ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染がしっとり激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~ 作:IXAハーメルン
「……ぐっ!? あ、あああっ!!」
「っ、ミカ!? どうしたの大丈夫!?」
突如としてミカが胸を押さえ悶え始めた。
「少し
「え!? ちょ、ほ、鬼灯さん!?」
その体を押さえつけ、無理矢理にローブを引っぺがす鬼灯さん。
その……胸元の上半球がべろん、とめくり上げられあらわになる。
おわーっ!? いきなりすぎーっ!?
た、他人のなんてあんまり見たことないっていうか……!?
「これは!?」
ふと、その白い肌に似合わない黒々とした何かが目についた。
「入れ墨、いや、呪印とでも言ったところかしら」
それは肌の上にくっきりと刻まれているにもかかわらず、呼吸をしているかのように脈動し、そのたびに少しずつ肥大化していく。
まるで、ミカの身体を蝕んでいるかのように。
「これのせいで苦しんでるんじゃ……!」
荒い息と玉のような大粒の汗。
生半可な苦しみ方じゃない。まるで神経そのものを抉られただとか、肉が千切れているだとかそういったレベルだ。
その異様さはともすれば……このまま、苦しみ死んでしまうんじゃないかと思わせてくるほど。
『放っておけば死ぬぞ』
「みーちゃん!?」
もぞり、と置かれたバッグから頭をのぞかせる子狐。
彼女は大きなあくびをかましながら這い出し、ぶるぶると大きな身震いをした。
ちょ!?
鬼灯さんいるのにしゃべっちゃダメでしょ!
『もう良くないか? こ奴はわらわの存在に長らく気づいておったぞ』
「しゃ、しゃべるキツネ!?」
「全然気づいてなかったじゃん!!」
わなわなと震える鬼灯さん。
しかしこちらの視線に気づくと、きりりと眉を吊り上げて静かに語った。
「……コホン、気づいてたわよ?」
「いや無理がありますよ鬼灯さん!」
「なんかバッグの中にいるなー、たまに連れてるあのペットかなーくらいは分かってたわよ!」
じゃあ何も気付いてなかったんじゃん!
なにが長らく気づいていただよこのバカ狐!
『……わはは』
「ワハハじゃないよ!?」
『まあもう良いではないか、過ぎ去ったことじゃ』
「現在進行形だけど!?」
『今はこの、エルフの娘じゃろう。解き方ならある』
ぽてぽてと尻尾を振りながら、ミカと鬼灯さんへ歩み寄ったみーちゃんがちらりとこちらを見る。
そしてあっという間に元の姿、巫女服を纏った少女がその場へと現れた。
「ちょっ!?」
「もういいじゃろ、この姿でなければ感知能力が足らぬ。おい白虎の娘、そこを退け。邪魔じゃ」
「今度は女の子……もう何でもありね。律、後で隠し事全部はいてもらうわよ」
「ひょえぇ……」
どうしてボクがこんな目に……。
しくしく泣くボクをそのままに、みーちゃんは苦しむミカの胸元へと手を上げがった。
そしてしばらくあちこちを触り確認を続けてから、ボクたちへと振り返って告げる。
「これはエルフの、それも本来王族のみが扱う古い呪印じゃ。予め立てた条件に違反した場合発動し、即座に対応しなければそのまま死へと導かれる」
「やっぱりこのまま放置したら死ぬ、ってことか……」
「本来は里などの闖入者に刻み込み、二度と立ち入らぬようにするためのものじゃ。ゆえに里へ近づいた場合に苦しみが増し、即座に退却すればすぐに症状は治まる」
――!
治まるって、つまり死なないってこと!?
「じゃあその条件さえわかれば抑えられるんだね!?」
「否」
一瞬見えた光明、しかし帰ってきたのはさっぱりとした否定だった。
「察するに此度の条件は『敗北』そのもの、ゆえに条件の撤回は叶わぬ」
絶望がボクの胸に去来した。
つまりミカは、鬼灯さんと戦った時点でどうあがいても死が確定していたというのか。
あの戦闘を避ける反応、間違いなく本人はそれを知っていたはず。
どうしてそんな魔石を埋め込まれてまで曙光で働いていたのか。
「ふぎゅっ!? お、おい! 何をする無礼じゃぞ!?」
面倒くさげに鬼灯さんがみーちゃんの襟をつかみ上げた。
「まどろっこしいわね。解き方ならある、そういったのは貴女でしょう。さっさと吐きなさい」
「わ、分かったのじゃ! だから離せ! 大地を踏ませよ!」
「私面倒なのは嫌いなの、次思わせぶりな物言いを言ったら……そのしっぽ、九本もいらないわよね?」
「ひぃ!? お、おい律! どうしてこんな奴を師にしたのじゃ!! 一番指南とか向いてないタイプじゃろ!?」
だって仕方ないじゃん! この人が多分一番強いんだから!
ぶるぶると震えながらボクの足にすがってくるみーちゃん。
できれば離れてほしい、鬼灯さんのターゲットがボクになったらいやだし。
「……魔力の噴出は胸の中心、左胸寄り心臓付近。おそらく今回は刻印入りの魔石が埋め込まれておる、これを抜き取れば良い!」
「それだけじゃないでしょう? もしそれだけ単純な条件なら自分で抜き取れるはず」
確かに。
以前たった一度だけ会ったとき、ミカはいわゆる回復魔法……いや、本人曰く魔術、だったか、を使っていた。
確かに怖くて痛いはずだけど、あの力があれば自分で抜き取ることは可能なはず。
いや、それどころかそんなもの使わずとも、回復剤でどうとでもなる。
ボクたちの疑問へ、ボクの後ろから顔だけを出したみーちゃんが続けた。
「こういった仕様の場合、体から抜き取った瞬間にも同じく発動する場合が多い。それもその場合効果は即座に、最大限発揮される」
「わかりやすくていいわ、つまり抜き取った場合も死ぬって訳ね」
みーちゃんの言葉に頷きながらも、鬼灯さんは自分のナイフを抜き取った。
「おい! ちゃんと話を聞いとったのか! 雑に取り出せば!」
「つまり発動する前に抜き取ればいいのでしょう? 律、少し乱暴に行くわ。ミカの身体を押さえておきなさい」
彼女がミカの白い肌へナイフを突き立て、手術というにはあまりに乱雑に切り開いていく。
大地へ零れる深紅の雫とうめき声。むき出しとなった肉の奥で鼓動を続ける、黒々とした魔石。
「律、あなたには私の基質を話していなかったわね」
突然、ボクにそう語りかけ彼女が目を瞑った。
周囲の空気が大きく変わる。
表現のし難い違和感、全身の毛が逆立つような感覚。
手術に釘付けだったはずのボクとみーちゃんは、気が付けば鬼灯さんの顔を、無意識に目を見開き見ていた。
「私の基質『白銀華』は、任意のこの視界に存在するモノの
ゆっくりと、彼女の眼が開かれる。
瞳孔の内側から溢れる白の輝き、凍てつくほどの威圧感。
その目は、宝石のように白く光り輝いていた。
あふれ出していたミカの血が、ぴたりと止まる。
静かに広がっていた呪印が、鼓動を止める。
鬼灯さんは魔石を掴み上げ、ゆっくりと引き抜いた。
そして傷口を片手で抑えつけ、ボクへと回復剤をかけるように告げる。
「……は、はい!」
衝撃に止まっていた意識を取り戻し、ボクは大慌てでミカへと回復剤をかけた。
みるみるうちにふさがっていく傷口。
荒く苦しみ悶えていた体からは力が抜け、その荒々しい吐息は次第に落ち着きを取り戻していく。
……生きてる。
魔石を引き抜かれたはずなのに、ちゃんと生きている。
体を侵食していた呪印も消えてる!
「悪趣味なものね」
彼女が抜き取った魔石を放り投げると、それは中空へと固定された。
そのまま投げられたナイフが中心へと突き刺さり、小さな光をこぼし、魔石はさらさらと砂へ変わるように消えていく。
「鬼灯さん! ミカが意識を取り戻しました!」
「……ありがとうございます律さん、それと……鬼灯さん」
ボクに抱えられ、ゆっくりと上半身を起こす彼女。
彼女の眼に戦いの意志はない。
少しの疲労と、小さな安堵。
歩み寄ってきた鬼灯さんの手を取り、彼女はボクたちへ深々と頷いた。
「私が知ること、すべてお教えします」