ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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第17話

「ん……」

 

 あれ……?

 

「ボク……なにしてたんだっけ……?」

 

 なんだかすごく耳が痛い。

 それにすごいくらくらする。

 

 鈍痛に苛まれる頭、鈍った思考。

 急速に取り戻した意識が巡り、記憶が脳裏へと過っていった。

 

「そうだ……落石があって……!」

 

 マンドラゴラだ!

 たしか一緒にマンドラゴラが落ちてきて、しかもまるでこっちが悪いみたいな顔して大絶叫をかまされたんだった!

 

「やっば、何にもなくてよかったぁ」

 

 不幸中の幸いというべきか、痛む頭を押さえつつボクは胸をなでおろした。

 

 ダンジョン内、しかも初めて来るような場所で無防備に寝っ転がるなんてさすがにヤバすぎる。

 もし想定外のモンスター、肉食獣的な奴がいたら間違いなくお陀仏だった。

 

「っ、そういえばきらは!?」

 

 自分は無事だった、でも輝良は?

 もし輝良が先に起きてたら絶対にボクの横にいたはず。

 いないってことはまだ起きてないか、それともそばにいられない何かが起こった、しかない。

 

 慌てて飛び上がり周囲へと視線を向ける。

 

「りつ……」

「きら! よかっ……た……?」

 

 少しだけか細い声が耳の中に入り、思わず喜びの声を上げ振り向いた。

 

 良かった!

 すぐそこにいた!

 それに何かケガをしたわけでもないみたい、岩にもたれて……こっちをみていて……

 

きへーさへはった(寄生されちゃった)……しくしく」

「えぇ……」

 

 なんか、マンドラゴラが頭に生えてた。

 しかも結構太い根っこが全身に張り巡らされてて、岩に張り付いて動けなくなっていた。

 

「そうはならんでしょ」

.

.

.

 

 

「とりあえず……根っこからとってみる?」

 

 優しい風が吹き、輝良のケモ耳とマンドラゴラの黄色い花が穏やかに揺れた。

 

 何この状況?

 気のせいか輝良ももうなんか慣れてない?

 

「やさしくして」

「はいはい」

 

 どうやって切ったものか。

 ナイフを片手に思案するも正しい答えなぞ分かるわけもない。

 まあここらへんでいいか。

 

 さくっと、腕を覆っていた根の隙間にナイフをねじこみくるっと回してみる。

 

「うわっ」

 

 瞬間、さっきまでピクリともしなかった根っこが突如として一斉にこちらへ伸びてきた!

 

 うわキモっ!

 昔見たナマコが吐く内臓みたい!

 

「むーん、こりゃ無理そうだね」

「うええ……たすけて……」

 

 情けない声を上げて体をゆする輝良。

 

 ダンジョンに入る前に確認していた図鑑をスマホで再確認。

 どうやらマンドラゴラはこうやって気絶した獲物に寄生、しばらく栄養を吸ってから離れていくらしい。

 

「どれくらいでいなくなるの……?」

「大体二日だって」

「む~り~!」

 

 だよねぇ。

 ボクだって二日もまともな準備無しにダンジョン内へいたくないし、かといって寄生されてる輝良を放置も出来ないし。

 

 と、なれば必然答えは一つ!

 

「引っこ抜くしかない!」

「うぇ!? ま、まって……」

「待ったって答えは変わらないでしょ!」

 

 いやだー、なんて言いながら逃げようとするも、輝良の体は岩に固着していてまともに動けやしない。

 ボクはティッシュを軽く濡らして耳に詰め、輝良へずんずん近づく。

 いやいやと暴れるその耳へ、同じく簡易的な耳栓を詰め込んで気合いを入れた。

 

 マンドラゴラの絶叫は強烈だ、こんな耳栓まともに効果ないかもしれないけどないよりかはましだ。

 よっしゃいくぞっ!

 

「ふぬっ!」

「ギョ!」

「うぎゅっ」

 

 輝良とマンドラゴラのコンチェルト。

 こんだけ全身がんじがらめとなれば必然、恐ろしいほど強固に張り付いている。

 

「フヌヌヌッ!」

「ギョアアッ!!」

「ふんぎゅぁっ」

 

 少しだけ浮かんだと思いきや瞬く間に追加の根っこが伸びていき、輝良の耳や髪などをひっつかんで一層強くへばりつく。

 輝良の本来かわいいお顔もひっぱられてすごいことになっている。

 あー。

 

「あかん、これ無理や」

「しくしく……わたしの旅もここで終わりだね……」

「いや勝手に終わんないでよ」

 

 真顔で涙を流す輝良の横に座り込み、ボクは遠く青い空を見た。

 遠くを二羽の鳥が飛んでいく。白く輝く雲はのんびりと横切っていき、暖かな風がまたボク達の間をすり抜けていった。

 

 ……待つかぁ。

 それしかないし。

 

「ハムキュウリとたまごサラダどっちがいい?」

「たまごサラダ」

「へ、はへ」

 

 ぺりぺりとサンドイッチの包装を剥き、動けなくなっている輝良の口へ一つ放り込む。

 手も使わずに――まあ使えないんだけど――舌だけでうまいことサンドイッチを食べる輝良を見ながら、ボクもシンプルなハムキュウリのサンドイッチを口に運んだ。

 

 まるでモンスターに寄生されているとは思えないほど呑気な光景である。

 こころなしか輝良がご飯を食べてから、脳天の花も少しイキイキとしているように見えた。

 見えたからなんだって話でもある。

 

「――あとどれくらいでとれる?」

「二日くらい、これで十回目ね」

 

 まだ一時間も経ってませんよ輝良さん。

 

 隙あらば動き回っている輝良に二日松なぞ出来るわけもなく、すぐに彼女はこちらへと既に十度目となる質問を飛ばしてきた。

 

「むむむ……たいくつ。ねえりつ、しりとりしよ。りんご」

「ごはん」

「ンゴロンゴロ保全地区」

「くりきんとん」

「ンジャメナ国際空港」

 

 くっ、無駄に粘ってくるな!

 

「はっ」

 

 退屈そうにあくびしてすっかり黙りこくっていた輝良だったが、十分もしてから突然顔を上げた。

 岩に腰掛け首元に張り付いている根っこを観察していたボクは、彼女の何か強い意志を宿した瞳に気付き、一体どうしたのかと小首を傾げる。

 

「ん? どうしたの?」

「今ならいける気がする、まほー」

「えぇ?」

 

 いきなり何を言い出すのかと思えば。

 呆れてため息を溢すも輝良は気にせず、何か目を瞑ってすっかり集中を始める。

 

「むむむ……」

「そんな簡単に出せるもんじゃないって、調べたけどどんなに早くてもレベル100超えないと基本出来ないらしいよ?」

 

 魔法、いや基質。

 一応ボクだって噂のそれを使ってみたいとは思っていたし、ミカと出会ってから少しだけ調べてみたのだ。

 しかしどうにも基質にはいくつか段階があって、最低限の『基質励起』と呼ばれる段階、つまり対外的に何か魔法的なのが出るのですら、現状確認されてるのでもレベル100以上は必要とされている。

 

 もちろん何事にも個人差はある。

 誰もが小学生で逆上がりが出来るわけじゃない、むしろボクは今でもできない。

 とはいえ――

 

「でた」

「ウソぉ!?」

 

 輝良の正面で紫色に輝く炎が揺らめいた。

 

 本当になんか出てるー!?

 

「なんで!? アンタまだレベル30とかでしょ!?」

「てんさいなので」

「天才ってレベルじゃないでしょ!」

 

 協会に報告したら捕まって実験動物扱いになるんじゃないの!?

 

 輝良はそれを左右へヘロヘロと動かしていたが、少し強い風が吹いた瞬間にふっ、と消えてしまった。

 彼女はしゅん、と耳を垂らして虚空を眺める。

 

「あっ消えちゃった」

「操るの結構むずかしい」

 

 逆になんと無しに出して初っ端から操ってる時点で意味わからないけど。

 いきなりコントローラー渡されて、触ったこともないジャンルのゲームを普通に遊んでるようなもんじゃん。

 

「あっ、そうだ! なんか唱えてみたらいいんじゃない? ほら、漫画みたいな感じでさぁ」

「なるほど」

「たしか見たサイトでもそんなこと書いてあったよ、イメージが固まりやすいんだって」

 

 ボクのアドバイスを聞いた輝良はうぬぬ、としばらく唸った後、かっと目を見開いて叫んだ。

 

「基質れーき、『狐火(きつねび)』!」

「うわっ!?」

 

 ぶわっと突然紫の炎が広がった。

 それはまるで小さな爆弾みたいに、輝良を中心として一瞬のうちで広がって、真横にいたボクすらも呑み込んでしまう。

 

 うわやばっ!?

 暴走!? あつ――

 

「――あつくない?」

「なんかこの火、わたしの燃やしたいものだけ焼けるっぽい」

「うえ!?」

 

 いつの間にか横にいた輝良が手のひらの小さな炎を転がす。

 既に彼女に張り付いていた根は灰と化し、小さな魔石がケモミミの間から転がり落ちた。

 

 も、もしかして今の一瞬でマンドラゴラだけを焼いちゃったの……!?

 習得したばっかの基質励起なのに……!?

 

「すっご……」

「てんさいなので」

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