってあげるって!

 

「ぷりぷり、カニあじだって」

「カニだったらカニ食べればいいじゃん―!!」

「こんな爪おっきいカニはタスマニアンキングクラブだけ」

 

 たすま……? なに!? なんの話!?

 

 混乱するボクをよそに輝良は適当な岩の上へ爪を置き、バッコンバッコンぶん殴って殻をむいていく。

 そして取り出したうっすら青い体液に濡れた中身をにっこにこでつまみあげ、こちらへと見せつけた。

 

「りつは醤油味とそのまま、どっちがいい?」

「どっちもいや!」

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