ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染がしっとり激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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第56話

「地図だとここら辺なんだけどなぁ……」

「りつ、この岩陰」

「あ、ちゃんと『杭』もあるじゃん!」

 

 まだ差し込まれたばかり、ピカピカの赤い杭を指差しボクは叫んだ。

 

 今までのダンジョンは全て出入り口に巨大な門が敷設されていた。

 あれはちゃんと協会の手が入った証拠であり、それなら今回みたいに発見されたばかりのダンジョンはというと、とりあえずの目安に近くへ赤い杭が撃ち込まれている。

 そして――

 

「うん、入り口もあるね」

「ここでまちがいなさそう」

 

 今目の前にある、ひび割れた空間の歪み、中空へぽっかりと開いた人数人分ほどある漆黒の『穴』こそが、ダンジョンの入り口である。

 外から耳を澄ませても何も聞こえず、覗き込んでも何も見えやしない。

 このあまりに異質すぎる次元の罅の先に踏み込んで、初めてボク達は全容を目にすることが出来る。

 

「……さて、今日も頑張りますか」

 

 誰へ向けたでもない呟き。

 

 新規ダンジョンの調査は五度目、流石にある程度慣れてはいる。

 だがしかし少し気になる点と言えば、今まではモンスターのレベル調査だけだった依頼内容が、今回ばかりはダンジョン周辺の地形等の調査も入っていること。

 とはいえその真意を知る手段はない、今はただ受けた依頼をこなすだけだ。

 

 どちらともなくボク達は互いに見合い、頷き、同時にその先へと足を踏み入れた。

.

.

.

 

「今回は森、か」

 

 鬱蒼と茂った木々、いやにごつごつとした足元をよく見てみれば、随分と太い木の根が跋扈している。

 

「……すこし、いやな雰囲気」

「んね、なんだか陰鬱だよ」

 

 森、なんてひとくくりにされるけれど、場所が変われば植物の姿、光の入り様、雰囲気、何もかもがガラッと変わる。

 今回のダンジョンはその中でも一層薄暗く、なんだか少し重々しい雰囲気を感じる。

 

 恐る恐る前に進むさなか、ボクはふと目立つ白い何かが幹へと張り付いていることに気づいた。

 

「わ!? なにこれ!?」

「おふだ、だね」

 

 近くで見ればなるほど、確かにお札だ。

 文字は曲がりくねっていてなんて書いてあるか良く分からない。だがまあ、日本人なら見た人間の九割は間違いなく御札というだろう。

 

「……ダンジョンって、どういう風に出来てるんだろうね? 御札なんてさ、誰かが貼らないと存在しないものじゃないの?」

 

 不気味だ。

 森の雰囲気もさることながら、こういったものが貼られている事実にボクは少し怯んでしまった。

 

 考えてみれば当然の疑問だ。

 ダンジョンをめぐる争いにばかり目が行ってしまうけど、そもそもなぜダンジョンは生まれたのだろうか。

 自然現象と言ってしまえばそこまでだ。でも自然現象にだって何かしらの起因はあって、ダンジョンだって変わりはしない。

 

 そしてダンジョンが何かしらの理由で発生したとしたなら、この御札は一体どういう理由でここに貼られているのだろうか。

 ただダンジョンが生み出した被造物に過ぎないのか、それとも誰かが意図して貼っていったものなのか。

 

「んー……ちょっと高くて見辛いね」

「とってみたらいい」

「えー? 大丈夫かなぁ……だってお札だよ~?」

「だいじょうぶ、なんも感じない」

 

 なんも感じないって……アンタの直感じゃん!

 いやいや、御札なんて絶対何かしらある奴だし。この年でまだ妖怪やお化けの存在を信じているわけじゃないが、まさかあえて取ろうとするほど挑戦的だった記憶もない。

 得てして人生というものは遊びで醤油瓶舐めたり、お札剥がしたり、田舎の村のさびれた祠を壊したり、こういう些細なことから大きな問題が起こるのだ。

 

 うんうん、これは放っておいて探索をしよう、なんて木の脇をすり抜けようとしたその時だった。

 

『あ』

 

 御札が落ちた。

 はらりと、いたってあっけなく。

 

「あーあ、りつやっちゃった」

「ぼ、ボク何もしてないよ!? アンタも見てたでしょうが!?」

「うんうん、つい、ね? 気持ちはわかる、でも、ね?」

「でも、ね? じゃない! もー! こんなの……!」

 

 輝良がくすくすと笑って茶化してくるもんだから、ボクはムキになって乱雑に地面へと手を伸ばした。

 

 こんなん張り付いてただけなんだからまた貼り直せばいいでしょ!

 祟りだなんだってバカバカしい、今時そんなん信じてる奴いるわけないし!

 

「いっ!?」

 

 ふいに指先へ走る衝撃。

 あまりの痛みに慌てて飛びのくも、そこにあるのはただのお札。

 

 き、気のせい……?

 もー、勝手に落ちてくるし意味わかんない痛みはあるし、なんなのこれ!?

 

 口を尖らせ、恐る恐る今度は指先を近づけてみるも、今回は何もない。

 気のせい? いやそれにしてはまだ指先がじんじんと痺れている。

 

「どしたの?」

「いやー、うーん? なんでもない?」

 

 ……ま、いっか。

 

 なんだかわからないがお札を拾いあげ、木の幹へと押し付けてみるもうまく貼りつかない。

 裏面の粘着力無くなっちゃったのかな? のりとかボンドはさすがに持ってきてないし……とはいえ、このままポイっと捨てるのもなんだか後味が悪いし。

 んー……適当に回復剤割ったガラスで突き刺すとか? いやいや、それはそれでなんか祟られそ――

 

「――へ?」

「りつ!」

 

 突如全身を覆う影。

 いやな既視感。

 ためらわず鉄扇を抜き、天へ十字に構えた直後!

 

 全身を撃ち抜かれたかのような猛烈な衝撃が腕へと駆け抜けた!

 

「っくぅ!」

「『狐火纏い』!」

 

 地面へ靴がめり込むと同時、紫炎を纏った影がボクの頭上へと跳び上がる!

 輝良だ。

 大柄な何かはそれを察し、力強い羽ばたきと共に天へと舞い上がった。

 

 空を切った刀が紫の軌跡を上げ一瞬、その存在を照らし上げる。

 

「見えた!?」

「てんぐ!」

「天狗ね! 天狗ぅ!?」

「枝の上! きをつけて!」

 

 彼女の視線の先、確かに木の枝の先に何かがいる。

 そいつは灰色をした山伏の服装をひらめかせ、錫杖を構え、鳥に似た顔つきでこちらを鋭く睨んでいた。

 背には大層立派な黒翼を備え付け、いわゆるカラス天狗といった容貌だ。

 

 こりゃおどろいた。

 ダンジョンで色々不思議生物を見てはきたけど、まさか日本昔話の存在まで出てくるとは。

 いやゴブリンが出てきた時点でいまさら? それにしたって服を着てるなんて、一体どこで入手してきたのやら。

 

「くる」

「分かってるって!」

 

 力強い羽ばたきと共に飛翔、鋭い滑空はボクへ一直線だ。

 大きく振りかぶられた錫杖が木漏れ日を受け鈍く輝く。

 だがさっきの一撃で腕が痺れている、そう何度も食らったら耐え切れない。

 

 十字に構えた鉄扇が攻撃に触れた瞬間――

 

「っ、おっも……い!」

 

 横へ薙ぎ払う!

 

 奴の膂力、そして体重の乗った力はさすがのものだが、こちらとて毎日輝良と打ち合いなどをしているのだ。

 特に武器は木刀と似ている、となれば攻撃の受け流し方も経験済み。

 

 わずかに腕を擦り、奴は地面へ衝突するようにしてボクの真横を抜けていった。

 地面へ着地すると同時、素早く輝良が烏天狗へ切りかかる。

 しかし敵もさるもの、不格好ながらも見事な動きで体を操り、翼の先を軽く切られながらも天へと舞い上がって枝へ止まった。

 

 そして次に狙いを定めたのは――

 

「またボク!?」

 

 再びの襲撃。

 今のところ二回とも攻撃を仕掛けたのは輝良だってのに、なんでこうもボクばかりに攻撃してくるのか。

 

 初対面だってのにそんなに憎いか! ボクはもうお前が嫌いになってきたぞ!

 

「そっちがその気なら! 『基質励起』!」

 

 手中で即座に展開された双扇。

 両手による連続の斬撃は――ボクの太ももへと走り抜ける。

 薄く飛び散る血、それは双扇の先に付けられた刃へとべったり張り付いた。

 

 本当は痛いからあんまり使いたくないんだけど! 

 

「『トキシックアーツ・パラライズ』」

 

 深紅が、蒼へと移り変わった。

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