ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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第54話

「じゃーん、カニ飯弁当~! あとこっちはとんかつ弁当!」

 

 走り出した新幹線の中で、ボクが意気揚々と取り出したのは二つのお弁当だ。

 

「協会持ちだしせっかくだからいっちゃん高いの買って来たからね!」

 

 遠慮なんてものは一切しなかった。

 当然である。今ボクは大変お怒りなのだ。

 いきなり呼び出されてすぐに出ろなんて言われるし、かと思えば意味の分からん変態忍者には襲われるし。

 

 遠慮なしの一つ五千円、スーパー高級弁当を買わせていただきましたよ。

 これが実質ただで食べられるんだから、経費ってのは最高だ!

 

 しかし驚くのはまだ早い。

 ボクはとんかつ弁当をしげしげと眺めている輝良にふふんと鼻を鳴らし、ビニールの中から二つの霜が降りた物体を引っ張り出した。

 

「し~か~も! じゃん!」

「……アイス?」

「ただのアイスじゃございません、シンカンセンメチャカタアイスだよ!」

 

 ほい、輝良の分。なんて言いながら彼女の前へ一つわたす。

 

「前話題になってたんだ~! まーもう硬くないらしいけどね!」

 

 カタイのかカタクナイのかいまいちはっきりしない。

 

「硬いアイスって……おいしいの?」

「ちっちっち、なんと一つ四百円もするからね! こいつぁ高級アイスですよ!」

 

 物価高騰の昨今、すっかりコンビニのアイスも高くなってしまったとはいえ、基本的には二百円もあれば買える。

 その中で二倍の価格とは、味に期待感が高まるのも当然というもの。

 

 でもカタクナイならお弁当前に食べたほうが良いのか? いやしかしデザートだしなぁ。

 

 どっちから先に食べるか悩むボクの横で、輝良が緑茶を一杯手渡してきた。

 

「ポリ茶瓶うってた」

「なにそれー初めて見た!? へー、エモエモじゃん」

 

 見慣れないプラ容器の中に浮かぶ紙パック、どうやらここに乗り込む直前で見つけて買ったらしい。

 お茶なんて実家だとたまに急須で入れていたけど、一人で暮らし始めてからはすっかりペットボトルのをたまに買う程度。

 それがまさかこんな形で飲むことになるとは。

 

 時期は初夏、熱いお茶って気分にはなりにくい。

 しかしクーラーがしっかり効いた車内だと別だ、指先に伝わる暖かさがすこしの安心感を与えてくれた。

 

「お、富士山」

 

 弁当を頬張る中で見えてきた最高峰を視界の端で捉えつつ、ボクは熱いお茶で口内を流した。

 

「うーん、見た目だけだとマンドラゴラのダンジョンの山の方がすごかったね」

「あそこはほぼ断崖絶壁だった」

「橋とかいつ落ちるかってヒヤヒヤしたよ! あと落石も怖かったなぁ」

 

 あそこはすごかった。

 奥の方までは迷うのが怖くて行けなかったけど、出て早々に巨大な吊り橋があったのには驚いた。

 しかも所々歯抜けで古びていて、もし落ちたらなんて真下の断崖絶壁を見ながら足がすくんだのを覚えている。

 

 今ならそんなにビビらないで行けるかな?

 いや、ちょっとはビビるかも。

 

「色々あったねぇ……なんか大体見切り発車だけど、今じゃ協会のお抱えかぁ」

「ん……」

 

 返事にも気が抜けて、すこしぼーっとした様子で弁当を口に運ぶ輝良を眺める。

 

 考えていることは分かる。

 きっと張本人ほどではないけれど、ボク自身だって気持ちは同じだから。

 

「……ほんと、どうしたもんかなぁ」

 

 今ボク達の頭を悩ませている問題は大まかに二つ。

 曙光と、『魂転の巫女』なる、おそらく輝良を指す謎の言葉だ。

 

 曙光に関しては厄介だが、そもそも主には協会が対応する相手なのでいい。

 今のところはまだ救助などの依頼も来ていないし、仮に来たとしてもボク達は逃げと救助に徹していればいいのだから。

 

 問題は『魂転の巫女』だ。

 無駄に強いイカレた変態忍者曰く世界を救うだなんだと大層な話だが、細かな話が出てこなさ過ぎて意味が分からない。

 アレがただの妄言ならいいんだけど……全てを否定しきれない理由がある。

 

 輝良の成長速度だ。

 基質励起のあまりに早過ぎる発現、そしてレベルアップの速度、身体能力、その一つ一つは違和感、こんな人もいるのかもしれない、と結論付けられるかもしれないが、こうも重なっていると否定が出来ない。

 むしろ否定する材料を考えれば考えるほど、彼女の育った環境など、後押しになるものばかりが目に付いてしまう。

 

「ねえ輝良、ボクはさ」

 

 しばらく無言が続いて、空になった弁当箱の前でボクはぽつりとつぶやいた。

 

「たとえアンタにすごい力があったからって、世界なんて救わなくていいと思うなぁ」

 

 コップを傾けながら流れていく風景を眺める。

 

 確かに言った、辛いことはボクだって一緒に背負うって。

 でも全部輝良が背負うべきなのか? それは絶対に違うと思う。

 巫女だなんだって勝手に言って、キミにはその力があるって、キミが世界を救うんだなんて言われて、はいそうですかなんていったい誰が頷けるだろうか。

 

 こっちは慈善家で生きてるわけじゃないんだ。

 たとえそんな力があったからって、必ず世界をどうこうするためにつかわなくちゃいけないわけじゃない。

 そんなこと言いだしたら世の中のお金持ちはどうなるって話なワケで。

 

「こうやって二人で旅行してさ、遊んでる方がずっと楽しいよ。アンタはそう思わない?」

「……うん、もっといろいろ行きたい。海とか、あんま行ったことないし」

「いこいこ! とりあえず今回のが終わったら沖縄ね! ボク生のジンベイザメ見てみたいなぁ」

 

 ……くぅ~! あのエロ忍者!

 あいつさえ来なければこんなことにならなかったってのに! 意味不明で余計なことばっかり喋りやがって!!

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