ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~ 作:IXAハーメルン
テーブルに置かれたディスプレイの中で、昼行燈とした様子の男が軽い笑みを浮かべている。
ボク達はその正面に座り、彼の言葉をじっと聞いていた。
『やーぁ、一か月ぶりだねキミ達。最近の調子はどうだい?』
「……ふつう」
『元気そうで何より、報告は逐一確認させてもらっているよ。素晴らしい調査速度じゃあないかぁ』
協会での一件から一か月が経った。
意外なことだが
『さて、今回のダンジョンも報告を見る限り、今のキミ達なら難しいものではなかったんじゃないかな?』
その実、クレアちゃんの救出前に70から80程度だったボク達のレベルは、現在既に200近い数値へと至っている。
言うまでもなくあのダンジョン内部での死闘故だ。そしてここまでの上昇をすれば必然、身体能力自体も明確な向上を見せていた。
分かりやすい点でいうと腕力や脚力で、今のボクならスチール缶を片手で頑張って潰せるくらい。
ダンジョン入る前なんて凹ませることすら出来なかったので、あまりにも大きな成長ではある……ちょっと自分でも引いてるけど。
ってなわけで今回調査に入ったダンジョンの平均レベルは80程度、モンスターの大半が虫型で、しかも湿地帯だった分なんかちょっとキモかったけれど、苦戦はなかった。
「まさか普通に依頼してくるとは思ってませんでしたよ」
『やぁだなぁ、小生をいったい何だと思っているんだい? これでも協会はしっかり人手不足さ、使えるものは使っていかないとねぇ』
彼は画面外から何かを引き寄せると、同時にこちらのタブレットにもいくつかの資料が送られてきた。
『キミ達の実力を鑑みて、少し調査に行ってもらいたいダンジョンがあるのさぁ』
彼の言うダンジョンとやらは随分とここから離れた山の中だ。
行くには新幹線や飛行機でも使っていかなくちゃならないだろう、往復だけで一日は潰れてしまいそうな距離感である。
だがまあそれはいい、既に行った四つのうちの一つも山中だったから。
問題は今までの依頼と異なり、今回のダンジョンだけ彼がわざわざこうやって指示を出していることだ。
「……今までもそうだったはずじゃ?」
『まーそうなんだけどね、今回はちょっと特別さぁ。モンスターの調査もそうだが、同時にダンジョン内部の調査もまんべんなく行ってもらいたくてねぇ』
訝しむボクへ平然と返す彼。
『長期的な調査になる、一か月はかかるとこちらは見ていてね。まあなに、少し長めの旅とでも考えておいてくれよ、無論移動、食事、宿代から雑費までこちらがすべて持つからねぇ。今日の昼過ぎには出て欲しいんだ、新幹線のチケットはもう準備してあるよ』
◇
「……どうおもう?」
「まー怪しいよね。というかもう
協会から外に出て開口一番、ボク達は受けたばかりの依頼について吐き出した。
今まで受けた四つの依頼は業務用端末として渡されたスマホに全て届いている。
しかし今日は朝から突然協会に来いと言われたと思ったら、もう昼過ぎには出ろとのこと。
それに位置も大分遠いし、ちょっとばかり話が性急すぎる。
「まーでも行くしかないでしょ、準備も万端らしいしさぁ」
「……ん」
ちらりと見た輝良の顔は少し優れない。
……協会からの声掛け、これに乗らない選択肢はなかった。
利益がどうとかじゃない。明らかに協会が輝良目的で寄ってきている現状、その理由が何であれ、あちらが相当の譲歩を提示してきたのだけははっきりしている。
むしろここでこちらが乗らなければ何をされるか分からない、それを理解していたからこそ輝良も強い否定は示さなかったのだ。
だが同時に感じる不気味な感覚。
何か悪意をもって寄ってきたというにはあまりに丁寧が過ぎ、しかし心から信頼できるかと言われればありえない。
まるで危険物でも触れられているかのようだ。
一体輝良に何があるって言うのか。ただ剣道がちょっと強くて、無口で無表情だけど感情豊富なバカじゃないか。
「……なに?」
視線に気づいた彼女が小首を傾げ、ボクは慌てて誤魔化した笑みを浮かべてその手を取った。
「べっつにー? ね、今日のダンジョン終わったら帰りに観光しようよ、ボク名古屋の味噌カツって食べてみたくてさぁ!」
「あ、それならひつまぶしも食べたい」
「おっけー! なにせ費用は全部協会持ちだからね! クレアちゃん達にもお土産買って帰ろ!」
協会が何を考えてるかは分からない、ただ強くなればいい。
ボク達二人で強くなって、もしそれでもだめなら逃げてしまえばいい。
二人でこそこそバイトでもすれば人生なんてどうとでもなる。
どんなことがあったって、ボクは――
「ようやく会えたでござる!
輝良がぶっ飛んでいった!
地面へ転がる彼女を突然現れた黒ずくめ……というには少し露出過多な忍者衣装の女が抱き着いている!
「はぇ?」
だ、だ、だ、誰!?
誰なのこの人!?
「拙者はこの日のために……この日のためにぃ!」
「なにこの変態コスプレイヤー!? 誰!? 誰なの!?」
「し……しらない……くるちい……」
やったらべたべたとその女は輝良へ抱き着き、日本人離れした大柄な体格でフリフリと体をゆすっている。
輝良は確か身長170近いのだが、この女の前じゃ輝良ですら子供みたいに見えるほどだ。
あれ、というかなんかタヌキみたいな尻尾生えてる!? 嘘!?
「ちょっと、誰ですか貴方! 輝良からはなれて……!」
「むしろ貴様こそ誰でござるか!? 拙者は魂転の巫女殿のためにこの日まで生きてきたのでござるよ!」
「しらないよ変態! いつまで輝良に抱き着いてんの! 苦しんでるでしょうが!」
奇妙なコスプレ女、いや、タヌキ女は輝良へ向ける視線とは一転して、こちらにやたらと胡乱気な視線を投げて舌打ちをした。
「さっきから何でござるか貴様ァ……頭おかしいんでござるか?」
「こっちの台詞だよ! バカみたいなコスプレして人に抱き着くとか! 恥じらいってのはないの!?」
「なっ!? この『魂転家御庭番』で拙者だけが許されているこの衣装を侮辱するとは!?」
バカみたいな服装を大層な呼び名で語り上げたタヌキ女は、頭の上の丸々としたケモミミを荒ぶらせて立ち上がり、片手へと鋭いクナイを握った。
あのケモミミと尻尾……コスプレかと思ったけど本物!?
「見たところ
「いわさか……? え、ちょ、ちょっと!? こんなところで戦闘なんて!?」
今にも攻撃してこようと武器を構える彼女にボクは大慌てで手を振った。
ダンジョンに入ると生えてくるケモミミや尻尾ーーまあボクはなんかくるくる巻いた角だけど――は、外に出ればたちどころに消えてしまう。
一方で体内の魔力量が増えると常に出るようになるらしく、しかしその現象に至った人は相当少ないらしいとは受付嬢の談。
ボク達が見たことあるのは一人、鬼灯さんだけだ。
つまりどういうことかって?
目の前でいきり立っているこの変態タヌキはヤバいくらいの実力者って事!
「問答無用!」
「ウソでしょ!?」
彼女は駆けだすと同時に手早く片手で印を結ぶ。
その動作の度に垣間見える髪が紫に輝き始め、何かヤバい雰囲気がむんむんと立ち上ってきた。
え、ちょ、本当に戦うの!?
こんな白昼堂々外で正気!?
「『