ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~ 作:IXAハーメルン
「総主、彼女たちを連れてきたわ」
「やあやあ、夜分遅くにすまないね二人とも。どうかリラックスして座ってくれ。なにせ今回の英雄二人だ、堅苦しいのは無しにしようじゃないか」
連れてこられたのはいつもの協会、その奥にある応接間だ。
ボク達が部屋に入ったとき見たのは、少しだけ軽薄な雰囲気を纏った男の姿だった。
鬼灯さんに総主と呼ばれた彼はスーツを軽く気崩し、無精ひげの顔に温和な表情を浮かべボク達をソファへと導く。
「ささ、鬼灯クンも座って座って、無理して立つのも辛いだろう?」
「ええ」
「さて。キミ達はコーヒーは好きかい? それとも紅茶がいいかな?」
あったばかりですっかり緊張していたが、ボク、そして少しぶっきらぼうに輝良はそれぞれの好みを伝える。
ベルを鳴らし、奥から現れた使用人へと頼みテーブルの茶菓子をつまんだ彼は、今更思いだしたかのようにこちらへと向き直った。
「おっと、自己紹介がまだだったね。小生は
「あ、ぼ、ボクは谷百合律です!」
「……狐天輝良」
ぶっきらぼうが過ぎる輝良の言葉にも笑顔で頷く彼。
「うんうん、素直でかわいい子達じゃないか。でも鬼灯クン、まさかこの子たちに何か酷いことでも言ったんじゃないだろうね? 随分緊張してしまっているみたいじゃないかぁ」
「わざとらしい、元と言えば貴方の命令でしょう?」
「勿論そりゃぁそうだけれどねぇ~……」
そっけなく返す鬼灯さんの態度に彼はやれやれと肩を竦め、自分のコーヒーへと角砂糖を放り込んでいく。
「御免よぉ。鬼灯クンはどうにも愛想ってものを勘違いしているみたいでねぇ、これでも悪い子じゃないんだぁ」
「い、いえいえ! そんな! 鬼灯さんは優しくしてくれて……ちょっと輝良が一方的に嫌ってるだけなんです!」
ここに来るまでの輝良の態度ったら、もう頭痛がするったらありゃしないほどだ。
まあ確かに元々鬼灯んさんの事を苦手には思っていたし、楽しいパーティーが中断されてしまったのは、勿論ボク自身少し思うところはある。
しかしそれにしたってあの車内での空気よ!
「いやぁ悪いね。この子は友達も
「総主」
「わ、わはは、そう怒んないで頂戴よ鬼灯クン」
早速本題に入ろうか、彼はそういうといくつかの資料をボク達の前へと渡した。
そこに書いてあるのはどうやら用語の解説らしい。
侵食、崩壊現象など、今回のダンジョンに関連したそれぞれの用語が、簡単にだが纏められている。
「キミ達に来てもらったのは他でもない、資料をみての通り今回の特定領域、ダンジョンの侵食現象を取り巻く一件についてさぁ」
ま、予想通りだ。
とはいえどうやら単純な謝礼だとか、そういった話とはまた内容が異なるらしい。
「鬼灯クン、例のものを」
「ええ」
濁りなく透明、いわゆるブリリアントカットのようなものを施されたそれは、手のひら大の巨大な宝石に見える。
だが少し特別なのは、内側から光を発して、それもまるで呼吸しているかのように明滅しているところだ。
「これは……宝石か何かですか?」
「いーや。本質的にはキミ達がダンジョンで拾い集めている、そう、魔石だ。ただし人工的に精製され、精密に魔術の刻印を付与されているものさ」
魔石……?
でも魔石って大体爪先くらいの小さくて、どれも黒くて濁ってる奴だ。
目の前のこれはキラキラ輝いて全然別物に見える。
彼はその『魔石』を拾い上げると掲げ、中を覗き込むようにしながら語りだした。
「実はキミ達のいたダンジョンで拾って来たものでね。我々はこれをコア、或いは――
『――!』
「聞いたことはあるみたいだね」
ダンジョンコア。
その言葉が彼の口から出た瞬間、ボクの心臓は大きく跳ね上がった。
存在は店主から聞いていた。
どうにも侵食や崩壊にはそれが大きくかかわっており、砕くことで現象を停めることが出来る、と。
「一応存在は機密なんだけどね、どうにも人の口には戸が建てられなくて困ったもんさ」
困ったようにため息をつく
「あれ? ちょ、ちょっと待ってください!」
「コアが人工物……」
輝良も顔を顰め首を傾げる。
ダンジョンコア、店主の話じゃそれは勝手にダンジョン内で出来るもののような語りだった。
だが『人工的に精製された』、となれば話が大きく変わってくる。
人工的に精製され、特別な魔術の刻印を施され、それがダンジョンに設置された……それはつまり――
「うん、結論から話そう。キミ達が邂逅した『
彼の言葉が正しいのならボク達が邂逅した二人、赤髪の男と緑のローブを纏った女性、彼らが今回の一件において全て手引きをしていたことになる。
「構成員の多くが名前も不明だが、どれも飛びぬけた手練れ。はっきり言ってしまえば、鬼灯クンレベルでようやく拮抗出来る程度だ。そして彼らの行動はあまりに広範囲で、現状人手が全くと言っていいほど足りていない」
横に座っていた鬼灯さんが額にしわを寄せつつも頷いた。
簡単には信じがたい話だ。
鬼灯さんはこの日本、いや世界でもきっと最上位の実力者なのだろう。
その彼女をもってようやく拮抗? しかもそんな奴が世界規模の組織として動いていて、無数にいる可能性すらある?
きな臭いなんてレベルじゃない。
そりゃもう、日曜早朝にやってるような番組の敵組織みたいなもんじゃないか。
つまり世界の敵ってヤツだ。
「あの……ちょっといいですか?」
「おやどうしたんだい?」
「協会って世界規模の組織ですよね? ダンジョンの事なら大体何でも関わってるって聞きますし……」
男が頷いた。
「もし曙光の人たちがそんなに強いなら、どうして協会がその人たちを把握しきれていないんです?」
当然の疑問だ。
少なくとも多くの人間はダンジョンの存在を知ったのは五年前、そこからよーいドンで探索、レベル上げと進めていったわけ。
となればそんな大量の人々が鬼灯さんのレベルに至っていた、となるといろいろ齟齬が生じる。
どうやって彼らは力を集めた?
どういう目的でそういった行動をしている? 快楽目的にしては規模が大きすぎる、何か明確な理由があるはずだ。
それに何より協会がその実態を一切把握できていないのはあり得ない。
「なんでだろうねぇ……本当に困っちゃうよねぇ?」
「私を見ても分からないわ総主、本当に気持ち悪いからこっち見ないでくれる?」
「まったく、ひどいなぁ。昔はあんなに可愛かったってのに……」
困ったように頭を掻く
「さて、キミ達二人は随分聡いようだ。となれば小生が言いたいことももうわかっているだろう」
彼の温和で、だがどこか油断ならない強かな視線がボク達を貫いた。
人手不足。
その言葉で予測される内容は分かり切っている、ただここに来るまで全く想定なんてしていなかった。
「狐天輝良クン、それと谷百合律クン。キミ達二人の魔石の記録を視させてもらったよ、素晴らしい成長速度だ。それに今回の一件、現場での判断能力や自己犠牲の精神も十分にあると見た」
緊張で無意識にズボンを握りしめてしまう。
昼行燈としていた目の前の人間が発する空気感に、いつの間にかボクはすっかり呑み込まれていたらしい。
唾をゆっくりと呑み込んだその時、彼は鋭い眼光でこちらへとその言葉を投げかけた。
「キミ達を協会の専属部隊として今後雇い入れたい、つまり首輪付きってのになってもらいたいのさ」
「ことわる。じゃ、話はおわったみたいだからかえる」
「えちょ輝良!?」