ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~ 作:IXAハーメルン
「こっち、前はここからでた」
つり橋を乗り越え、ボクたちは再びダンジョンへ舞い降りた。
姿形はそう変わりはない。動きやすい服装と背負ったリュック、しかし抱えた武器だけがまるきり違う。
両手に握られた二つの鉄扇、そして一振りの太刀。
ついに注文した武器が届いた今日、ボク達はどちらがともなく準備を整えてこの場へとやってきたのだ。
「おー、確かに前の洞窟につながってるんだね」
「ん、じゃあリベンジ戦いこ」
輝良の案内で前回と少し違う場所へ足を踏み入れると、確かにそこにはもう一つ小さな穴があった。
奥を覗けばなるほど、確かにこの前と同じ場所につながっているらしい。
意気揚々と柄に手をかけた輝良だったが、その目前へ手を制し、ボクは一人で前へ進む。
「待って、ボク一人で行く。輝良はここで見てて」
「えっ……?」
「証明したいんだ」
一歩、前へ進んだ。
「今までの『お遊び』じゃないって、ボクだって一緒に戦えるんだって」
「ちが……あれは!」
あの日、輝良は今までのダンジョンは全部遊びだといった。
分かってる。それはきっとボクから離れるため、きっと危険に巻き込まないためについた言葉なんだって。
でも核心はついていた。
ボクが前に進めなかったら、きっと輝良はもう一度あの日と同じことを言うだろう。そして今度は、きっと止めることなんて出来ない。
だからこそ。
ボクは今、ここで、一人で戦えるんだって証明しなくちゃならない。
「もちろんヤバかったら助けてよ? ああ、前みたいに殴られる前にさ!」
「……ん」
「さって、まずは普通のマンドラゴラから……あった」
黄色い花が洞窟の中で揺れている。
疑問に思っていた。
輝良の『狐火』は確かに強力だ、当たればマンドラゴラも簡単に倒せる。
だがこのダンジョンの推奨レベルは30から50、多くのこのダンジョンに足を踏み入れた人間は当然狐火なんて使えないし、それならどうやって倒したんだろうって。
きっと答えはシンプルだった。
「よっと!」
ボクは青々とした葉をわしづかみにして、一息に地面から引っこ抜いた!
マンドラゴラの顔が即座に変わる。
憤怒。
焦ることなくボクはそれを地面へ叩き付け、その口元を思い切り踏みつぶした!
『――! ―――!』
「……すんなりだね」
かすかに叫びは聞こえた。
だが思い切り息を吸い込む前に止めたせいだろう、以前のそれと比べれば話にもならない。
ただ踏みつけるだけで、あんなに慎重に倒そうとしていたマンドラゴラはあっさりと無力化された。
実にシンプルな話だ。
両手の鉄扇を展開し、ギラリと輝く縁の刃を眺めながら、たった一か月前までの自分自身がどれだけ腑抜けていて、何も考えてなかった事実に自重する。
「ん? ああ、そういえばそういうのもやってたっけ」
叫びを諦め、即座に踏みつけた脚へと根を伸ばすマンドラゴラ。
しかし慌てることなくボクはマンドラゴラを蹴り飛ばすと、なおも絡みつく根っこを素早く切り飛ばす。
「させないよ」
即座に接近、息を吸い込まんとしたその喉元へ鉄扇を叩き付けた!
鈍い音と共に飛び散る植物片。
ステンレスで軽いとはいえ金属、それも骨組みから扇部までフルメタルとなれば威力は十分だ。
吹き飛び再び地面に叩き付けられ、しかしなおもまだ動こうとしているのには驚嘆だ。
「はい終わり」
ま、行動は許さないけど。
素早く近づき両手の鉄扇で切り裂く。
真っ二つ、いや三つに断たれたマンドラゴラはあえなく撃沈、魔石だけを残して消えていった。
ふっ――
「――お、おおおおおお! 倒せた! ボク倒せたよ!! いやったああああああああ!!」
か、勝った!
勝ったぞ!! このボクが! ちょっと前まで兎のキックに怯えてたボクが!
すごいぞボク! 偉いぞボク! きりっとしてたけどめっちゃ怖かったのにようやっとる!!
「すごい! かんぺき! りつてんさい!」
「いえーい! ぶいぶい!! マンドラゴラなんてチョロすぎてマジ余裕でウケル~って感じですよ~! ふぃぃ~!」
喜びもそこそこに、ボクは表情をきりりと引き締め前を向いた。
そこに広がるのは薄暗い洞窟。あちこちに咲く黄色い花の中に、二輪の白い花が咲いている。
そこに、奴はいた。
何事もないかのように。
「だがこれは序章に過ぎない!」
「おお!」
「まだ見てて輝良! ここからがリベンジの始まりだよ!」
緊張に手が震えた。
ここからが本当の戦い、本当のリベンジ。
静かに花の間を抜けていき、立ち止まる。
目前へと咲く純白の花へゆっくり手を伸ばし――
「よう、おひさ!」
ボクが選んだのは満面の笑みだ。
『キャアアアアアアアアッ!』
「うっさ」
空間が鼓動する。
まるで一つの生き物であるかのように、マンドラゴラたちは次々と地面から顔を出し、鋭い視線をこちらへと向けた。
おそらくこの白マンドラゴラ、いわば女王バチのような存在に違いない。
他のマンドラゴラはやられても無関心だが、こいつに危害を加える相手には全員容赦しない、実に分かりやすい動きだ。
「ほれ――行ってこーいっ!」
ボクは捕まえた白マンドラゴラを中空へと放り投げた!
んま、どうせすぐ白マンドラゴラ倒したところで、どうせ今目の前にいる奴らが逆上してくるだけだし。
「……来た来た」
白マンドラゴラが着地すると同時、周囲にマンドラゴラが大量に集まり、周囲の岩を次々にからめとって巨大な影を築き上げた。
張り巡らされた根っこはまるで筋肉の様だ。あっという間に岩の巨人、ゴーレムが再びボクの目の前へと表れた。
「へへ……でっか」
頬に汗が伝う。
たとえトレーニングをしようと実戦は初めて。それもかつて一度殺されかけた相手だ、そう簡単に恐怖は拭えやしない。
「りつ!」
「のーぷろぶれむ!」
重低音が地をかき鳴らした。
ゆったり、とはいえ巨体ゆえに大きな一歩でこちらへ寄るゴーレム。
落ち着け、動きは遅い。
今はただトレーニングで言われたことを考えろ。
「――リーチを意識リーチを意識リーチをいしきっ!!」
地面が弾け飛んだ。
ボクは危うく転がって土ぼこりから這い出すと、一瞬前にいた場所へ深々と拳が突き刺さっていた。
威力ヤバすぎ!
よくこの前のボクこれで死ななかったな!
「っ、リーチの意識!」
いつも通り逃げ回ろうとした足を止め、ボクはめり込んだ拳へと飛び掛かった!
そこにいるのは無数のマンドラゴラ、そいつらが根っこを互いに張り合うことで、いくつもの石を間に編み込み動かしている。
ならすべきことは――
「はっ、そりゃ!」
弱そうなところを切り裂く!
遠くから見れば巨影だったとしても、その編み込みには所々に穴が見える。
そこが関節のように動くことで移動をしているみたいなのだが、逆にそこに編み込まれた根っこは少なく、そして石は小さい。
鉄扇による素早い連続の切り裂きが根を切り裂いていく。
自重に耐えられなくなったゴーレムの腕先が、残った根と共にブチブチと千切れ落ちた。
「よし! かんぺき~!」
作戦勝ちですよ、ふふん。
チョロすぎですな。
心の伊達眼鏡をクイクイして、次はもう片腕でも叩ききってやろうか、なんて鼻息荒く鉄扇を構えたその時だ。
「うぇ!?」
なんとゴーレムさん、腕先を軽く近づけるだけで瞬く間に根が再生、何事もなかったかのようにのしのしとボクへ近寄ってきた。
「そ、そ、それはズルじゃん!! せっこー!」
こっちは腕とか切れたら泣きながら協会行かないといけないらしいのに!
そもそも切れたくないけども!