ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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第60話

「『御食津神(みけつかみ)』なんだからみーちゃんでしょ」

 

 ピン、と指を立ててボクは完璧な呼び名を一つ上げた。

 

 突然現れた少女、御食津神(みけつかみ)と名を名乗って入るものの、些かゴツくて呼びづらい。

 となればやはり可愛らしさを出しつつ元の名前からとってみーちゃん、これだ。

 

「もう、ケツでいいとおもう」

「こら! 一体どこでそんな言葉覚えてきたの! アンタ一応お嬢様なんだから、そんな言葉遣いするんじゃありません!」

 

 まったくもう!

 

 こうなれば本人に直接決めてもらうしかあるまい。周囲を見回すと件の少女は少し離れたところでしゃがみ込んでいた。

 自分の今後の名前がどうなるかなどつゆ知らず、本人は興味深げに生えていた草を観察している。

 

「む、なんじゃ」

「みーちゃんはどんな呼び方が良い?」

「みーちゃん!? わらわに大して無礼じゃぞ!?」

 

 ボクの完璧な呼び名に対して耳と尻尾をぴんぴんと突き出して大変ご立腹である。

 神様の癖にセンスがないんだね、かわいそうに。

 

 彼女はしばし考え込むと突然無ん、と胸を張り、自信満々に口を開いた。

 

「呼び名じゃな? 『我が主』、『御食津神(みけつかみ)様』、どれでも構わぬ、好きに呼ぶと良い!」

「よし、みーちゃんね! けってーい!」

「おい!!」

 

 文句言わないの! ケツより百倍マシでしょ!

 

 ぶつくさと文句を言っていたみーちゃんであったが、ボクが抱き寄せて頭を撫でていると次第に口数が小さくなっていく。

 そして気が付けば舟をこぎ始めてしまった。まあ封印から出たばかりだ、それにお菓子でおなかがいっぱいになって満足したのだろう。

 

 丁度いいからこのまま寝ててもらおう。

 む、尻尾の毛クレアちゃんよりも細くて柔らかいなぁ。

 これは中々……うん、わるくないね! 九本も生えててボリューミーだし!

 

「みーちゃんを外に連れ出すとして……問題は力だよね」

「本人が認識してない以上、すぐに止めさせるなんてのもできない」

 

 この力は厄介だ。

 少なくとも一目見た時点で彼女の完全な(しもべ)に堕ちる。

 この力が無条件に発現し続けている限り、彼女をここから外に出すなんて夢のまた夢だ。

 

 いったん協会に報告する?

 ここの詳細も、『御食津神(みけつかみ)』についても何も話さなかった彼らに告げるなど、一番ありえない選択肢だろう。

 それこそ何が起こるか分かったもんじゃない。

 

 ボクはバッグの中に折りたたんでいた薄手のカーディガンを少女の頭にそっと被せ、すっぽりとその頭から上を覆い隠して告げる。

 

「姿が見えないようにする、とかで効果消したりは?」

「わぷっ。おい! なにをするんじゃ!」

「あ、ごめんごめん寝てていいよ? これはそう……布団代わりだよ、うんうん」

「まったく……なんなのじゃ……う、うぅむ……まあ悪くない香りじゃが……」

 

 すこしもがくも、柔軟剤の香りが気に入ったのかむにゃむにゃとまた眠りへ落ちていく彼女。

 

「効果あるかの判別も出来ないし、何より本人がいやがって勝手に脱いだらまずい」

「確かに」

 

 ボク達が気付かないタイミングで脱がれたらそれこそ不味いか。

 もっと直接的に止められないものだろうか?

 

 すっかり黙りこくったボク達だったが、考えていた輝良がふと視線をこちらへ向けた。

 

「ん……あ」

「どうしたの?」

「ちょっとまって」

 

 それと同時、再び彼女のケモ耳と尻尾が紫に輝きだす。

 先ほどやっていたゲーミングフォックスの構えである。

 彼女の視線は少女の少し上をじっと睨んでいる。

 

 さっきもそうだったけれどこのゲーミングフォックス、どうにもただ輝いているだけとは言えないらしい。

 思えばこの状態で封印の社を見つけ出していたし、なにかボクの目では見えないものが見えるのは間違いないだろう。

 

「見えた」

「なにが?」

「力が出てる場所。多分しっぽと耳の先」

 

 言われた通りにみーちゃんの頭やわさっとした尻尾を見るも、当然何も見えやしない。

 毛がつやつやのぽわぽわで柔らかそうなことくらいしか分からない。

 

 ふーむむ、尻尾と耳かぁ。

 ……そういえば今の輝良も耳と尻尾が輝いてるし、そもそもダンジョン内でしかまともに基質が使えないのってもしかして尻尾とか耳が影響してる?

 今までなんか勝手に生えてきてるだけだと思ってたけど……ん?

 

「ちょ! ちょ! 輝良! もう斬らないんじゃないの!?」

 

 なんか気が付いたら輝良が刀を抜き取っていた。

 

「とりあえず尻尾と耳を切り落とす、それでどうにかなるかもしれない」

「全部!?」

「ぜんぶ」

 

 チャキっと構えられた刀。

 

 ま、まずい本気だ!

 このままではここに見た目のアイデンティティを失った幼女が爆誕してしまう!

 

「あ! そうだ!」

 

 ボクに電流走る。

 

 輝良にはその場にステイするようハンドサインを出し全力疾走、一分もしないで駆け戻ったボクの手には、一枚の紙きれが握られていた。

 そう、最初烏天狗に襲われた時落ちたお札だ。

 

 みーちゃんの口ぶりからこのお札も貼られて、さらに野ざらしで相当時間が経っているに違いないが、触った感じは全然頑丈そうだ。

 いったいどんな素材で作られているかは分からないけど、引っ張っても全然切れそうにない。

 

「ね! これどうかな!? ちょっと輝良見てみてよ!」

 

 今なら分かるけど、これも彼女の力を封印していた何かに違いない。

 まだ使えるかどうか分からないけど、今の輝良ならきっとそれも見て分かるはずだ。

 

「ん……まだ『生き』てる」

「よっし、じゃあこれ使えるかも!」

 

 じっと見つめた彼女がこくりと頷いた瞬間ガッツボーズ。

 リュックからヘアゴムを取り出し、ボクはいそいそとお札を結び付けた。

 そして小さな寝息を立てているみーちゃんの金髪をそっとまとめ、首より下あたりで一つ結びにしてやる。いわゆるローポニーテールって奴だ。

 

 巫女さんが良くするような髪型に似ていて、今の服装もあって見た目もばっちりだ。

 これは可愛いぞ!

 

「どう!?」

「……確かに、力の漏出がほぼ消えてる」

「いえーい、作戦セイコーじゃん!」

 

 やーやー、これでみーちゃんの可愛い尻尾や耳が引き千切られることは避けられたね!

 

「よし、じゃあとりあえずダンジョンの外出ようか! 色々準備したいものもあるし!」

 

 まずは目立つこの子の見た目を隠せる服飾品の準備だ。

 えーっと、大きめの帽子と、尻尾はどうしたもんかなぁ……ゆったりしたワンピースとかで何とかなる?

 少し尻尾を纏めたりとかすれば何とかなりそうかな?

 

 早々に帰りたいものだが、それは少し難しい。

 なにせここまで来たのはダンジョンの調査という名目だ、一週間ほどは適当にここのダンジョン内を調査しつつ時間を潰していこう。

 

「あ、観光でもいく? みーちゃん連れてになるけど」

「りつがいくならどこでも行く」

「あんたも行きたい場所決めるの!」

 

 ここ結構山奥だからなぁ。

 ちょっと寄るってのは難しいけど……秘境メシみたいなのなら探せばあるかも? 山菜のおそばとか?

 

 

「あら、大当たりみたいですわね」

『――!?』

 

 

 ふいに、愉快気な声がボク達の耳に入ってきた。

 

「ごきげんよう、協会の皆さま」

「……だれ?」

 

 日傘を差した少女……だろうか。

 並の背丈と黒のゴスロリに身を包み、彼女は優雅な笑みを浮かべている。

 横には輝良と同じか、それ以上の身長を持つ怜悧な人物がスーツに身を包み静かに構えている。

 

 二人組?

 このダンジョンは山奥、わざわざ入ってきて、さらにかち合うだなんてありえない。

 協会の人間? それとも……曙光の所属者?

 

「質問をすれば誰でも答えてくれるとでも? ゲームでもヒントから答えを見出すのが醍醐味だわ。 ねえオトギリ、貴女もそう思うでしょう?」

「あのお嬢様……私の名前が……」

「貴女はよろしくてよ」

 

 対の鉄扇を静かに握りしめる。

 横で輝良が柄へと手を置いた。

 

「あら、随分と好戦的で恐ろしいわ。近頃の女の子って物騒なのね」

「お嬢様はもう歳的に女の子ではありませんからね」

「……オトギリ、それは意趣返しのつもりかしら? 随分と図に乗っているみたいですわね」

 

 くすくすと笑う『お嬢様』へ紫炎が襲い掛かった。

 

「オトギリ」

「はい」

 

 素早い身のこなしで女性が腕を振るうと、空中で炎が無数に裁断される。

 まるで見えない刀で切り裂かれたかのようだ。

 

 輝良はそれに鼻を鳴らし、二人をじっと睨みつけ声を上げた。

 

「目的と所属、それと名前は?」

「目的は暇つぶし、所属と名前はひ、み、つ❤」

「さすがにキツイですよお嬢様」

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