ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染が長年ドロドロ激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~ 作:IXAハーメルン
『お嬢様』、いや、カルミアが手放したダンジョンコアが著しい収縮を始めた。
まずい、既に起動されている!
「破壊するでござる!」
瓦礫を押しのけエロ忍者が飛び出した。
最悪の足場もなんのその、輝くダンジョンコアへと瞬く間に近づいた彼女は、そのクナイを大きく振り立てる。
想像以上にすんなりとそれは破壊され――
「しかし、逃げられたでござるな」
静寂だけがボクの耳に突き刺さった。
すでにカルミアたちの姿は影も形もない。
「終わった……の……?」
「……たぶん」
異常に次ぐ異常、呑み込み切れていない現実にどこかへ飛んでいきそうな思考。
輝良の言葉でようやく、ボクの心は現実へと帰ってきた。
「くそっ」
冷静が脳内に染み込むほど、同時にあふれ出す敗北感。
圧倒的だった。
オトギリの糸、エロ忍者の戦闘能力、『カルミアの理不尽なまでの破壊力。
それぞれに能力や程度の差はあれど、誰もがボク達など歯牙にもかけないほどの暴力だ。
彼女らの戦いに、混じることなど不可能だった。
みーちゃんと会ったと思えば、次から次へと……
「……そういえばみーちゃんは!?」
すっかり忘れてた!
「ど、どうしよう輝良! みーちゃんが!」
背後を見ると圧倒的な爆撃によってへし折れた木々。
先ほどみーちゃんがいた所も言うまでもない、まるで恐ろしいほど巨大な重機で全てをひっくり返されたかのようにムチャクチャだ。
洗脳能力こそとびぬけているものの、みーちゃんの動きは見た目相応。
それに輝良に斬られかけた時もそこまで大きな動きはしなかった、もしかしたら……
『う、ううむ……な、なんじゃあの頭のおかしい女は!? 今日は厄日か!?』
焦ったその時、砕け散った瓦礫の中からか細い声が漏れ出た。
砕けた木々や土を押しのけ現れたのは、手のひらほどしかない子狐だ。
それは少女の声でけほけほと咳を繰り返し、ぶるりと身震いをして
それは、いや、彼女は耳のそばにお札のヘアバンドをつけていた。
「もしかして、みーちゃん!?」
『おお律か! さっきのあれはなんじゃ、見たことのないものが聞いたことのない音で暴れ回っとったぞ! 麒麟族の轟雷かと思ったわ!』
「き、キリン? まあでも無事でよかった!」
まるで小さなぬいぐるみみたいだ。
ボクは安堵からそれをぎゅっと抱きしめると、腕の隙間からぐぇ~なんて声が小さく漏れた。
そぁそなんだってこんな小さい狐の姿になってるんだ?
これもまた神様の力とやらなのか?
『なんじゃ、これはただの変化ぞ? 気になるなら元の姿に……』
「待って!」
もぞもぞもみーちゃんが動くのを上から手のひらで押さえつけ、大慌てで後ろへと振り向いた。
「おお、ご友人殿ケガはないでござるか! ん? それは?」
『うむ、我が名は』
「こ、こ、この子の名前はみーちゃん! ペットの子狐!」
魂転の巫女と
みーちゃんの存在を最も知られてはいけない人間の一人だ。
ボクは冷や汗だらだらで自分の反射神経を心から褒めたたえた。
あっぶねー!
まじあっぶねー!!
「みーちゃんはボクと輝良の前以外で喋らないでね! 見なよあの姿、変態でしょ? なにされるか分かんないよ!」
『確かに……よく見るとなんと淫猥な姿なのじゃ、品性の欠片もないのぅ』
「いやそこまでは言わないけど……まあえらいえらい、あとで美味しいお菓子あげるからね」
よしよしと小さな頭をなでると、彼女はお耳をピコピコと動かして頷いた。
リュックの大き目な後ろポケットへとみーちゃんを入れたその時、エロ忍者が大きく腕を上げて歩き出す。
「ではお二方、拙者についてくるでござるよ!」
「え? あー……うん」
え? これついていかないといけないの?
いやでももうなんかエロ忍者歩き出してるし、というか忍者やたら強いから文句も言い辛いし……一応ついていくか?
「まって」
しかしここで素直についていかない女が一人。
そう、輝良である。彼女はそうやすやすと場の流れに流されたりなどしないのだ、受け身のボクとは真逆だ。
「りつに対してさっきまでと態度が違いすぎる、どういうつもり?」
「ぎくっ」
輝良の鋭い言葉と視線にエロ忍者は大きく肩を震わせる。
「ご友人殿なんて、さっきはりつのこと追い払おうとしてたでしょ。それについてこいなんて、どこへ?」
「あにょ……えっと……」
指先をもじもじ、視線をうろうろ。
何か言い辛いことがあるのはまるわかりだが、輝良はその程度気にしない。
しゃべらない限り頑として動かないぞ、とばかりに刀を地面へ突き立て腕を組み、じっとエロ忍者を睨みつけている。
「あにょ、実は拙者、命令されてるから詳しいことは何も知らないでござるよ!」
「それで?」
「それで、でござるね……」
助けてくれ、とこっちへ視線を向けてきたがボクもそっと目を逸らした。
まあ考えてみればエロ忍者、さっきいきなり襲って来たし。
カルミアたちから助けてくれたことには感謝してるけど、それはそれ、って奴である。
それに輝良や、その命令には忠実らしいことも確か。それなら目的くらいは聞かないと。
ボクが全く助力にならないと察したエロ忍者は、しぶしぶと口を開いた。
「ただその、魂転の巫女殿を――魂転家へとお連れするようにだけ、命令されていて……そにょですね……」
「それで?」
低い声の輝良がゆらりと尻尾を揺らす。
「さっき若君に報告したら、丁重に皆様をお連れするように伝えられて……あにょ……」
「それで? なにが言いたいの?」
「この度は大変申し訳ございませんでしたーっ!! どうか、どうかご慈悲をーッ!!」
地面へ這いつくばっての五体投地、見事だ。
これほど美しい動きを見たのは人生で初めてかもしれない。
さっき、カルミアやオトギリと戦ってるときはあんなかっこよかったのに……
「あにょ……」
しかしいくら経っても何も言わない輝良に、エロ忍者は恐る恐る上へと視線を向ける。
そこにいたのは恐ろしいほどに冷たい視線を向ける輝良だった。
「わたしじゃないでしょ、その頭を下げるべきなのは」
「えっと……そにょ……」
「言われないと分からないの? 貴女が攻撃したのは誰? 非礼を働いた相手は?」
エロ忍者のケモミミがピン、と立ってこちらを振り向いた。
「ご友人様、大変申し訳ありませんでした! 拙者ご無礼をお詫びしてなんでも、へへ、御靴もお磨きいたすでござるよ!」
「いやぁ別にそういうのは」
「まあまあまあまあそういわずに! 拙者靴磨きには中々の自信がござる! 若君にもよく孫七は靴磨きと戦いだけは良いと褒められるでござるよ!」
「いいって! 白のスニーカーに黒の靴墨使うつもり!?」
どこから取り出したのか、ブラシと真っ黒な靴墨を振り上げこちらへ飛び掛かるエロ忍者。
おいやめろ! 離せこらエロ忍者!
「もー輝良! ボクはもういいから!」
「……はぁ、わたしを呼んでるのはその若君って人?」
「いや、魂転家の、うーん、なんと言えばいいか……そう、当主殿にござるよ」
当主!?
御庭番だの若君だのと出てきたもんだから、なんとなく魂転家とやらが随分大きいのは分かっていたけど……これまた大物が出てきたものだ。
「目的は?」
「詳しいことは分からないでござる。ただ魂転家の縁者全員にも召集が掛かっているため、大掛かりななにかが
有るのは間違いがないでござるな!」