ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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第62話

「拙者は魂転家御庭番、鷺飼(さぎかい) 孫七(まごしち)! 魂転の巫女殿とご友人へ義によって助太刀いたす!」

 

 きりりと顔を引き締めエロ忍者がダガーを構えた。

 

「さあ行くでござるよお二方!」

 

 意気揚揚と駆け出す彼女を視線で追い、ボク達は互いを見やる。

 

 え、なんかいきなり出てきて勝手に飛び出していったんだけど。

 なんでここいんの?

 というかあんなにボクに攻撃的だったのに、なんかご友人とか言われてるんだけど?

 頭でも打った?

 

「……なにか狙ってる?」

「それはない」

 

 ボクの言葉に首を振る彼女。

 

 だが果たしてこうすんなりと鵜呑みにしていいのだろうか?

 先ほどまでの態度と違いすぎる。

 

「根拠は?」

「もしそんな頭が回るならあんな服はきない」

「ぶふっ」

 

 駆けていくエロ忍者の服は背中がガバっと開いている。

 口調や武器が忍者っぽいからとりあえず忍者なんて言っているが、服装は忍者装束となんていうにはあまりに派手過ぎた。

 言いぶりからしてどうやら上司らしき人に渡されたらしいが、それを素直に着てる辺りまあ……うん。

 

 確かに~!

 ほな平気か!

 

「よし、じゃあ一応味方ってことで!」

 

 構えたオトギリへ突っ込んでいくエロ忍者。

 ボク達が苦戦した彼女の糸もなんのその、素早い斬撃によって全て切り捨てているのだろう、瞬く間にオトギリの元へと彼女はたどり着いた。

 

 やはり強い。

 見た目はバカみたいなのに。

 

 向かい合っているオトギリの顔を見ればわかる。

 拮抗どころじゃない、完全にエロ忍者のほうが上手だ。

 

「あら、さすがに厳しそうですわね」

「あの、お嬢様! どうか力添えを!」

「よそ見している余裕は本当にあるでござるか?」

 

 目をつぶり、叫ぶように『お嬢様』へと助けを求めたオトギリだったが、エロ忍者はその隙を逃さなかった。

 密着するほどの近くにまで足を踏み込み、その首元へと彼女はクナイを振りかぶる。

 

「くっ、基質解放! 『デスティネ・ア・ペリール』!」

 

 やっぱりこの人も!?

 

 もう基質解放のバーゲンだ。

 日本には数えられるほどしかいないって話はどこへやら、オトギリの叫びと共に空中へ巨大な影が現れる。

 

 手だ。

 糸で作られた巨大な腕。

 そしてその巨大な腕が何か奇妙な動きをした途端、攻勢に転じていたはずのエロ忍者の身体がぴたりと止まった。

 

「エロ忍者!?」

「……まずい」

 

 高すぎる実力差から観戦しか出来なかったボク達だったが、ここで慌てて武器を握りしめた。

 

 オトギリの動きに合わせ頭上の腕が動き、さらにエロ忍者の身体もゆっくりと追随を始める。

 それはまるで人で作ったマリオネットの様だった。

 エロ忍者の膂力ですら抵抗すら出来ず、彼女は静かにボク達の方角へと体を回した。

 

「む……なるほど、糸による強制的な身体の操作でござるね」

「貴女の力は驚異的です、ならばそれを使わせてもらうまで! さあ踊りなさい!」

「踊りは苦手でござる、であるからして……さらば」

 

 突如現れた二つの影。

 それは糸によって操られた彼女と瓜二つ……いや、まったく同じ人物。

 

 二人は手にしたクナイを、縛られた己へと突き立てた!

 

「なっ!?」

 

 煙のように消えるエロ忍者たち。

 突然起こった目の前の出来事に対応しきれず、オトギリは呆然と前を見たままだ。

 

「ちょっとした余興にござるよ。操り人形も分身も、壊されようと痛みはないでござろう?」

「っ!?」

 

 背後からの声に彼女は小さな悲鳴を上げた。

 

「っ、アン・フィル・マリオネット!」

 

 とっさの判断。

 オトギリは糸人形と立ち位置を入れ替え、同時に元の場の糸人形が無数のクナイによって刺し貫かれた。

 冷や汗を拭い彼女は飛びずさるも、五人に分身したエロ忍者は自身のクナイを軽く投げつけ、彼女のさらなる動きをけん制する。

 

「オトギリとやら、貴殿は果たして分身を何体出せるでござるか? 五体? 十体? ところで拙者は――」

 

 もはや戦いにすらなっていない。

 

「――百、それ以上は数えていないでござるよ。『基質解放 偽真・枯尾花(かれおばな)』」

 

 彼女を覆い囲むように現れる無数の影。

 単騎の戦力ですら一方的、それがこれだけ現れたとなれば、結果は言うまでもない。

 オトギリは静かに両手を上げた。

 

「あらあら、ふふ。オトギリったら、あんな顔してしまって本当に可愛らしいですわ」

「随分と楽しそうでござるな」

「ええ! ワタクシ、オトギリの苦しむ顔がとっても……あら?」

 

 『お嬢様』の首筋へ添えられたクナイ。

 

「拷問は苦手でござる」

「まあ、とっても物騒ですわねぇ」

 

 エロ忍者の脅しもなんのその。

 恐ろしいほどに肝が太いのか、それともただ能天気なだけなのか、にこにこと笑みを浮かべたまま彼女はゆっくりと日傘を閉じる。

 

 そして……小さく嗤った。

 

「いつから戦闘は不得意と思っていらして? ――基質解放『ドゥームズバースト クライシス』」

「む、やはり」

 

 予想は出来ていたのだろう、しかし未知の脅威にエロ忍者は後ずさる。

 

 『お嬢様』が腕を振るうと同時、突如としてダンジョンへ地響きが渡った。

 

「ドゥームズバーストは大好評発売中のゲーム、迫りくるゾンビを整えた設備や兵器で吹き飛ばし建築を進めるタワーディフェンスですわ」

 

 ゲームチックな光が周囲に散らばったと同時、無数のポリゴンが地面から突き出す。

 まるで本当にゲームの画面を見ているかのようだ。

 信じられないことに一瞬にして、彼女の周囲には無数の兵器が生み出されてしまった。

 

 大掛かりで古臭い投石機、シンプルな大砲、そして『お嬢様』の前には固定されたガトリングガン。

 ダンジョンに似つかわしくない兵器の数々が、『お嬢様』のガトリングに追随してこちらへと照準を向ける。

 

「な、なにあれ!? そんなのアリ!?」 

「これは不味いでござる、お二方とも拙者の後ろに! 『偽真 月明けの壁鏡』!」

 

 ムチャクチャだ!

 事前の準備もなしに、まるでゲームの兵器を配置するみたいに召喚するなんて!

 

 このダンジョンに逃げ道はない、周囲に岩などといった身を守れるものなんて存在しない。

 狂ったようににんまりと笑う『お嬢様』から、ボク達を覆い隠すようにエロ忍者が現れ、即座に何か壁らしきものを生み出す。

 

「さあ、ぶちかましますわよ!」

 

 同時に、無数の爆音が静謐の森へと響き渡った。

 

「りつ!」

「わーっ!? ナニコレナニコレ!?」

「くっ、むちゃくちゃでござる!」

 

 輝良がボクへと抱き着き下へ押し倒す。

 周囲の木々の幹が弾け、土は抉られ、枝は消し飛んでいく。

 一人による絨毯爆撃はおぞましい爆音を掻き立て周囲の地形を変えていく、ファンタジーの影を破壊する暴虐の炎だ。

 

 もはや音など聞こえない。

 輝良が耳元で叫ぶも、麻痺した耳に伝わるのは振動だけだ。

 ただ分かることは圧倒的なマズルフラッシュと、砕け散る投石機の岩の破片が、跳ね返ってボクの背中にも突き刺さっていることだけ。

 

「アーッハッハッハ! 大爽快!」

 

 いったいどれだけ経っただろう。

 周囲に存在していた木々の大半が吹き飛んだあと、高笑いの『お嬢様』が赤熱したガトリングを軽く放り投げた。

 あれだけいたエロ忍者の分身は跡形もない。彼女のたった一度の基質解放によって全てが消し飛ばされてしまった。

 

「ま、待つでござるよ!」

「さ、行きますわよオトギリ」

「はい」

 

 いつの間に待機していたのだろう。

 オトギリは大型のバイクへと乗り、『お嬢様』へとヘルメットを手渡した。

 

 彼女は素早く後ろへ飛び乗ると、バイクは轟音を上げて後輪が地面を抉る。

 そしてこちらを軽く振り返りボクへと視線を投げかけた。

 

「ふふ、最後に退屈な貴女の質問に答えてあげましょう。今は――」

 

 その手に握られているのは、巨大な宝石の塊。

 彼女は思い切り振りかぶり、それをこちらへ投げつけると同時に猛烈な速度でバイクが駆け出す。

 

 見覚えがあった。祇穣院(ぎじょういん)さん、そして鬼灯さんと共に見たその名は――

 

「ダンジョンコア!? やっぱり!」

「曙光に所属している、カルミアと申しますわ。ではごきげんよう!」

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