ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染がしっとり激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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第62話

「貴女たちに恨みはありませんが……お嬢様の命なので」

「くっ!」

 

 十数メートル先、オトギリと呼ばれたスーツ姿の女が腕を振るう。

 ボク達は何度も受けたその攻撃を、間違いなく届かないはずの攻撃を恐れ武器を前へと構えた。

 

 直後腕を襲う衝撃。

 単純な予備動作から生まれたとは思えないほどの衝撃に後ずさり、気が付けば無数についていた全身の傷に顔をしかめる。

 不可視の斬撃。さらに近づくほどに密度が増す連撃は凶悪だ、ボク達は手をこまねいていた。

 

 だが何より不気味なのはあのゴスロリの彼女だ。

 オトギリによってお嬢様と呼ばれる彼女は、今のところ攻撃の一つすら出してくる気配がない。

 遠くから日傘を差し、こちらを愉快気に眺めてはコロコロと笑ってるだけだ。

 

「奥の『お嬢様』は攻撃してこなくていいのかな!」

 

 実力者か、それともただの傍観者か。

 オトギリの実力に全てを託しているならそれはねらい目、だが、ただまだ本気を出していないだけだとしたら……

 

「ふふ、その必要はないと思っていて。でもそうですわね、ワタクシに興味があるのなら……」

 

 ボクの言葉に彼女が小さく嗤った。

 

「――『基質解放』」

『っ!?』

 

 彼女の言葉にボク達は息を呑みこんだ。

 

 まさか、また基質解放!?

 数えられるほどしかいないんじゃなかったのか! それともこれが曙光の実力だって言うの!?

 

 虎の尾を踏んでしまったのか。

 それともただ手のひらで踊らされただけだというのか。

 彼女はゆっくりと日傘を前へと下ろし――

 

「『パーフェクトチアリーディング部1・2・3!』」

 

 日傘が落ちた直後、現れたのはチアリーダーの服装になった彼女だった。

 

「は?」

「はぁ、お嬢様……」

「ふれーっ、ふれーっ、オ・ト・ギ・リ❤」

 

 満面の笑みでボンボンを振るう『お嬢様』。

 

「頑張れ頑張れ❤ オトギリ❤ 頑張れ頑張れ❤ オトギリ❤」

「なにあれ……」

 

 殺気だった雰囲気に合わない軽い服装と踊り。

 だがそれこそが狙いなのかもしれない。基質解放にまで至っている相手だ、一体何がトリガーになって攻撃へと転ずるのか判断が出来なかった。

 

 ボク達はいつ攻撃が飛んでくるのかと冷や汗をかき、互いの得物をぎゅっと握りしめる。

 緊張と焦り、目的の分からぬ襲撃者たちはボク達の前でキラキラのボンボンを振り回し続けていた。

 

 くそっ、いつ攻撃が……

 

「ふれーっ、ふれーっ❤」

 

 いつ……

 

「頑張れ頑張れ❤」

 

 い……

 

「ふざけないで!」

 

 輝良が六つの紫炎を飛ばした!

 それは狐の姿を象り敵へと襲い掛かる!

 

「やぁん、怖いですわぁオトギリ~! 助けてくださいまし~!」

 

 くねくねと舐め腐った顔をして炎を避けると、さっと彼女はオトギリの背後へと隠れてぺろりと舌を出す。

 くすくすと笑う姿はどこまでもこちらを侮っていた。

 

「邪魔するなら帰ってくださいお嬢様」

「ああん、オトギリまで! あんなに応援してあげたというのに!」

 

 戦いの最中だというのに何か言い合う余裕まであるらしい。

 ボク達の実力など視線を向ける意味すらない、とでも言いたいのか。

 

 ……舐めやがって。

 

「――『基質励起 トキシックアーツ』」

「あら?」

 

 鉄扇の先が蒼へと移り変わる。

 

 オトギリの攻撃方法はいまだ不明だ。

 だが彼女の身振り手振りが影響しており、その直線状に攻撃が発生するのははっきりしている。今、お嬢様が横にいる状態では大きな動きは出来まい。

 

「はああっ!」

「お下がりくださいお嬢様!」

 

 激しい金属音が鳴り響いた。

 焦ってお嬢様を下げようとするも遅い、既に近づいていたボクの攻撃を彼女は不可視の何かによって止める、

 

「……これは」

 

 ボクの頬に一筋の傷が生まれた。

 何かが光を反射し小さく輝く。

 不可視の斬撃、その正体は近くで見てこそ初めて気づけた。

 

 糸だ。

 彼女の攻撃、その本体は目に見えないほど細かな糸!

 周囲へ細かな糸を張り巡らし、指先の動きで自由に操っている!

 

「気付かれましたか、しかし!」

「輝良! ボクに炎を!」

「ん」

 

 正体さえわかれば回答は単純だ。

 彼女は再び腕を大きく振るい攻撃を仕掛けるも、即座に背後から輝良の炎がボクの身体を包み込んだ。

 

 輝良の紫炎は任意の物だけを熱す。

 敵の糸は細い分耐久性は低いのだろうか、瞬く間に焼き尽くされこの身には傷一つすらつかない。

 

「貰った!」

「くっ」

 

 炎の中からボクの腕が突き出した。

 炎を受け蒼く輝く鉄扇がオトギリへと襲い掛かるも、彼女は冷静に糸を操って攻撃を弾き飛ばす。

 接近するほど糸の密度は跳ね上がる、ボクの鉄扇は一瞬でからめとられると、彼女はそれを糸で吊り上げこちらへと小さく嗤った。

 

「この程度で裏を掻いたとでも?」

「まあね」

 

 二つあるとはいえ、武器を取られたボクが平然としていることに彼女は顔をしかめる。

 

「随分と余裕ですね」

「……ボクの能力がただ素敵な蒼色を生み出すだけだと思ってるの?」

 

 彼女の無数の糸にからめとられた鉄扇。

 その鋭い切れ味は驚異的だが、同時に鉄扇へまとわりついた麻痺毒を切り裂き、砕き、より吸い込みやすい姿へと変える。

 

「なにを――っ、からだ……が……」

「輝良!」

 

 ボクの肩を蹴り飛ばし、炎を斬り彼女が飛び出す。

 

「死なない程度にあぶる、赫灼管狐(かくしゃくくだぎつね)

「しま……!」

 

 焔狐が唸り声を上げた。

 虚を突かれたオトギリが叫ぶ間もなく炎に包み込まれる。

 

 やった……!

 

「『アン・フィル・マリオネット』」

 

 だが紫炎の中で崩れ落ちたものは、ただの糸塊であった。

 同時に炎が消え、背後から彼女の声がボク達へと届く。

 

「うぐっ」

「ん……みがわり……!」

 

 ボク達の身体は突如として無数の糸にて束縛され、二人で一つに結び付けられる。

 背後から無傷のオトギリが現れ、拘束によって腕すら動かせないボク達の首元を軽く撫でた。

 

「抵抗はおすすめしかねます、二つに分かれるにはまだ惜しいでしょう」

 

 首元へ巻き付く一本の糸。

 

 いったいいつの間に……!

 入れ替わったのも気付かなかった! 麻痺もない、そもそも戦っていたオトギリが糸による分身!?

 

「……案外退屈でしたわね。オトギリもお遊び程度で終わってしまったようだし」

 

 元のゴスロリに戻り、あくびをしながら『お嬢様』が現れた。

 

「いかがなさいますかお嬢様」

「噂の『魂転の巫女』を見に来たのだけれど……案外この程度なのかしら? それともまだ未熟なだけ?」

「……どうしてそれを」

 

 縛り付けられたボク達へ近づいた彼女は、輝良の顎をくいっと持ち上げてその顔をまじまじと見た。

 

 また、魂転の巫女か。

 となればこの『お嬢様』は協会の関係者……? でもそれならなんでわざわざダンジョン内に現れた?

 目的は?

 

 だがここで突如として彼女はオトギリに押し飛ばされた。

 

「お嬢様っ!」

「きゃっ!?」

 

 一瞬前まで彼女がいた場所を鋭い太刀筋が貫き抜ける。

 同時にオトギリが切り裂かれるも、一瞬でその身は無数の糸へと変わり地面へと散らばった。

 

「ふむ、糸による分身でござるか。分身なら拙者も得意でござるよ」

 

 現れた影はにやりと笑い、指先で印を組む。

 

「――基質解放 『偽真・枯尾花(かれおばな)』」

 

 同時に無数の影が周囲へと散らばり、ボク達を縛っていた糸が瞬く間に切り裂かれた。

 

「新手ですか!」

「ふふ、拙者の名を聞きたいかな?」

 

 その影は……いや、布の少ない忍装束へ身を包んだ彼女は好戦的な笑みを浮かべると、鋭いクナイを両手に握りしめた。

 

 まさか!?

 まさかこの人が!? どうやってここに!?

 アンタは――

 

「――アンタは……エロ忍者!」

「おや、随分と下品な服装の方ですね」

「あらあら、中々淫猥な見た目ですわね。でもデザインの参考になるかしら?」

 

 エロ忍者!?

 ボクが通報した警察に捕まったはずじゃ!?

 

「拙者は魂転家御庭番、鷺飼(さぎかい) 孫七(まごしち)! 魂転の巫女殿とご友人へ義によって助太刀いたす!」

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