ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染がしっとり激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~ 作:IXAハーメルン
鬼灯さんの家には地下室まであった。
修練などをするためにいくつかに分けられており、ここはただひたすらにだだっ広い打ちっぱなしのコンクリート部屋だ。
「じゃあみーちゃん、もしボクたちが変になったらすぐにこれつけてね?」
ボクが指さすのはロリの髪に結びつけられたヘアゴムだ。
尊大な表情を浮かべた彼女が、ケモミミや尻尾を大層大きく振って頷いた。
「わかったのじゃ!」
「……絶対だよ?」
「うむうむ、このわらわにどーんと任せておくがよい!」
絶対ダメでしょこれ。
「鬼灯さーん、本当にやるんですかぁー?」
「はやくしなさい」
「どうぞー!」
離れた場所で腕を組み待つ鬼灯さん、指先でトントンと叩きボクへ視線を向ける。
ついでに鬼灯さんの横にはミカもいる、にこにこと杖を片手に腕をぶんぶん降っていた。
マジかぁ。
えー、どうなってももう知らないからね?
「じゃあ行きますよ……えいっ」
艶やかな髪をすり抜け、引っかかりもなくあっさりとはずれるヘアゴム。
心に過る一瞬の恐怖。
『魅了』。あの時、少女を見た瞬間に全身へ広がった多幸感。
そして少女の敵となるものへの強制的な『殺意』。
今でこそ普通に接しているものの、あの経験だけは二度と味わいたくない。
「――?」
だが、恐れていた感覚は何もなかった。
いや、なかったというと語弊があるか。もともと『魅了』には事前の動作などが一切ない。
封印されていない彼女を見た時点で、堕ちる。
「だい……じょうぶ……?」
ボクはみーちゃんの背中を見て、小さくつぶやく。
だが、今は何もない。
あの思考が塗りつぶされるような、一方的でしかし耐え難い快楽が、何一つとして。
いや、それどころか――
「――『基質励起 デッドリースケイル』」
彼女を害することすら。
ボクの両腕に結晶が生えそろう。
その気になればこの腕を振るい、彼女に攻撃を仕掛けることすら可能だ。
つまり、今ボクは魅了されていない。
「……魅了が発動していない?」
それとも効いていない?
となれば効く効かないには条件がある?
ボクはみーちゃんの先、構えていた二人へと視線を向ける。
「ねえ二人とも、調子はっ!?」
首元へ冷たい感覚が触れた。
「何をしてるの、殺すわよ」
突如としてコンクリートを突き破り現れた植物たちが、一瞬でボクの両腕両足を縛り付けた。
「危ないですねぇ~?」
「ひぇ」
にこにこと、半開きの瞳でミカがこちらに笑みを送る。
お、堕ちてるーッ!!
二人とももう堕ちてるーッ!!
「ま、待ったまった! じょ、冗談冗談! 冗談だよぉ~ン!?!?」
ひぃぃぃ殺される!!!!!
全身からあふれ出す冷や汗。
鬼灯さんは言うまでもなく、ミカだってあんなぽわぽわしたしゃべり方しているものの、圧倒的にボクより格上の戦闘能力を持っていらっしゃる。
この二人が本気でかかってきたら、終わる。
ま、まさかちょっと確認で基質励起しただけで殺されるなんて!
「おいうぬら、律に何をしておる!」
しかし絶体絶命の瞬間、天使、というより神の一声がかかった。
即座に離れる鬼灯さんと消える蔦。
「いえ、ただ少し危なかったから止めただけよ」
うそだ!
明らかに殺しにかかってたじゃん!
しれっとナイフを戻す鬼灯さんへ冷や汗をたらし、ボクは小さなみーちゃんの後ろへと隠れ縋り付いた。
あ、あぶねー。
こんなん下手にみーちゃんに傷でもついたら、間違いなくこの二人に殺されるじゃん。
しかもそうなったら制御なんて完全にできなくなる、みーちゃんの使者と化した二人によってここいら一帯が壊滅するかもしれないぞ。
「……どうやら本当に効いてるみたいだなぁ」
やっぱり、この力は凶悪すぎる。
あの鬼灯さんやミカですら一切抵抗なく、あっさりと堕ちてしまうとは。
こうなるともはや、魂転の巫女たる輝良のように特殊な力を持っていなければ、まず初手の時点での抵抗は不可能ととらえていいだろう。
心理的にはもうさっさとヘアゴムをつけて終わらせたい、でないとボクの命がいくつあったって足りない。
しかし鬼灯さんに命じられているのだ。まずはこの『魅了』がどれだけ効果あるのか、しばらくいろいろ試してみたい、と。
「うーん……」
すっかり頭を抱え込んで悩むボク。
まず第一として、攻撃系の指示は論外。
一度堕ちた自分の感覚、そして今の二人の行動を鑑みて本来の命令から逸脱、間違いなくエスカレートしてとんでもないことになる。
となればもっと安全な……あっ、そうだ。
ピコンと生まれる名案。
「ねえみーちゃん、鬼灯さんにボクの足をマッサージするように言って? 優しくね?」
「うむ、構わぬぞ」
これならへーきでしょ!
ボクは傍らのパイプ椅子に腰かけ、足先をひらひらと動かす。
「おい、白虎の娘よ。律の足を丁重に揉んでやれ」
「ええ、構わないわ」
「お、おぉ……あの鬼灯さんが……」
普段なら間違いなく
『殺されたいみたいね?』
なんて笑顔で拳が飛んできてもおかしくないのに。
今、世界最強の女はボクの前に跪き、もみもみと足裏を揉んでいる。
お、おお。
ちょっと怖いけど……マッサージ上手いなぁ鬼灯さん。
「ふ、ふふん、なかなか優越感があるね!」
普段なかなか散々な目に合ってるし、なんだか楽しくなってきたぞ!
あの鬼灯さんも従順になればとっても可愛く見えてくるし、このみーちゃんの力、なかなかどうして――
「――あ、あだだだだだだっ!?」
次第にスピードとパワーが増す足揉み。
いや、これはもはや『揉み』なんてものじゃない! 『揉み潰し』だッ!!
「ちょっ、す、ストップ! ストップですって鬼灯さん! 足が! ボクの足が引きちぎれてしまいます!!」
「足が凝っているのでしょう? ちゃんと揉んであげるわ、ぐずぐずになるまでね」
「シャレになってませんって!!」
や、やばっ!!
本当に痛い! マジで! ねえマジで!!
そ、そうか!
あくまで鬼灯さんたちが遵守するのはみーちゃんの命令。
たとえみーちゃんの命令だとしても、そこには本人の感情が必ず乗る! つまり、舐めた態度を取っているボクへの殺意は変わらずお出しされているってことだ!!
「おいエルフの娘、わらわは疲れたぞ! 膝枕をしろ!」
「あ、はい。どうぞー」
「うむうむ、おぬしは中々分かるやつじゃな!」
ミカの膝枕を受け目を瞑るみーちゃん。
寝てる場合か!
ボクの足の危機だぞ!
「み、みーちゃん! ヘアゴムつけてヘアゴム!」
足を揉みつぶされながら必死に彼女へと願う。
まずは鬼灯さんたちを正気に戻さなくては!
「面倒じゃ」
だがぷい、とミカのお腹へ顔を向けそっぽを向く狐ロリ。
ほらー!!
だから言ったじゃーん! 絶対素直につけてくれないってー!