ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染がしっとり激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~ 作:IXAハーメルン
協会本部、それは東京の一等地ど真ん中、さらにそびえたつ巨大なビルを構えて存在していた。
……実はここまでくるにもいろいろあった。
ダンジョンから出る、といったそのタイミングで、ダンジョンの外は地獄が広がってるだのとごねるミカだったり、新幹線に乗り込もうとしたらまた騒ぐミカだったり、駅弁を食べて騒ぐミカだったり、車を見て騒ぐミカだったり。
あれ? 大体ミカが騒いで結構時間がとられてるな?
まあそれはいいとして。
鬼灯さんがビルに足を踏み入れた瞬間、フロアの雰囲気が一瞬で変わったのが分かった。
彼女が周りの人にあいさつをするたび、全員が慌てたように頭を下げ、顔パス状態でずんずん進んでいくのだから恐ろしい。
ボクたちはこそこそと、彼女の後ろでへらへら笑いながら頭をぺこぺこ下げ、必死にその背中を追ってエレベーターへと駆け込んだ。
「さ、行くわよ」
『は、はい!』
行先はこのビルの最上階、掲げられたプレートには『Chairman』。
意味は分かんないけどまあ、場所的に多分一番偉い人の部屋だろう。
真っ先に部屋へ駆け込んだ鬼灯さん、そのあとにボクたちも続く。
だが、中で起こっていた衝撃の後継とは――
「――まっ、待て待て待ちたまえ鬼灯クン! 誤解も誤解! 大誤解だよォ!」
拳を掲げる鬼灯さんと、なんかデカくて黒い革張りの椅子にへばりついている
え? なにこれ?
謀反? 地位でも奪おうとしてる?
「異世界について知っている情報をすべて吐きなさい総主、次はないわ」
がっくんがっくんと
「す、すぐ暴力での解決を目論むのはやめたほうがいいんじゃあないかなぁ!」
「理性的に考えた上での結論よ、力でねじ伏せたほうが早いわ」
「理性的ならなおさら問題じゃあないか!」
……初めて会ったときは結構雰囲気あったんだけどなぁ、
「た、確かに異世界の存在は認知していたさぁ。なにせ
襟を整えながら彼は語った。
再びゆっくりと立ち上がる鬼灯さん。
「ま、待ちたまえ! 暴力は良くない、暴力は! 第一まだすべて話してないじゃあないかぁ!?」
「まあまあ! 全部話聞いてからにしましょう鬼灯さん!」
ボクの言葉に渋々座る鬼灯さん。
うすうす気付いていたけどこの人喧嘩っ早すぎる。
多分力で黙らせたほうが早いからなんだろうけど。
「あの
「つ、強い人ですねぇ鬼灯さん。あの
「うん。でも逆らえる人なんて今のところ会った人だと先輩のナユタさんくらいだからね……最強だよいろんな意味で」
ボクも鬼灯さんが力を見せて戦うのを見るのは先ほどのが初めてだ。
クレアちゃんの救出戦では、確か徒手空拳だけで赤髪の男を制圧していたし。
……いまだに、あの巨大で分厚い壁や大樹を抉り飛ばしたのは見間違いじゃないかと思ってるよ。
ボクもレベル上げたり基質を磨いたらあれくらい出来るように……出来るように……なる気がしない。
「隠していたわけじゃあないんだ、そもそも我々も情報を入手できなかったんだ」
「どういう意味かしら?」
「君たちの言う通り、あちら側の世界にも四大結守の一族が暮らしていたのは事実さぁ」
言い渋っていた
「……ただし、十数年前から連絡が取れていない。定期的な連絡が途絶え、こちらからのコンタクトも出来ていないのが現状さぁ」
世界から魔力を封じた
その中でもとびぬけて強力な力を持った四つの血族、それこそが四大結守。
彼曰く、あちらの世界にも一つの血族が存在しているらしい。
結界が作られて千年余り、途絶えることなかった更新が突如として途絶えた。
なるほど、確かにそれは大ごとであり、そうやすやすと話していい内容でもない。
「こちら側から直接あちらに乗り込めばいいじゃない」
「それは難しいねぇ」
鬼灯さんの言葉に彼は首を振る。
「元来次元魔術の類はあちらさんの得意なものでね、我々にはさっぱり扱えないのさぁ」
「あの
「そりゃあねぇ。魔力の扱いに秀でたエルフ、さらにその中でも優れた才能の使い手しか扱えないらしいからねェ」
彼曰く、あちらの世界に残った四大結守の一族はエルフの王族らしい。
結界術、次元魔術、精霊魔術。エルフの中でも高等技術を、代々受け継ぐことで
「……ダンジョンが現れるようになったのも、そのせいなんですかね?」
「やあ、鋭いね律クン。我々はそう睨んでいる」
世界を分けた
千年維持されてきたそれが、おおよそ五年前、突如として世界に多発し始めた。
なるほど。あちら側で維持していた人たちが消えたと考えると、十年ほどで欠陥がボロボロ現れるのは納得だ。
「曙光の行動もあってね、
「もし見つからなかったら……」
「人材の育成から取り掛かることになるだろうね……だが失われた技術の復興、これは無理難題に近い」
その先に待つのは、世界の融合と無秩序な世界の再来。
モンスターと戦う手段を持たないこちらの世界の人間は、間違いなく恐ろしいほどの損害を受けることになるだろう。
仮に
すっかり黙りこくったボクたちの真ん中で、その大きな身長をすっかり縮めていたミカが、恐る恐るといった様子で小さく手を上げた。
「あの……」
「ああ、すまないねぇ。ミカクン、だったっけ? 何か気になることでも?」
「い、いや、そのですね……なっ、なんというかご迷惑かもしれないんですけど……」
「ほら自信をもって言いなさいな!」
「い、いやでも……わっ私はその、敵対組織の一員だったわけで……」
さらに背を丸めてちぢこまるミカ。
しかし鬼灯さんがビシッ、と彼女の背中をたたくと、ミカは少し情けない声を上げて立ち上がり、手にしていた杖を大きく掲げた。
「わっ、わたし次元魔術扱えます! あ、あちらの世界に行きたいのなら……お手伝いくらい出来たりできなかったり……」
「なんだって!?!? キミ、それは本当かい!?」
「ひゃ、ひゃいぃ……」
今度はミカの肩をがっしりとつかみ上げ、ぶんぶんと彼女を振るう
あまりの剣幕にミカはすっかり気圧されてしまっているが、彼の気持ちを推し量ればさもありなん、といったところだろう。
一切手掛かりがない中におりてきた一筋の蜘蛛の糸だ。
「……三日、待ってくれるかい?」
そう一言いい、
もはや彼の指先の動きなんて見えないほどだ。
たった一、二分もすると彼は見たこともないほど明るい表情で額の汗をぬぐい、ボクたちへにっこりとしゃべりかけてきた。
「ミカクンの精神面や魔術による洗脳、安全性の確認を取りたい。当然人員はこちらで用意する、それまでは鬼灯クン、君の家で彼女を匿っていてくれたまえ」
「ええ」
「それから、ミカクンと鬼灯クン、そして律クンの三人によるあちら側の世界へのコンタクトを試みたい」
前話に手描き挿絵を入れておきました
ミカがイチゴミルクを抱きしめてるイラストです
興味のある方はぜひどうぞ