ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染がしっとり激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~ 作:IXAハーメルン
長く苦しい戦いだった……主に飽きという面で。
巣穴からサソリをおびき出す、ボクが爪を切る、輝良が倒す、サソリをおびき出す、ボクが爪を切る、そして輝良が倒す、時々輝良が爪を食べようとする、それを止める、そしてサソリをおびき出す。
一日目は何のその、二日目は慣れてスムーズで快適、しかし三日目以降となればそれはもはや変化もない。
どこへ行こうと大して変わらない森の見た目といい、休日を結構入れたりしたとはいえ、二週間近く同じところ通ってりゃまあそりゃ飽きるよね。
「ついにボクもレベル20台に突入か……!」
血圧計じみた機械から腕を解放され、ボクは腕をぶんぶんと降りながら感動に打ち震えた。
今まで通っていた『羽兎の箱庭』は推奨レベルの上限が20前後、つまりボクはようやくあのダンジョンからさらに一歩踏み出せる領域へやってこれたというわけだ。
「ん、よくがんばってる。えらいえらい」
「うんうん……って」
ボクは横の計測器にデカデカと映し出されている数字、そう、34という数値を睨みつけた。
「あんたはもう30超えてるでしょうが」
「でも三日前からレベル変わってない」
「まあそうだけどさ……」
ほんと不思議なくらい輝良のレベルアップは早い。
スライムのダンジョンはまだわかる。一人で突っ走っていった輝良は、多分ボクの比じゃないくらいにスライムを倒していただろうし。
でも今回のダンジョンはほぼ完全に同じ相手を、同じ数だけ倒してったはずなのに……トドメ刺しとかで変わってくるのかな?
まあしかし、ボクですら飽きてたんだから、ただでさえ飽き性な輝良はたまらなかったのだろう。
ダンジョン内で何度あくびしているのを見たか分からない。
「よっし、そろそろ次のダンジョン探してみよっか!」
「え!? ホント!?」
「ほんとほんと、もーサソリ見るのはうんざりだよー!」
夜の物音すらサソリの足音に聞こえるくらいには限界だ。
さっさと装置から立ち退いたボクは、壁に備え付けの冊子を片手に硬いベンチへとどっかり座り込む。
「えっと、ボクたちのレベルから考えると……50レベルが上限くらいかな」
足組み、解放感から自然と鼻歌混じりにページをめくっていくと、以前では飛び込むこともためらわれたダンジョンが色々と見えてきた。
ふむふむ?
スライムの別体系……は似たような感じだし、ゴブリンだとかオーク系……うーん。
「動物系のモンスターが多いところはなぁ」
ダンジョンで戦ってる時点で何をいまさらって話かもしれないけど。
爬虫類っぽいモンスターならまだ……うーん、それでも少し気が引けるし。
選択肢がないならともかく、ほかに同じようなレベル帯があるならわざわざ選ぶ必要もないよなぁ。
「あっ」
とあるページがボクの目に飛び込む。
推奨レベルは丁度20から50。なれた羽兎なども生息はしているようだが、特にメインとなるのは植物系のモンスター。
「『大西地区特定植物園』、だって! ここにしようよ!」
場所はここから電車で三十分、もちろん輝良のスクーターでも余裕で行ける距離だった。
◇
「おっとと……」
「ん、気を付けて」
どっと冷や汗があふれ出し、ボクはひどく揺れる足元へ集中した。
お父さんお母さん、ボクは今切り立った断崖絶壁に掛かった吊り橋を歩いています。
滑ったら普通に死にます、たすけて。
「植物園なんて大ウソじゃん!」
「りつ、あばれないで」
「ひぃ~……」
縄のきしむ音に精神を削りながらボクは足早に……移動できるわけもなく、のろのろとつり橋を移動した。
『大西地区特定植物園』
名前からしてもなんだかのんびり見れそうな植物園があるのかと思いきや、ダンジョンの門を抜けた先には無数の切り立った山々がそびえたっていた。
その山々の間をいったい誰が建てたのか、無数の吊り橋が立っており、その上をどうにか歩いて移動するのが子のダンジョンらしい。
「し、死ぬかと思ったぁ……!」
バクバクとなり続ける心臓を抑え、ボクはようやくたどり着いた
え? これ最低でもあと一回戻るときに歩かないといけないの?
さっきわたってるときとか底見えなかったんだけど? こんなちんけなつり橋にボクは命をかけなくちゃいけないわけ? マジで?
「大冒険、映画みたい」
「……下手したらあの世まで冒険することになるけどね」
ケガしても回復薬があるからあんしん~……じゃない!
即死だよ即死!
だが輝良は底すら望めないつり橋すらなんのその、しゅるりと背負った竹刀を引き抜き意気揚々と歩きだしている。
「じゃあさっそく探そう」
「ま、まってよー……もう少し休もうって……」
うへぇ……テンション高すぎだってぇ……!
ざくざくと進んでいかれてしまえば仕方ない、ボクとて慣れない環境は心細いのだ。
項垂れながら、進んでいく彼女の背中を必死に追う。
「えーっと、確かマンドラゴラがいるのは湿って薄暗いところだっけ?」
このダンジョンにはいくつかのモンスターが確認されている。
基本となるスライムや羽兎、また山の下の方にまで下りればイノシシ系のモンスター。
だが今ボクたちがいるここいらにいるのは植物系と呼ばれるモンスターで、特に数が報告されているのはマンドラゴラと呼ばれる奴らだ。
だがボク達が立つこの場はむき出しの岩ばかり、生えているのは小さな植物ばかりで日当たりはばっちり。
ってことは逆にネットの図鑑で調べてきた情報とはかみ合わない。
「ここら辺は結構日当たりいいしなぁ」
「んぉ……あそこ」
きょろきょろ探していたボクの横で輝良が指を指した。
「あー、洞窟かぁ!」
岩と岩の間に存在する隙間。
いったいこんな環境のどこに、なんて思っていたが、確かに洞窟の中は程よく湿気が保たれて丁度いい。
「じゃ、さっそくいく」
「あ、ちょっとストップ!」
「ふぎゅっ」
意気揚々と飛び込まんとする輝良の尻尾を握り掴む。
変な声を上げて飛び跳ねた彼女の視線に笑いつつ、ボクは足元の程よいサイズの石を握りしめた。
「もーサソリみたいなのはトラウマだからさぁ」
脳裏を過る嫌な記憶。
最初、羽兎の巣穴を狙ったボク達は、巣穴を奪い取っていたサソリに中々ひどい目にあわされた。
ダンジョンそのものの危険性を甘く見ていたことは言うまでもない、だからこそ今度はもっと警戒して行動しなくちゃ。
ちらりと顔を覗き込み洞窟内を確認。
薄暗く奥まで続く洞窟のその先、案外そんな深くなさそうで、最深部には割れた天上から小さく日が落ちてるのが見える。
「ほいっと」
ここで安心するのは甘い。
ボクは足元の石をあちこちへ投げ、じっと耳を澄ます。
浅く地面へ転がる音、小さく吹く風、ボクの息遣い。
「……なにも、いないね」
「大丈夫大丈夫、いこ」
輝良がボクの手を握って奥へと引っ張っていく。
……まあ、大丈夫か?
植物系ってなんか大人しそうな雰囲気だし、見つけてもすぐには襲ってこなさそう。
だが洞窟にすっかり僕たちが入ったあたりだった。
ゴゴゴゴゴッ!
「な、何の音!?」
「分かんない、気を付けて」
突如心臓を揺らすほど大きな音が一帯へと響き渡った!
一体なにが!?
モンスター!? それとも地震かなにか!?
騒音は遠くから次第に近くへ、そして一段と大きな爆音とともに背後から小石の破片が飛び散った!
「これ……は……?」
どうやらそれは洞窟の外からだった。
恐る恐るボク達は入り口から顔を突き出すと、丁度さっきまでいた道を通る巨大な落石。
「うわっ、でっかぁ」
「運がよかった」
どうやら上の方のむき出しの岩、その一部が崩れて落ちてきたらしい。
いまだぱらぱらとぶつかる土くれを肌に感じ、ぶるりと身を震わす。
落石注意の看板なんてない。
自然の山むき出しの環境は、決してモンスターだけが危険な存在ではないのだ。
「ねえりつ、それ」
「ん?」
やれやれ、なんて汗をぬぐいながら再び洞窟へ潜ろうとするボク達だったが、足元に何か変わったものが転がっていることに気付いた。
ずいぶん大きい植物だ。
黄色い手のひら大の花を咲かせ、何より特徴的なのは大根のように大きく太い根っこ。
その根っこはまるで眠る赤ちゃんのように穏やかな笑みを浮かべている、そんな風にも見える凹凸があった。
あれ? これって図鑑で見たような?
「あ、まずい」
天使スマイルは一瞬で般若の顔に変わった。
すぅ、と植物にあるまじき深呼吸の音が耳を打ったと同時、
『ギョアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!』
『ほぎゃああああああ!?!?』
ジェット音の如き超絶爆音がボクたちを襲った!!!