ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染がしっとり激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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第75話

「――『デッドリースケイル』。鬼灯さん、おんなじ攻撃パターンじゃ読まれますよ!」

「っ、小賢しいわね!」

 

 彼女が大ぶりに腕を凪いだと同時、読んでいたボクは背後へと大きく後ずさる。

 鬼灯さんはそれに鼻を鳴らしてこちらへと鋭い視線を向けた。

 

「この程度に順応していい気にならないことね!」

「足元を掬われてはずかしいんです、かっ!」

「ふふ、煽ったって無駄よ」

 

 再度の突撃。

 こちとら金属塊を使って殴り付けているというのに、彼女はその細腕で易々と受け流し、むしろ合間へ攻撃を差し込んでくる。

 分かり切った圧倒的格差、傍から見れば一度目の戦闘とさほど変わらぬ展開。

 

 でもさっきの大振りな攻撃は……初めて引き出した。

 ――ボクの攻撃は確実に鬼灯さんへ届き始めている!

 

「ハァァッ!」

 

 より速く、より鋭くッ!

 

 見える、彼女の動きが、次の手が。

 繰り返した戦闘はある種の訓練に近い、相手の癖が無意識のうちに脳裏を過ぎり、体は勝手に動き出す。

 ずっと心の奥底で煮詰まっていた激情があふれ出した。

 

 とどけ、届け!

 あいつらからすればちんけな覚悟で、矮小な力で、一絡げの存在なのかもしれない!

 それでも――

 

「――それでも凡百には凡百なりのプライドが! 守りたいものがあるんだよ!」

 

 それを笑う奴はぶん殴ってやる!

 

「角!? っ、まさか!」

「うぐっ」

 

 何か驚いたように目を見開き、彼女がこちらの腹を蹴り飛ばした。

 

「……報告の魔力レベルは800程度、外界で磐境(いわさか)の結界を破るには全く魔力量が足りないはず」

 

 戦闘中だってのに、彼女は余裕綽々で顎に指を当て、ぶつぶつと何かを口にしている。

 

「貴女、魂転家でなにか儀式でも受けてきたのかしら?」

「侮蔑と嘲笑ならたっぷりと!」

「……あら、違うみたい」

 

 蹴られた腹には、想像以上にダメージがない(・・)

 いや、それどころじゃない。なんだか体の奥から力が湧いてくるみたいだ、それと少しの高揚感。

 まるでダンジョンの中にいる(・・・・・・・・・・)みたいに、外じゃ体に感じていた違和感がきれいさっぱり消し飛んでいる。

 

「う、おおおおおおおおッ!」

 

 腕先を小さな結晶が覆っていく。

 外じゃいつも通りのちんけな力、でも今日は本能が違うと叫んでいた。

 

 もっと、もっとだ!

 ボクの気持ちはこんなもんじゃない!

 

「――『基質励起・デッドリースケイル』!」

 

 叫びに呼応し、両腕を巨大な結晶が覆った!

 それはダンジョンの中と等しい、完全なる力の顕現。

 

「これがボクの力だ! あんまりボクを舐めるなよッ!」

「ふ、ふふ! じゃあ意志だけで結界を破ったのかしら! 少しだけ面白いじゃない!」

 

 今までの比じゃない速度で体が動く。

 地を蹴り、風を切り、決勝によって作られた巨大な双腕が彼女を襲った。

 

「っらァ!」

 

 躊躇なしのぶん殴り。

 結晶の質量、鉄扇の質量、そして速度。

 全てが渾然一体となった攻撃。

 

「ふふ、中々どうして」

 

 鬼灯さんはそれを受けず素早く横へと転がる。

 抑えなどない一撃は無人のアスファルトを殴り飛ばし、届いた衝撃が太い街路樹を大きく揺らした。

 

 まだまだ戦える。

 まだまだ続けられる。

 溢れる力と感情の奔流に押されるがまま、ボクは両手を握って叫んだ。

 

「基質励起!」

「はいストップ」

 

 首元へあてがわれた冷たい金属の感覚。

 それは一振りの大振りなナイフだ。

 

「っ、武器は使わないんじゃなかったの!」

「少し落ち着いて周りを見てみなさいおバカさん」

 

 割れたアスファルト、大きな傷跡の残る街路樹、周囲一帯へ散らばるボクの生み出した結晶片や空気中を舞う破片。

 

「テロリストにでもなるつもり?」

「あ……いや……」

 

 彼女がナイフを仕舞うと、ボクの両腕を覆っていた結晶も塵となって消えていく。

 これ以上こんな街中で戦うわけにはいかない。

 特にボクの麻痺毒は即効性で、耐性がない人が吸ったりなんてしたら速攻で麻痺、大ごとになりかねないからだ。

 

 だが一番妙なのは、ボクへ冷たい視線を向けてばかりだった鬼灯さんが、なぜか妙に機嫌よくこちらへ話しかけてきていること。

 

「ふふ、最初は巫女について回るだけの金魚の糞だと思っていたけれど、貴女、まさか目の前で解放段階に至るとは思わなかったわ」

「……解放段階ですか?」

「あら? まだ気付いてないの?」

 

 彼女は傍らに置いてあった鞄から小さなコンパクトミラーを取り出し、ボクへと差し出した。

 いったい何なのか。意味も分からず受け取り、まじまじと自分の姿を眺め――

 

「ん!?」

「頭、よく見てみなさい」

「え!? 外なのに角出てる!?」

 

 いつものダンジョンで見る角だ!

 頭の横で太くて黒く、ぐるんとまいた大きな角!

 ダンジョン内で自分の姿を見ることはないし、いつもは外じゃ消えてしまうものだから違和感がすごい。

 

「人それぞれにかけられた磐境(いわさか)の結界、それが破壊された証拠よ」

「あ……だから妙に力が漲ってたのか……」

 

 磐境(いわさか)の結界。

 度々名の出るそれは、かつて世界全体へ貼られた結界である。

 単純に言えば世界そのもの、そして人そのものへ直接貼られた結界であり、これがあると人々は魔力を失い尻尾、ケモ耳、角など本来生えていたものも失う……らしい。

 逆にダンジョン内では磐境(いわさか)の結界が存在しないようで、そこに立ち入った人は本来の姿を取り戻すそうな。

 

 つまり今のボク、つまりダンジョンの外でも角が生えているボクは鬼灯さんと同じ、磐境(いわさか)の結界が破壊された状態ということになる。

 

「……えー、どうしよ」

 

 いや、強くなったのはうれしいんだけど……外で角出てるのコスプレみたいで恥ずかしいんだけど。

 ケモミミよりなんか圧あるし……うまいこと帽子で隠す?

 

「そのうち気にしなくなるわ、忙しさでね」

「へ?」

「合格よ、戦い方を教えてあげる。今後は私に同行してもらうわ」

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