ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染がしっとり激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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第79話

「あ、そういえばボクもネクスティ製の武器持ってるんですよ! お店で依頼したんです!」

 

 雑談のさなかおずおずと相棒、対の鉄扇をリュックから取り出し差し出す。

 

 この鉄扇はあの道具屋で注文したオーダーメイドの逸品だ、作ってからもう四カ月ほどになるだろうか。

 ボクの好みに合わせ重量、強度をさらに高めた上、何より特徴的なのは魔石をあてがうことによって自動で修復する機能だろう。

 側面の刃部分も扱い続ければ劣化するし、殴り続ければ少しずつ金属はひしゃげていく。

 しかし魔石、それも弱いモンスターのそれでもあればあっという間に修復、発注した時とほぼ同じ状態へ戻るのだから本当に素晴らしいものだ。

 

「ふむ? 個人依頼は基本的に受けていないはずだが……もしかしてその鉄扇か?」

 

 ナユタさんはボクの鉄扇をしばし見つめると、何かを思い出したかのようにはたとこちらへ視線を向ける。

 

「ああ、これを依頼したのは君だったのか」

「知ってるんですか!?」

「ああ。これはネクスティというよりかは私への直接的な依頼でね、付属している魔力による修復は会社ではなく個人での研究成果だよ。勿論会社に特許権の譲渡は済んでいるけれどね」

 

 中々儲かったよ、なんて小さく笑うナユタさん。

 

「こうやって依頼者本人と出会うとは、中々数奇なものだ。それも君みたいな幼い女の子とはね」

 

 少し感慨深げに思考へ浸る彼女。

 しかしふとした拍子に少し眉を顰め、ボクの鉄扇をかちかちと弄り始める。

 そして手早く一部のパーツを抜き差しして何か覗いていた彼女は、小さくやはりな、と呟いて鉄扇をたたみ直した。

 

「五分だけ待っていてくれ」

 

 その一言を残し消えるナユタさん。

 ボクと鬼灯さんは顔を見合わせ、まあ仕方がないかと、再びこの場所の説明を色々聞いていると、ナユタさんは再び鉄扇を抱えて戻ってきた。

 

「随分と使い込んでいたようでね、一部の金具と、内部の術式を刻み込んである魔石が摩耗していた。オーバーホールをしておいたからこれで安心して使えるだろう」

「あ、ありがとうございます!」

「気にすることはない、単なる休憩中の退屈しのぎだ。時々だが私もこの協会に足を運ぶ、互いに予定が合えば色々要望を聞こう」

 

 オーバーホール、つまりたった五分で全部ばらしてさらに修理までしてくれたらしい。

 それに良く分からないがこの中には術式が刻まれている魔石が仕込まれていて、それが修復のかなめになってもいるようだ。

 

 ……さっきの鬼灯さんの話を聞く限り、他人の基質を再現するってのは最新鋭の技術じゃなかったか?

 それを今、さくっとやってきた? 暇つぶしで? そういやさっき主任研究員とか言ってたような?

 あれ? もしかしてこの人、本来ボクなんかがホイホイ話せる人間じゃないのでは?

 

 唖然とするボクを横に置き、二人は数人の連絡員らしき人達と顔を突き合わせ、軽い会議を始める。

 

「地点は市街地横、発生時刻は十二時五十七分。隣接した公園にいた親子が巻き込まれたものの既に救出済み、現在の平均レベルは1500程度と推定」

「ええ」

「物品は律君、ここに全て準備してある。すぐに詰め込んでくれ」

「え? あ、はい!」

 

 ナユタさんに言われるがまま、台の上に置かれていたものを慌ててバッグへ放り込む。

 

 えーっと結界装置に回復剤が十本、それと一応のキレイな包帯に――あー、みーちゃんごめんね~! 寝にくいよねぇ~!

 

「到着地点はダンジョンの目前20メートル、上空10メートル。一帯の民間人は既に隔離済みだ」

「律、ちゃんと構えていなさい」

「は、はい! ……ちょっと待ってください、上空10メートルって……?」

 

 さあここに乗って、と言われた台へ足を運ぶと、なんだか再び不穏な会話。

 

「健闘を祈る必要は?」

「今更でしょう?」

「そうか」

 

 ゆっくりと、ボク達の頭上の天井が開いていく。

 直径は一メートルほど。

 

「良い旅を」

 

 にこりと、事務的な笑みを浮かべるナユタさんの指が、真っ赤なランプへと押し込まれた。

 

 

「ひ」

 

 

 世界が一瞬で吹き飛ぶ。

 

「ひゃ」

 

 無数の家々が一瞬で点へと変わる。

 

「ひゃあ」

 

 鳥すらはるか足元へ。

 

「ひゃああ」

 

 そしてボクは、風になった。

 

「ひゃあああああああ!?」

「あんまり暴れると着地地点がずれるわよ」

「そ、そんなこと言われても!?」

 

 ムリムリムリムリムリムリムリムリ!

 ナニコレナニコレナニコレナニコレ!?

 あかんあかんあかん!! あーあかんあかん!!!

 

 ヤバい勢いで空を切り、雲を突き抜け、遠くに見える飛行機すらもが一瞬で消え去っていく。

 文字通りの超音速。

 間違いなくこの瞬間、光に最も近づいた人間がボク。

 なにがヤバいって、体に風圧とか全然感じないのが一番ヤバい! ちょっと強めの風に服とか髪がたなびいているだけみたいなのに、雲の隙間から見える『日本』がすごい勢いで後ろへ移動していってる!!

 

「ふふ、楽しんでるところ悪いけどそろそろ落ちるわよ」

 

 ひたすら絶叫を続けているさなか、突如として鬼灯さんがボクへと語った絶望。

 ああ、確かに移動速度が急激に低下している。

 今までは真っすぐ平行に横へ動いていたってのに、今じゃぴったりと空中に止まって……

 

 ボ

 ク

 は

 堕

 ち

 た。

 

「ひっ!? きゃあああ!?」

 

 今度は下方向!?

 

 雲を突き抜け、鳥を抜き去る。

 ぐんぐん迫る地面や木々の樹冠。

 

 う、うそでしょ!? 

 この速度で地面に直撃なんてしたら!!

 

 ごめん……輝良……っ!!

 

「……っ?」

「最低限の安全対策は取られてるってナユタが言っていたでしょう?」

 

 身構え目をつぶったものの、思っていた衝撃は来ない。

 恐る恐る目を開けたボクは、自分が木々の頭辺りでぴったりと止まっていることに気づいた。

 

「よ、良かったぁ……あのまま落ちるのかと」

「まさか! さすがにあの速度だと私も少し危ないもの」

「少しなんだ……」

「ただ――ここからは重力で落ちるわ」

 

 

 

 え

 ?

 

 

 

「ぶはっ!? 死ぬかと思った!!!」

 

 気が付くとボクは地面に頭が突き刺さっていた。

 

「ちゃんと構えておきなさいって言ったでしょう」

「10メートルの高さから落ちるなんて想像できませんよ!?」

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