ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染がしっとり激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~ 作:IXAハーメルン
プロレス技に足十字固めというものがある。
「うごごごごご……!!! タップ! タップですって!」
「聞こえないわ」
「嘘つけ聞こえてるでしょ!?」
いまボクがかけられている技である。
簡単に説明しよう。
とても痛い。
以上である。
「あああッ!!関節がっ! 関節がなってはいけない音を奏でてます鬼灯さん!!」
ボクが痛みに耐え切れず、しかし体が限界を迎えない繊細な調整によって生まれる鋭い痛みが苦しいです!!
ま、まずい。
このままだとボクの関節がいくつか増えてしまう。
「みーちゃーん!! 鬼灯さんに何もしないよう命令して―っ!」
「しーっ、律さんお静かに。今みーちゃん様はお眠りなさっているんですよ」
ミカの膝の上で寝ている。
終わった。
いや待て、まだチャンスはある。
鬼灯さんの行動ルーティンを変えるのだ。
みーちゃんの力を封じることにより、思考の最上位に位置する魅了を排除、鬼灯さんを正気に戻すことでうまく逃げ延びられる可能性はある。
「ミカーっ! みーちゃんのヘアゴムつけてあげてーっ!!」
「えー? でもシンプルな髪形でもかわいいですよ?」
「そっ、そういう問題じゃっ!?」
鬼灯さんの締め付けがより一層強くなった。
しかしその瞬間、脚を極められたボクの脳裏に天啓走る。
みーちゃんによる魅了、それは意識に最優先をみーちゃんとして書き換える、いわば絶対的遵守。
一方でメインの思考過程、行動に大きな変化はない。
お腹が空けばご飯を食べる、眠ければ寝る、みーちゃんを優先する以外の行動は普段とあまり変わらないといえるだろう。
つまり、ミカの思考を誘導するのだ。
暴力や命令以外、彼女自身が『それは良い』と思うような内容、行為を促してやればいい。
「みっ、ミカッ!!」
「はーい?」
慈愛の笑みで膝上のみーちゃんの尻尾を梳かすミカ。
ミカは髪形をところどころ編んでいる。
髪を編むってのは面倒なもので、わざわざやる人間は相当にそういった行為を好んでなければ、普段からやってられないってのがボクの認識だ。
だが自分の髪ですら編んでいるミカなら――いける!
「かっ、髪形っ! みーちゃんの髪型編んで上げたらとっても可愛いんじゃないかな!? そのヘアゴム使ってさぁ!!!!」
「あぁ~……確かに、素敵ですね! ね、いかがですかみーちゃん様?」
「……うむ、好きにするとよい。ただしそのあとは尻尾もしっかり櫛を通すのじゃぞ?」
寝ぼけまなこでみーちゃんが頷いた。
来た!
完璧だ!
ぎりぎりと締め付けられ、冷や汗をたらしながらもボクはその風景をじっと見つめる。
笑顔のミカによって最後の一巻き、ついに生まれた三つ編みの最後が――ヘアゴムによって飾られた。
「鬼灯さん!!」
ふ、と足に掛かっていた力が抜けた。
「……なるほど、これが『魅了』ね」
「よかった、意識を取り戻したんですね!」
ボクの足を掴んだまま、鬼灯さんはいまだ少し気が抜けた口調でつぶやいた。
『魅了』の認識、それはみーちゃんの力が抑えられてた時初めて可能となる。
間違いない、今の鬼灯さんは正気だ。
「確かに、抵抗は不可能と考えてよさげね。そもそも対処する、という考えが一切湧いてこなかったもの」
「そうなんですよ!」
「異常性の認識すらできず、一瞬で思考を奪われる……凶悪という他ないわ」
例えば基質。
魔法の類ってのは基本、何かしら最初に予備動作が起こる。
構え、文言、あるいは基質解放にまで至れば体の一部の発光、ミカの魔術でも杖の構えなど必ず警戒すべきものが存在するのだ。
一方で『魅了』、これには予備動作が一切存在しない。
みーちゃんを認識した時点で全てが終わってしまい、その上ミカや鬼灯さんレベルですら抵抗が一切不可能。
今回の実験で分かったことは、やはりという他ないが凶悪すぎる現実だった。
「ただし優先度はともかく、基礎の思考力には大きな影響がない。それに律、貴女がなぜ抵抗できているのかもね。そこに何かヒントがあるかもしれないわ」
鬼灯さんは考察を続ける。
「あるとしたら……精神的、あるいは肉体的ショックとかでしょうか?」
あの時、ボクを止めようとした輝良がボクの両手を刀で刺し貫き、地面へと縫い留めた。
それと同時にあまりはっきりとは覚えてないけれど、ボクは輝良と戦ってしまったことにショックを感じていた気もする。
そうだ、どちらが理由かはわからないけど、確かにあの時から意識がはっきりしたんだ。
思えば、
当時の彼らも何かしらの理由で意識を取り戻した、と考えるべきかな。
顎に指を添え考えていたボクは、そのまま足へと視線を向ける。
足というより、まあ足を掴んでる鬼灯さんなんだけど。
「……あの、そろそろボクの足離してほしいんですけど」
痛いっす。
もう洗脳解けましたよね?
「マッサージ、してほしいんでしょう?」
「え!?」
ニゴォっ、と邪悪な笑み。
「や、やー、もう十分ほぐれたかなぁ~~って!」
そそくさと立ち上がろうとするも、グルンッ! と柔道さながらの押し倒しで逃げ出すことは叶わなかった。
あ、ああ~!
なんか流れ読めてきたカモ~!
「そう?」
「うぎっ!? ちょ、まって……!」
「律、この程度で苦しがるなんて貴女柔軟が足りてないわね。師匠としてしっかりほぐしてあげるわ」
「ふぎゃああああああ!?」
い、痛い! 鋭い痛みがゆっくり襲ってくるッ!
ムリムリムリムリ! ウオアアアアアアアアアア!!
「ご、ごめんなさいって! 足揉ませたのは謝りますからっ!」
「全然怒ってないわよ? さ、次は股割もしましょう。べったり地面につくように、ね?」
君は股関節付近の筋が鳴ってはいけない音を立て、両足がミシミシと広がっていく恐怖を味わったことはあるだろうか。
今のボクである。
痛みに悶えるボクを無理矢理座らせ、さらに鬼灯さんは肩を押し込んで股割りまで強制的に行ってきた。
「前々から気になってたのよねぇ、貴女体硬いなって。戦闘中に柔軟性がないと攻撃避けきれないわよ?」
「ふぎゅぎゅっ」
「安心して? 多少無理やりでもケガは治せるもの! ついでに肩の柔軟もしっかりしておきましょう!」
「おぎょおぉぉ!!」
拷問だ!
これは拷問だ! 非人道的行為だ!
国際的に禁止されている行為だ! 鬼灯さんくらい地位がある人が行なうなんて!
「ふふ。ああそうだ律、言い忘れてたけれど貴女これからはこの家で暮らしなさい」
「ひぇ、ひぇぇ……?」
全身を痛めつけられたボクを後ろからそっと抱き、鬼灯さんは耳元でささやいた。
「神の力の実験とあなたの柔軟、それと戦闘トレーニングに基質解放までの基礎的な訓練。一々呼ぶのも面倒だし、いろいろやることがあるもの」
「あ、あの……拒否権は……?」
「首周りの
す、と鬼灯さんの指先がボクの首元へ触れた。
「と、と、と、泊ります! 泊りますから!!」
「ええ、ええ。それでいいわ」
「ちょ、泊るって言ったのに、あの、どうしてボクの首元に手を?」
ぐああああああっ!!
首が曲がってはいけない方向に曲がっているッ!!
「はい、かわいく編めました~!」
「なんだか野暮ったくて鬱陶しいのぅ……おい、この髪を解けエルフの娘」
「え~!? せっかく編んだのに勿体ないですよ~!」