ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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「くちゃい……」

「あんたのせいでばら撒かれたゴミなんだからね」

 

 無表情でスクーターを引き、しくしくと自分の手を嗅ぐバカの横でスマホの画面を除く。

 本気で泣いているのか、それともふざけているのか? 多分涙を流しているから本当なのだろうが、それにしてはあまりに見た目がバカっぽい。

 

 無機質なデジタルが示す時刻は昼頃。

 なんでこんな時間に二人で歩いてきたのかって? あのままバイトをしたらこの馬鹿がずっと店内に居座るのが目に見えてるからね!

 絶対うろちょろして集中なんてできないんだからさ!

 

「だって……会いたかった」

「そんな顔赤らめてもいまさら何も感じないよ?」

「けちー」

 

 口を尖らせて路上の小さな石ころを蹴り飛ばす彼女。

 

 確かに輝良(きら)は昔から突拍子もない奴だった。

 クラスの男子の口の中におもちゃのブロックを詰め込んで泣かせたり、突然バンドを始めるなんて言って巻き込まれたり……ほかにも色々あって……

 

 なんか思い出したら頭痛ひどくなってきたなぁ、これ以上考えるのはきっとボクの体調に良くない。

 ともかくこの輝良という女、口調は言葉数が少なく落ち着いているし、クールできりっとした見た目なんだけど、どうにも中身は面白すぎて、おなかが痛くなってしまうほどに面白い人間だった。

 

 実家は剣道の道場をやっていたりで、厳しくしつけられているはずなのにいったいどうしてこうなってしまったのだろう、とボクは常々疑問を持っている。

 

「さすがに今回は相当お父さんに怒られるでしょ」

 

 幼稚園からの幼馴染ともなれば、流石に何度も彼女の実家へ足を運び、両親や妹と顔を合わせたこともある。

 特に記憶に残っているのはお父さんの方だ。

 剣道の指導者、なんてイメージを出力したら大体そうなりそうな厳しい面持ち、鍛えられた体は言うまでもなく少し怖く、威圧感のある雰囲気を纏っていた。

 ボクには普通のおじさんって態度だったが、幼いころから暴れ回っていた輝良をふんじばってしつけてるのは決まって彼だ。

 

 そんな人がやんちゃに一層磨きがかかってしまっている今の輝良を放っておくだろうか?

 

「パパは怒らない……」

「そうなの?」

 

 意外な返答に聞き返すと、彼女は涙でべちゃべちゃの顔をどや顔へと変え胸を張った。

 

「わたしのほうが強いから」

 

 まさかの下克上である。

 

「高校生になってから負けなし。わたし、最強」

「強かったら命令聞かないとか蛮族じゃん」

 

 現代人としての理性を失ってしまっている。

 

「ちなみにこれどこに向かってんの?」

「んー……じゃありつ、これ被って」

 

 突如渡されたのは二つ目のヘルメット、一体どこに隠し持っていたのか。

 言われるままに被りスクーターへと座り込むと、彼女はエンジンをフルスロットルに飛ばし、普段通らず知らん道をエンジン音と共に駆け抜けた。

 

「いやああああ!?」

 

 なに!?

 何が起こってんの!?

 風強すぎ! エンジン音うるさすぎ! なんも聞こえなさすぎっ!

 

「し、死ぬかと思った!」

 

 生まれかけ、いや死にかけの小鹿の様にプルプルと震える足で立った台地は、あまりに尊い存在だった。

 だが震える手でヘルメットを脱ぐボクをよそに、輝良はすたすたと目の前の建物へと歩みを進める。

 

「ちょ……ま……」

「ついた、いこ」

「話を聞きなさいな!」

 

 こっちは初めてスクーターに乗ったのにいきなり飛ばすなんて!

 なんか乗ってる最中言ってたけど、抱き着くのに必死で何言ってるか全く聞こえないっての!

 

「目的地はここ」

 

 輝良がぴしりと指を指した先には、高そうな黒く大きい石に何か達筆な漢字が彫り込まれている。

 

 えーっとなになに……?特定領域……超現実歪曲空間対策本部……及び調査互助協会、と?

 

「ここは特定領域超現実歪曲空間対策本部及び調査互助協会だよ」

 

 ははぁ、なるほど。

 

「あー特定領域超現実歪曲空間対策本部及び調査互助協会ね、なるほど」

 

 名前なっが。

 ダンジョン協会でいいじゃん。

 

 しまった、さっきのごたごたですっかり記憶から吹っ飛んでいたけど、そう言えば店に入ってきてすぐにダンジョン行こうだのなんだの言っていた気がする。

 

「うんうん、よし」

「え? ボク入らないよ?」

「え? そうなんだ」

 

 輝良ががっしりとボクの腕を握り、てくてくと歩き出す。

 

「いやいやいやいやいいって! ボク輝良と違って剣術とかわかんないし!」

「だいじょぶ、私はつよい。りつを守る白馬の騎士」

「蛮族の戦士の間違いでしょ! いーやーだーっ!」

 

 今度はがっつり腰へ手を回し歩き出した。

 

 白馬の騎士の癖に姫を攫うのか!

 王国の社会規範はどうなってるんだ!

 く、無駄に力が強くて逃げられない! いやーっ!

 

 

「ダンジョン入る!」

 

 開口一番、輝良は盛大な宣言をかました。

 

「すみませんこの子アホなんです、今すぐ帰るんで聞かないことにしてください」

「ダンジョン! 入るっ!!」

 

 入らんて!

 

「えーっと……あはは」

 

 ほら! 受付のお姉さんも困ってるじゃん!

 見なよあの愛想笑い! まためんどくさいのが来たなって、目が、全身が語ってるじゃん!

 

「二人とも未成年……ですよね?」

「これ、親の委任状。もちろんりつのもある」

「なんでボクのも持ってるの!?」

 

 一応両親二人とも常識的なはずなんだけど!?

 

 いやだいやだと駄々をこねるも、なぜか受付のお姉さんは苦笑いしつつボクたちを奥の部屋へと案内し、輝良の無駄に強い力で引きずり込まれてしまう。

 

 だって戦いだよ?

 危ないし、なにより汗かくし……絶対嫌だって!

 

「りつ」

「……なに?」

「おねがい。りつだけ、わたしと同じことやってくれるひと」

 

 両手をすくいあげしゃがみ込まれ、普段ボクより高い視線がウルウルと下から覗き込んでいる。

 さながら中型犬のような面持ち。

 

 えぇ~……いやぁ……だって……さぁ!

 

「……もぉ~!」

.

.

.

 

 

「許可証げっと~」

「ほとんどボク書いてないんだけどコレ許されるの?」

 

 一時間後、ボクたちの手にはピカピカの許可証が握られていた。

 ……おかしいな、結局輝良が勝手にどんどん紙に内容書いていって、気が付いたら全部終わってたんだけど。

 何かしらの法律に違反してない? 受付の人もなんか苦笑いしながら放置してたんだけど。

 

「あっこら、変なところにしまわないの。絶対輝良はこういうの無くすんだから」

 

 輝良がさっそく手に入れたばかりのカードをポケットの中に放り込んでいたので、慌てて奪いとって彼女のスマホの裏へとしまい込む。

 むかっしからこうやって何度も物をなくしてるってのに! まだ学んでないのか!

 

「ここに入れといたからね!」

「んぉ、おっけ」

 

 ちゃんと覚えてるんだよね!?

 そのまま全部忘れてカード無くしたとか言い出さないよね!?

 

「こちら初心者向けのパンフレットになります。カードの使用方法、注意事項や近隣でおすすめのダンジョンなど書かれていますので、必ずご一読くださいね」

 

 彼女から渡されたパンフレットは結構分厚い、50ページはありそうだ。

 ぱらぱらとめくると今分かってるダンジョンの軽い構造、魔石?とかいう倒したら出る石、その用途や換金方法についてだとか、結構重要そうなことが色々書いてある。

 

 これはちょっとしっかり読んでからじゃないと危ないかなぁ。

 というかモンスターって倒すとお金稼げるんだ。

 

「めざすは最上位ダンジョン! まずはドラゴンを倒しまくってドラゴンキラーになる! しゅっ! しゅっ!」

 

 一方輝良は既にパンフレットを丸めて振り回していた。

 

 こ、このバカ……! 思考回路が小学四年生男児過ぎる!

 

「行くわけないでしょ! 死ぬわアホ!」

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