ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~ 作:IXAハーメルン
「おわ!?」
地面が弾け飛ぶ!
「どわ!?」
頭上をかすめ飛ぶ!
「ひぇ~!」
胸元を巨岩が凪ぐ!
距離感を一歩間違えれば、いますぐにでもあの世に飛んでいけそうな一撃。
ボクはそれを華麗に――悲鳴交じりで――避けつつ、両手の鉄扇を硬く握りしめた。
「……け、けっこー避けれてる!」
戦いの中で掴んだ直感、最適化されていく反射神経。
攻撃自体は直線的。
スピード自体は確かに中々なものだけれど、例えば途中で動きが大きく変わるなんてことはない。
ゴーレム単体で見れば個、でもその実体はマンドラゴラの集合体。思考の完全な統一とまでは行かず、細かな制御が効かないのだろう。
「おらおらっ!」
再び振り下ろされた一撃を避け、めり込んだ拳へ攻撃に転じる。
やはり容易く自重によって崩れ落ちる巨岩。
「~~っ! キリがない!」
――切り落とした巨岩が再び浮かぶ。
マンドラゴラたちの根によって再び絡めとられ、がんばって切った跡なんてないかのように元通りだ。
そう、問題は決定打に掛けること。
ボクは輝良みたいに基質励起なんて出来ない、つまり魔法的なことは何もできやしないってコト。
出来ることはただこの、おニューな扇子でペチペチぶっ叩くかスパッと切り裂くだけ。ボクはあの巨体を砕くにはあまりに非力だ。
マンドラゴラを一匹ずつ倒す?
さっきから頑張ってやってはいるけど、この全体からすれば小さな腕ですら、十、いや二十は下らない数が引っ付いてるってのに、一体あと何時間粘ったら倒しきれるかっての!
その前にこっちがぶっ倒れるのがオチだ!
……やっぱりボク一人じゃ無理?
どうしようもない?
走り回る中、刀を納めた輝良が視界の端に映る。
ただ眺めているわけじゃない。いつでも動けるように、決して意識は逸らさず、真っすぐボクを見ている。
まだ、見ていてくれている。
「……まだまだ!」
脚に力が満ちる。
避け、避け、避け続ける。
ただの逃げじゃない、何かヒントを得るための撤退だった。
切れる息もそのままにひたすら駆け続けるその中、大きくめり込んだ地面へいくつか、何かが輝いているのが視界へ映り込む。
黒色の小さな輝き、アレは――
「魔石?」
なんで魔石が?
きっとあれはマンドラゴラの魔石なのは間違いない。でもボクはまだ一体しか倒してない、なら?
……いや、もしかしたら!
「我ながらバカ度胸だなぁー!」
逃げから一転、一直線にゴーレムへと突撃。
そして真っすぐにその脚へとボクは抱き着いた!
「ひょぇぇ~……」
足踏みから生まれる強烈な衝撃が脳天を駆け抜けた。
しかしこちらとて必死、セミさながらの姿で岩へ引っ付いていると、ゴーレムはその巨大な拳を天へと掲げた。
――来る!
「どわーっ!」
振り下ろしの直前、ボクは一気に飛びのいた!
「へびゃっ」
そして転んだ!
痛い!
直後鳴り響く轟音。
慌てて起き上がり振り返れば、そこには大きく姿勢を砕くゴーレムの姿。
「やっぱり!」
砕け散った岩、そしてミンチになったマンドラゴラたちが飛び散り、砂となって消えていく。
「同士討ちも遠慮なしってワケだ!」
マンドラゴラたちは協力して巨大な岩を組み上げ、ゴーレムを動かしている。
しかしマンドラゴラそれぞれはあくまで根っこで繋がっているだけであり、その個体間に痛みなどの伝播は行っていない。
つまり考えや学びはなく、自傷をも恐れず常にフルパワーで暴れ回っているのだ。
故に、こぶしの先についていた、或いは攻撃の先、まだ地面に植わっていたであろう同族すらお構いなしで、思い切りぶん殴っている。
だからさっき地面に魔石が転がっていた。
「もらった!」
飛び散った連中の内、まだ消滅していない奴らを優先的に切り裂いていく。
動き回っているのならともかくこの状態なら処理はたやすい。右に、左に、次から次へと処理を済まし、再び立ち上がるゴーレムへと対峙する。
「おっと、そろそろラウンド2かな?」
随分不格好な見た目だ。
すっかり短くなった片足を必死に整え、歪な動きで再始動を始めている。
「りつ!」
輝良が柄から手を離し、大きく声を張り上げた。
「――勝てるよ!」
「知ってる!」
ふふん、気付くのが遅いね!
連続の攻撃で火照った身体を仰ぎ、パシャリと扇子を閉じる。
あれだけ大きく見えた
「ここからはワンサイドゲームだ」
攻略の糸口はもうわしづかみだ。
駆け寄ったボク、そして学ばず自分自身を攻撃するゴーレム。
行為を繰り返すほどにモンスターの巨大は砕け、関節は細り、根と根の結合は一層つたない物へと変わっていく。
気が付けばボクは、一輪の花の前に立っていた。
「……ああ、これで」
荒ぶる息。
前に突き出した鉄扇を握る腕には、一体いつ出来たのだろう、無数のスレ傷がついている。
脚だって、服だって同じだった。
『――キャアアアアアアアアッ!』
鋭い叫び、ボクはそれを止めない。
もう、それに付き従う兵はいないのだから。
叫び、叫び、それの喉はただ掠れた空気だけを吐き出す。
もう満足? そう。
「ボクの勝ちだ」
両断。
ごろり、と一回り大きな魔石が転がった。
「あ゛~! 疲れたぁ~!」
もーへとへとだよ!
魔石も拾わずボクは地面へ座り込んだ。
ランニングで体力もついてきたと思ってたけど全然、まだまだボクはトレーニングが足りないみたいだ。
「ん、おつかれ」
「~~! 輝良! ボク本当に勝ったよ!!」
「ちゃんとみてた、えらいえらい」
いつの間にやら後ろに這い寄っていた輝良が突如としてぬるりと声をかけてきた。
そしてまるで子供でもあやすかのようにボクの頭を撫で始める。大変ご機嫌の様子で、尻尾もケモミミもいつもに増してピコピコと大きく揺れ動いていた。
しかし少しすると思い出したように立ち上がった彼女は、突如としてズボンのポケットをひっくり返した!
「あとこれ」
じゃらじゃらと大量の魔石が地面へ転がる。
その数十や二十じゃ済まないほどだ!
「おわーっ!? なにこれ!?」
「あのゴーレム、二匹いたから」
……え?
困惑しつつも記憶を探ると、あの日の出来事が脳裏へ蘇ってきた。
そういえば、確かにそうだ。
ボクはダンジョンの逃げ道を見つける最中、背後から現れたゴーレムにぶん殴られてあの世の橋をダッシュしかけたわけで。
まさかボクが戦ってる最中、それも最後らへんのもう大丈夫だなって感じのタイミングで倒してきたワケ?
嘘でしょ!?
「火で関節ねらったらいけた」
「行けたってアンタねぇ……」
……もう、落ち込むとかそんなレベルじゃないよ。
強すぎるって!
「……輝良には勝てないなぁ」
苦笑いを浮かべるも彼女は首を振った。
「ちがう」
「え?」
「はんぶんこ、でしょ?」
あまり大きくは表情が変わらない顔で、こてんと小首を傾げながら輝良は言った。
「わたしもりつも、つよいモンスターだってはんぶんこ。それならムテキ、なんだって倒せる!」
「……へへ、そうだったね」
「はい立って!」
差し出されたその手を掴む。
「ね、今日はもう協会いってかえろ! 魔石もいっぱいだし!」
「はいはい」
お尻を払いながらボクは水筒に口をつける。
ゆっくり歩きだすと、輝良はまだ地面に落ちてる魔石を拾い集めながら、大きく尻尾を振って飛び跳ねていた。
遊びから戦いへ。
ボクたちの、本当のダンジョン生活は、きっと今日始まったんだと思う。
「今日は何食べたい?」
「ビッグバーガー! パティさらに倍にしたやつ!」
「じゃあボクはエビの奴にしようかなぁ~、もちろん倍で!」